こんにちは!TABIPPOのみっちーです。今回は、1021日103国旅をした、プロカメラマン竹沢うるまさんの著作「The Songlines」のあらすじ&書評です。
日経ナショナルジオグラフィック写真賞を受賞された、うるまさんの処女作の旅行記。The Songlinesと名付けられたタイトルは、オーストラリアの先住民の言葉で、文字通り歌の道という意味です。
冒頭部分から、うるまさんが辿った旅路に強烈に引き込まれ、興奮と緊張に包まれながら、本を読み進めた先に、うるまさんが感じた「The Songlines」を見る事が出来ます。本の中で登場する、極彩色のコンドルの羽音が聞こえるかのようです。
本を読みながら、旅の深い世界にどっぷり浸かりたいと思う方に是非オススメします。
それでは、竹沢うるまさんの世界を一部ご紹介します。
うるまさんの冒険が詰まった哲学書のような旅行記
旅行記は、沢木耕太郎さんの深夜特急から、ブラジル人作家パウロコロリーニョ「アルケミスト」等、世界中でも沢山出版されています。旅が好きな方は、一度は、誰かの旅行記に触れたのではないでしょうか。そして、その著者の冒険に惹き込まれ、自身も旅へと足を向けてしまうのが、旅行記の罪なところ。
その中でにも、一線を画す竹沢うるまさん著の「The Songlines」。
写真家のうるまさんが書く言葉は、目の前に映像を鮮明に映し出す程リアルで、重たいです。多くの葛藤と、判断した時の状況が細やかに書かれています。途中に写真だけの章が挟まれていますが、全て白黒で渋くなっています。何かをじっくりと考えたい時に読む、旅行記なのではないかと思います。
序章が、どこか知らぬジャングルから始まる
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「鬱蒼とした森の中で」と名付けられた序章。静かなジャングルに、横たわっている所から始まります。
体が思うように動かない。必死に体を動かそうとすると聞こえてくる、ある歌。その歌に導かれるように、目の前に突然現れる極彩色のコンドル。
ただ、そのコンドルに手が届かない。
必死に手を伸ばした先に掴んだのは、闇だった。序章の最後に書かれた、「この夜、僕はもう一つの世界を訪れた。」とある、このもう一つの世界とは何なのだろうか。
序章の不思議な世界から始まるのですが、一気に竹沢うるまの冒険の中に飛び込んでいきます。
旅に求めていたのは、深さ?
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旅が100日程過ぎた頃、求めていた心の振幅が徐々に少なくなっている事に気がつきます。非日常を求めて出て来た、旅が自分の中で日常となってしまう。そんなマンネリ化しかけたタイミングで、「ある出会い」が著者を深い世界へと導きます。
このマンネリ化は、長期の旅をしていると必ず訪れるものです。ただそれは、旅でなくても同じかもしれません。
そんな時、常に新しいモノを求めていたうるまさんに舞い込んだ、ジャングルの奥にいるシャーマンの世界への扉が、開かれそれに向かって進んでいく。ここから、旅のより深い世界へと足を踏み入れるようになります。
深い底に連れて行かれたシャーマンとの出会い
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本の大部分を割き、このシャーマンとの出会いが描かれている。ジャングルの奥にいるシャーマンとは何なのだろう?と本を読みながら、一度は疑問に思うだろう。謎めいたものに、どこか導かれるかのように進んでいく。
そして、シャーマンがいる村に着いてから、うるまさんは、別の世界へと連れて行かれる。そこで見たのが、冒頭の極彩色のコンドルだった。ここでは、うるまさんが見た世界、それは自分との会話が書かれている。
旅をする事は、自身と向き合う事であり、そして時には、苦しい事もあるのかもしれない。本を読みながら、別の世界へ連れて行かれていく臨場感がたまりません。
旅の終わり方の難しさ
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700日以上旅を続けて、アフリカでの過酷な旅を終えた後に、ヨーロッパ、アジアエリアと入って行きます。
ただ、ここから旅をどう終えるのかの葛藤が描かれています。物理的に中国のエリアに行って、終わりというものではなく、心の中でここで終わりだという納得感、満足感を求めていきます。
何かを終わりにするのは難しい。自分で終わらせるのかもしれないし、誰かによって終わらせられるのかもしれない。この旅の終わり方を通じて、僕らの身の回りの何かを始めたり、終わりにしたりする事を考えるきっかけになります。
最後に
この本を読み終えることは正直疲れる、と言った方が正しいのかもしれないです。否定的な意味ではなく、感情が動かされて、という意味で。本書を通じて、うるまさんは「より深い旅を」ということを本の中で伝えています。
それは、自分と向き合い、そして、他人としっかり会話をする事なのだと捉えました。旅とは出会いだ、とあとがきにありますが、この偶然の出会いがあるからこそ、僕らを旅に足を運ばせる強い力を持っている事は、間違いないです。
旅で僕らが出会うのは、極彩色のコンドルなのか。それとも、何か別の出会いなのだろうか。