ライター

北海道出身の27歳。これまでに日本の離島を150島近くを旅してきた島旅人で、島暮らしも今年で3年目。11月から1年ほど世界一周の旅へ出発。海や観光・宿泊関連の仕事をしながら、自身が経験した旅のひと時を発信中。海と雪山、ビールが大好き。

「旅をする」となると、私の場合はこれまでに日本の離島をメインに旅をしてきた。けれども大抵は数日から1週間程度と、滞在期間としては短めなのかもしれない。

もちろんそのなかでもさまざまな出会いや、普段目にすることのできない景色や経験が得られるが、暮らしてみることによってまたひとつ違った経験や楽しみ方もあるだろう。

当時は大学生で休学していた時期で、コロナ禍ということもありなかなか島旅もしにくい雰囲気

そのときに利尻島でのアルバイトの求人を偶然見つけ、それがはじめて島で暮らすきっかけとなった。

来島初日、利尻富士を背景に

自然と共に、はたらく

当時見つけた求人は、北海道の漁業関連の求人。最初の1ヶ月は刺し網漁の作業で、残りの2ヶ月は利尻昆布を干すアルバイトをした。

どちらもまったくの未経験であったが、基本的に屋外の作業が中心だ。屋内で引きこもるような生活が続いていた私にとってはうってつけである。

生活リズムとしては、それぞれ以下のようなスケジュールで1日を過ごす。


どちらもスタートが早くもちろん終わるのも早い。おそらく学生やデスクワークの仕事をしていても、日常的に2時台に起床することはほぼないだろう。

休日は基本的に決まっておらず、海が時化(しけ)で船が出せない日や天候が悪いと休みだ。ときには朝起きてから「今日は休み!」と連絡があることも。

不規則な生活に見えるが自然相手で成り立つので、仕事の有無はもちろん作業量もその日によって変化する。慣れるまでが大変なものの、次第に手際も覚えてくるのだ。

4時前の暁に染まる空
当時は5月から8月頭まで滞在。来島時は利尻富士にも雪が多く残っていたのが少しずつ解けて少なくなってきたり、4時半ごろの日の出がピーク時には3時台にまで早まる。

普段の旅ではなかなか味わえない、その土地の季節の変化を感じられるのも、屋外で働き暮らすからこそ体感できる魅力のひとつだ。

島暮らしならではの人との出会い

普段旅をしていると、その土地で出会う人はどのような人だろうか?

宿やお店の人はもちろん、移動中やたまたま行き先が同じで出会う人、そして街中で話しかけてくる人など。

だが暮らすとなるとそこで出会う人も自然に増え、関わり方もどんどん深くなっていく。コミュニティが小さい島だとなおさらだ。

天日干しされる利尻昆布
すれ違う人との挨拶や、お裾分けをよくもらうのはよくあるエピソードだが、とくに昆布干しのアルバイトは多くの人と出会う。

利尻島での主要産業であり、その期間は2ヶ月ほどと短いものの多くの人手を必要とする仕事。

昆布干しの期間漁師はもちろん、普段別の仕事をしている人々もその時期だけはほぼ島民総出の勢いで作業をする。(メインの仕事もあるのに2時台に起きられるすごさ……)

港で黄昏ながら一杯
役場の職員や消防士、学校の先生や飲食店で働く人、更には定年で仕事をすでにリタイアしている人なども。これほど多くの人と出会うことは、3ヶ月と限られた期間の中では通常だと難しい。

当時は大学生だったということもあり、島でのたくさんの出会いに島旅とは違う衝撃を受けた。島民となればその時期に一緒に働く仲間であっても、私にとっては非日常すぎる環境だ。

そんな出会いが短い島暮らしをより濃いものにしてくれる。

隙間の時間で過ごすひと時

島旅で重要なのは天気。こればかりは自分で変えられるものではないが、旅中だと天気が充実さを左右するといっても過言ではない。なので島旅中は滞在期間が短いと、時々急足になってしまうことも。

けれども島に暮らしていると、ベストなタイミングを狙って景色を堪能できるのもまた魅力のひとつ。

お気に入りの空港から撮る飛行機と利尻富士
仕事がある日でも午前中の隙間時間を使いぷらっと行くこともでき、リフレッシュかつ最高の景色を見られるのだ。

逆に仕事が休みの日=天候が悪いことが多いため、朝からのんびりパソコンに向かってみたり、島の人から誘われて昼前から飲み始めたりする日もあっていい。

長く滞在すればするほど、そんな景色も日常に溶け込んでしまう。だが、日によって顔を変える景色を当たり前のように見れる環境は、これ以上ない贅沢なのかもしれない。

大好きなサッポロビールの飲み比べ

また行きたい、そんな場所が増えた

この島暮らしをきっかけに、これまでいくつかの島に数ヶ月から2年という単位で暮らしてきた。

そんな島での忘れられない思い出や景色、経験は数えられないほど。

だからこそ島を離れてから、「〇〇さんの息子、どれくらい大きくなったかな」とか、「あのお店、今度は友人を連れて食べに行きたいな」とまた行きたいという思いが強くなる。

3ヶ月滞在した利尻島の鴛泊(おしどまり)地区の街並み
パソコンひとつでどこでも仕事ができるようになり、旅をするように暮らす人も増えてきた現在。

けれども、リアルなつながりでしか得られない出会いや経験があるのも、島などの小さなコミュニティならではだ。

場所や期間は人それぞれ。あなたも旅をする場所でちょっと暮らしてみるのはどうだろうか。

All photos by Suzuki Ei

ライター

北海道出身の27歳。これまでに日本の離島を150島近くを旅してきた島旅人で、島暮らしも今年で3年目。11月から1年ほど世界一周の旅へ出発。海や観光・宿泊関連の仕事をしながら、自身が経験した旅のひと時を発信中。海と雪山、ビールが大好き。

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