ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは!トラベルライターの土庄です。8月11日は山の日でしたね。夏山真っ盛りのシーズンですが、山の日を迎えると「もう秋も近いのかぁ」という気持ちになります。

主に山をフィールドとする筆者。四季折々の自然を楽しむスタイルをとっているうちに、いつしか季節を先取りするようになりました。

たとえば山岳紅葉が始まる9月から、紅葉と初冠雪のコラボレーションが楽しめる12月まで、少し早く秋冬の山の表情を捉えています。

今回は、大雪山へ日本一早い紅葉を見に行った山行記録をレビュー。2021年9月、憧れだった御鉢平一周コースを歩いてきました。

日本一早い紅葉を見に行く旅


毎年9月になると全国版ニュースで必ず流れる「今年も大雪山で紅葉が見頃を迎えています」という報道。

一般的に本州では10〜12月で見られる紅葉ですが、北海道の屋根を形成する大雪山(たいせつざん)では、9月上旬から紅葉が始まります。

大雪山は本州の標高3,000m級に肩を並べる高山帯。秋がもっとも早く始まる山域です。学生の頃から「いつか日本一早い紅葉を見に行きたい!」と密かに胸に秘めていました。

憧れだった御鉢平周回コースへ


2021年9月上旬、ついに念願だった日本一早い紅葉を見に行ってきました。登山ルートは御鉢平一周コースです。

日本一広い山域としても名高い大雪山。正式に大雪山という山があるわけでなく、旭岳や黒岳、北鎮岳や小泉岳など、たくさんの山頂の総称です。

今回は、層雲峡から黒岳ロープウェイ・リフトを乗り継いで7合目登山口へ。そこから御鉢平を囲むように、黒岳→北海岳→松田岳→間宮岳→北鎮岳→黒岳へ、約15kmの周回コースを歩いてきました。

早朝の層雲峡から黒岳ロープウェイ


黒岳ロープウェイの始発に合わせて、早朝に層雲峡へ入りました。9月上旬には紅葉登山で賑わう山域。たくさんの登山愛好家が訪れるため、山麓駅は混みあいます。


始発の30分以上前から列に並び、1便でロープウェイに乗車。次は中腹でリフトに乗り換えますが、そのとき立ち寄った展望台には、既に絶景が待っていました。


なんと層雲峡を埋め尽くす雲海が……!向こうにはニセイカウシュッペ山(標高1,883m)や北見富士(標高1,306m)の山並みが神々しくたたずんでいました。


リフトに乗り換えて、少しずつ紅葉が始まっている標高へと入っていきます。いよいよ「日本一早い紅葉を見にきたんだ!」という実感が湧いてきました。

錦絵のような紅葉に包まれて黒岳山頂へ


リフトの終点、7合目から黒岳登山が始まります。標高差は500mほど、標準タイムは約1時間半です。

一般的に序盤は、黙々と標高を稼いでいく気持ち勝負の区間になりがちですが、紅葉の時期であれば前半からボーナスステージに。


登山道のカーブを曲がるたび、宝石のように輝く木々の紅葉に見惚れました。カラフルな色彩の妙、青空とのコントラスト。まるで絵画の中の風景に足を踏み入れているようです。


山頂直下まで来ると、王冠のような形をした「マネキ岩」を仰ぎ見ます。この一帯は、まるで絨毯のように山肌がすべて紅葉で埋め尽くされています。

ラストは黄金色の輝きに包まれながら黒岳山頂(標高1,984m)へ辿り着きました。


黒岳の先には、ダイナミックに広がる大雪山の山並み。壮大なパノラマに引き込まれます。

黒岳山頂は、登頂のゴールであるのと同時に、これから大雪山・御鉢平一周がはじまる山旅の入り口にもなっているのです。

御鉢平一周。カムイミンタラの世界に出会う


大雪山の中央部にあるカルデラ地形「御鉢平」。カルデラ中心の底部には有毒温泉という温泉が湧いており、強力な毒性をもつ火山ガスが噴出しているため、立ち入り禁止となっています。


