━━あなたの忘れられない絶景は、どんな景色ですか?
これまで旅をする中で、美しい景色には何度も出会ってきた。
けれど、1番心と体に深く刻まれているのは、登山で見た景色だ。
360度見渡す限り連なる山々や空の青さ、ハシゴや鎖場を超えて進む岩稜帯、雪を踏みしめる音が響き、吸い込む空気がキンッと冷えた冬山。
今回は、日本百名山のひとつ「南八ヶ岳」で出会った、秋の紅葉と稜線の絶景をたどる1泊2日の記録。
見出し
- 1【1日目】360度の絶景を満喫!硫黄岳~横岳~赤岳の稜線歩き
- 1.1登山の始まり。美濃戸口から赤岳鉱泉へ
- 1.2赤岳鉱泉山荘から本格的な登りスタート!
- 1.3硫黄岳からの展望と横岳から赤岳へと続くアップダウン
- 2赤岳頂上山荘で迎える夕暮れと朝日
- 2.1夕暮れと山荘から見える町の明かり
- 2.2天水で賄う水とコイン制のトイレ
- 2.1朝食を食べながら見る日の出
- 3【2日目】冬の気配を感じる風に吹かれながら下山
- 3.1冷たい風の中、出発
- 3.2レンズ雲、ウロコ雲が浮かぶ空と足元の植物たち
- 3.3山頂で一瞬晴れた阿弥陀岳
- 4下山後の楽しみ
- 4.1美濃戸口にあるおしゃれカフェで昼食
- 4.2温泉で疲れを癒す
- 4.3スイーツで締める
- 5最後に
【1日目】360度の絶景を満喫!硫黄岳~横岳~赤岳の稜線歩き
横岳からの景色。山のふもとが黄色く色づいている
登山の始まり。美濃戸口から赤岳鉱泉へ
赤岳鉱泉に続く北沢ルート。川沿いを歩く
朝4時に家を出発。朝靄がかかる峠を越えて、友人との待ち合わせ場所「八ヶ岳山荘」を目指す。
八ヶ岳山荘駐車場に車を停めて、6時半に出発。車は歩いて1時間ほどの美濃戸口山荘付近に停めることもできるが、未舗装路のため車高が高い車でないと少し危ない。そのため、無理をせず歩いていくことにした。
八ヶ岳駐車場のチケット。ステッカーにもなっている
車1台が通れるほどの林道を抜けたあとは、川沿いにゆるやかな登りが続く。
真っ赤な落ち葉が積もる木道
落ち葉が積もる道とひんやりした空気に包まれ、登山の始まりを告げるようなワクワク感がこみ上げる。
・名称:八ヶ岳山荘駐車場
・住所:〒391-0011 長野県茅野市玉川原山11400-833(八ヶ岳山荘)
・地図:
・電話番号:0266−74−2728(八ヶ岳山荘)
・駐車台数:120台
・料金:1日800円(八ヶ岳山荘のコーヒー1杯サービス付き)
・公式サイトURL:https://tozanguchinavi.com/trailhead/trailhead-1892
赤岳鉱泉山荘から本格的な登りスタート!
針葉樹の森の中、見上げると赤く色づく木が1本
美濃戸口から北沢を歩いて約3時間、赤岳鉱泉山荘に到着。
テント場には5つほどのテントが並び、のんびり過ごす登山者の姿。
山荘前には、建築途中の足場のような鉄骨が立っている。これは冬になると氷で覆われて「アイスキャンディ」と呼ばれる氷の壁に変わり、アイスクライミングを楽しめる場所になるのだという。
赤岳鉱泉前にある鉄骨。冬には「アイスキャンディ」と呼ばれる氷の壁に変わる
トイレ休憩を終え、いよいよ本格的な登山道へ。
人ひとりが通れるほどの森の中の細い道を、傾斜に合わせてゆっくりと登っていく。
硫黄岳からの展望と横岳から赤岳へと続くアップダウン
森林限界の分岐「赤岩ノ頭」から、硫黄岳に続く道
硫黄岳の手前「赤岩ノ頭」と呼ばれる付近で、森林限界を迎える。
目の前が一気に開け、白い山肌の硫黄岳、振り返るとこれから歩く横岳と赤岳の稜線が一望できた。前日が雨だったと思えないくらい、澄んだ青空が広がっている。
硫黄岳山頂
12時前に硫黄岳山頂に到着。
広々とした山頂には20人程の登山者の姿があり、平日にも関わらずにぎわっていた。
ポカポカと暖かい日差しのなか、軽い食事をしながらのんびり景色を楽しむ。このひとときがたまらない。
硫黄岳からの眺め
山頂を満喫した後、宿泊予定の赤岳頂上山荘を目指して出発。
両側の眼下には街並みが広がり、遠くにはくっきりと富士山が見える。こんなに天気がよく遠くまで見える日は滅多にない。友人と自然にテンションが上がった。
ふもとの町並みと遠くに富士山
横岳までは岩場が続く。鎖場やハシゴを超えながら、見えているのに遠い赤岳山頂を目指す。
横岳の鎖場
日が傾くにつれ、山の影が美しく長く伸び、裾野は黄色く色づいた紅葉に染まっている。
右を向けば南アルプスに中央アルプス、遠くに雪をかぶった北アルプス。左には甲武信ヶ岳など関東の山々が連なり、展望は抜群だ。
赤岳の影が山のふもとに影を落とす
広がる絶景に見とれつつも、段々と足に疲れが出てくる。
最後の赤岳山頂前の登りでは「手前にある赤岳展望山荘にすればよかった……。」と友人と苦笑しながらも、なんとか登りきった。
赤岳頂上へと続く最後の登り。壁に張りつき登る人の姿が見える
赤岳頂上山荘で迎える夕暮れと朝日
ようやく辿りついた「赤岳頂上山荘」
夕暮れと山荘から見える町の明かり
南アルプスが見える方向に沈む太陽。霞んで赤くなった空がゆっくり暗くなっていく
到着後、先に山に入っていた、もう1人の友人と合流。
話をしたり、一緒に雲の合間に沈む夕日を眺めたり夕食まで束の間の休息を楽しんだ。
10月中旬ということもあり、日が沈むとグッと気温が下がる。食堂にはストーブが焚かれ、ダウンを着ている人もちらほら。
誰もいない朝の食堂。ストーブが焚かれている
5時半になると夕食の時間。
食堂は「天の窓」と呼ばれる全面ガラス張りで、山の麓に輝く町の明かりが星のようにキラキラと輝く。食事中は、久々に再開した友人たちや初めましての人たちとも「山」を話題に話が盛り上がる。
山小屋という特殊な場所だからこそ、なんだか人との距離も近い。こういう出会いも山の醍醐味だと思う。なかには山で仲良くなって、次の山に一緒に登るなんてこともある。
楽しいひとときを過ごし、8時に消灯&就寝。
天水で賄う水とコイン制のトイレ
トイレ横にある手洗い場。水道は凍結しているため、桶に入った天水が置かれている
今回、八ヶ岳を登って思ったのは「100円を何枚か用意しておけばよかった」ということ。宿泊した場合は必要ないが、トイレ利用には1回100円、赤岳頂上山荘は1回300円かかる。
赤岳頂上山荘の場合は水を天水で賄っていて、トイレも電気も水も”あたりまえ”ではない。不便さはあるけれど、今の生活の有難さ、いろんな人の力があって「山」という大自然を楽しめている尊さを実感する。