しかし、その御鉢平を取り巻くように登山道が整備されており、ぐるりと一周することが可能です。

「カムイミンタラ=神々の遊ぶ庭」と呼ばれる大雪山。万年雪の雪渓が見られ、そこから流れる沢、高山植物の花園など、隔絶したフィールドが広がっています。


チングルマも綿毛となり、鮮やかな草紅葉とともに迎えてくれました。姿は見えないですが、北海道の高山帯にしか生息しない天然記念物・ナキウサギの声も「ピィッ、ピィッ」と聞こえてきます。


天気は快晴、そして紅葉の色づきもジャストタイミング!山の神様に感謝せざるを得ません。表大雪の山々の紅葉と御鉢平の風景は、いつまでも圧倒的な感動とともに目に焼き付いています。

標高2,000mの世界。北海道の屋根を歩く


登山開始から約3時間ほど、2つ目の山頂である「北海岳(ほっかいだけ、標高2,149m)」へ登頂。山のネーミングとして、なんだか北海道の頂点を制した気持ちになり、達成感が得られます(笑)。


周囲はザレており、いかにも火山らしい登山道。ここから標高をほぼ変えずに、間宮岳(まみやだけ、標高2,185m)や中岳(なかだけ、標高2,113m)などの各山頂をゆったりとつないでいきます。


途中には、遠く百名山・トムラウシ山(標高2,141m)や、双耳峰の愛別岳(あいべつだけ、標高2,113m)など、見られる山岳絶景は数え上げるときりがありません。

進むごとに「北海道の屋根を歩いているんだ」という実感を噛み締めます。


またお昼を過ぎてから、少しずつ御鉢平の表情も変わってきました。快晴の天気から、いつの間にか雲の陰りが増え、神秘的な雰囲気に。

晴れるに越したことないのですが、こうした野趣ある表情変化も山の醍醐味ですね。

印象的な四季の共存。壮大な山旅の終わり


雪渓と紅葉が同居する景色。印象的なシーンを見つけては写真に撮り、物思いに耽る。

自然の営みとか大地の成り立ちとか、現在の植生がどうやって育まれたのか?など。登山にはなんだか哲学的な側面もある気がしています。


一人、目の前の風景との出会い、時間を楽しみながら、最後の山頂「北鎮岳(ほくちんだけ、標高2,244m)」へ登頂。北海道で2番目に高い頂を制しました!

しかしだんだん雲が厚くなり、ところどころ雷鳴も。なんだか天候が崩れる気配がしたため、急いで下山することに。


道中、北鎮岳から黒岳の区間は、チングルマの草紅葉の絨毯が展開。最後まで大雪山らしい、圧倒的な自然を満喫します。

しかし2時間後、無事下山して、黒岳ロープウェイを降りると、ザァザァーという大雨。あと少し下山が遅かったらと思うと、ゾッとしました。


ただ結果的には、日本一早い紅葉を味わい尽くす、充実した山旅に。自然の美しさと厳しさも実感できました。

大雪山は広く、まだまだたくさんのルートがあるので、これから数十年の登山ライフのなかで通い続けたいと思います。

■詳細情報
・名称:大雪山御鉢平一周コース(黒岳→北海岳→松田岳→間宮岳→北鎮岳→黒岳)
・住所:北海道上川郡上川町層雲峡
・地図:
・アクセス:旭川市街から黒岳ロープウェイ山麓駅まで車で約1時間10分
・営業時間:黒岳ロープウェイ / 2022年6月1日~2022年9月30日は6:00~18:00(季節により時間帯は異なる)
・定休日:冬季運休あり(詳細はHPご参照)
・電話番号:01658-5-3031
・料金:大人 / 片道1,400円、往復2,400円(黒岳ロープウェイ)
・所要時間:リフト降車後、黒岳まで徒歩約1時間〜1時間半、御鉢平一周は徒歩約4時間〜5時間
・オススメの時期:夏〜秋(7月〜10月)
・公式サイトURL:https://www.rinyu.co.jp/kurodake/

All photos by Yuhei Tonosho

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土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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