ライター

永崎裕麻(ナガサキ ユウマ)フィジー南国校長|約2年間の世界一周を終えて、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。RECOMPANY取締役。 南の島のゆるい空気感を日本社会に届けるべく「南国ライフスタイルLABO」というコミュニティーを運営。内閣府国際交流事業「世界青年の船2017」日本ナショナル・リーダー。 2019年からはフィジー・デンマーク・日本の世界3拠点生活(トリプル・ライフ)を開始(現在はコロナで休止中)。 著書に「まんが南の島フィジーの脱力幸福論」「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」。

「やりたいこと」の見つけ方

「やりたいことを100個書き出してみよう」

よくあるワークです。
体験したことがある人も多いのではないでしょうか。そこから人生のヒントを得られた人も多くいると思います。

ただ、私はあまりこのワークをうまく活用できなかったタイプの人間です。そもそも「やりたいことが片手で数えられるくらいしか浮かばない」からです。

100個のマスを埋めるために、無理やり、「そんなにやりたいと思ってないこと」をひねり出したり、「ヨーロッパに行きたい」と書かず、「イタリアに行きたい」「フランスに行きたい」「イギリスに行きたい」などと、小学生の作文で文字数を稼ぐのと同じ戦略を取ったりして、それでも100マスを埋められないことに落ち込んだりしてしまいます。


私と同じようなタイプの人もきっといるんだと思います。この記事はそういう人向けのものです。

このワークに苦手意識がない人だったとしても、意外と落とし穴なのが、100マス埋めることが目的化してしまい、そこで満足してしまうという点です。本当に重要なのは、100個の中から優先順位を決め、計画を立てて実行していくことなのに……。

逆に、私のように「やりたいこと」がとても少ないタイプは便利な点もあります。最初から「やりたいこと」が厳選されている状態なので、100個のリストから優先順位をつけていくという難作業を省くことができます。


また、「やりたいこと」が1つとか2つしかない人は、「あれもやれてない、これもやれてない」とはならず、「しっかりとやりたいことを実践できている」感覚になります。達成感があり、幸福感がアップします。

それがエネルギーになってまた別のチャレンジができます。逆説的ではありますが、「やりたいこと」を絞っていたほうが、やりたいことをたくさん達成できるという現象が起きることもあるのです。

それは本当にやりたいことなのか?


この数年、世界中で激増しているミニマリストたち。彼らは持ち物を減らして生活することを目的にしているわけではありません。「厳選した物で豊かに暮らす」を実践しています。

それならば「物」だけではなく「やりたいこと」もミニマルにしていくという発想があってもいいのではないでしょうか。では、「やりたいこと」を厳選していくにはどうすればいいのでしょう。私は以下3つの質問が有効だと考えます。

1.「本当にやりたいことなのか?」


「いつか起業したい」と言う人、多いですよね。でも、「本当に起業したいの?」と踏み込むと、なんとなくかっこいいから「将来は起業」って口にしていただけだと本人が気づくことはよくあります。

「本当にやりたいこと」って実はそんなに多くはないのではないでしょうか。「やりたいこと」で考えると、偽物(ノイズ)が混じっていて、本物が見つけにくくなってしまいます。

2.「ジェネリックで代替できないか?」


ジェネリックとは、「費用は安くて、価値はほぼ落ちないこと」を指しています。私の友人のサッカー好きは「サッカー ワールドカップ2018を開催国のロシアで観戦したい!」と息巻いていましたが、結局、「彼の近所にあるパブリックビューイングで観戦」というジェネリックに切り替え、「最高に楽しかった!」と満足していました。

薬以外でも、ジェネリックで代替しても遜色がないものは増えてきているのではないでしょうか。

3.「人生の貴重な時間が減るけどそれでもいいのか?」


日本は世界で最も「資格ビジネス」が成功している国です。漠然と「資格をとりたい」という方も多いのではないでしょうか。資格の難易度にもよりますが、その取得の勉強に費やす時間は相当なものです。資格をとらないという判断をすれば、その時間分、他のことができます。

日本人はそもそも多忙です。睡眠時間を削ったりして、なんとか自由時間を捻出していたりします。その貴重な時間を投資するに値するのかをしっかりと考えてみてもいいのではないでしょうか。

「やりたいこと」<「後悔しそうなこと」


私は小中高大と学生時代は夢を持っていませんでした。大学を卒業して社会人になっても、特にやりたいことに出会うことができていませんでした。

そんな社会人3年目のある日、会社の同期40人と「宝クジで1億円が当たったら何をしたいか?」について雑談していました。

多くの同期は「世界一周には絶対に行きたい!」と盛り上がっていましたが、そのときの私は「そうか。世界一周か。もしかしたら行ってみたいかも……」とその程度の感覚でした。

ただ、「やりたいこと」が皆無の私にとって「少しでもやってみたいかも」と思えることはとても貴重でした。私はその小さな芽を大切にしようと思いました。


そこから、世界一周にかかる費用を調べ、宝クジなんかに当たらなくても行けることを知り、世界一周へ出発しました。2005年1月のことだったので、もう17年前になります。「世界一周には絶対に行きたい!」と言っていた同期たちは、いまのところ誰も行っていません。


おそらく、同期のメンバーたちはやりたいことが他にもたくさんあるのだと思います。私のような「やりたいことがない人」は「やりたいことが多い人」に比べて、選択肢に悩まされることが少ないように思うのです。

たまに出てくるやりたいことを大事にすればいいだけなので、シンプル。優柔不断な私でも、行動に移すことが簡単です。なにせ一択なので。

選択肢の減らし方のほうが大事な時代


私が大学生の頃に読んだ本にはこう書いてありました。「人生が豊かかどうかは、選択肢の数で決まる」と。それは本当なのでしょうか?

心理学者のバリー・シュワルツさんは、「選択肢の多さが、逆に幸福度を下げている」と言います。理由は以下の3つ。

・選択肢が多くて、「選択できない」もしくは「選択を先延ばしにしてしまう」など、自分自身への無力感が生まれてしまう。

・選択できたとしても、「その選択が本当に正しかったのか」と疑念をもったり、「あっちを選んだほうが良かったかも」と後悔したりしてしまう。

・そもそも選択肢が多いと、「自分にピッタリのものがあるのでは」と期待値が上がってしまうので、満足することが難しくなってしまう。

情報量が格段に増え、選択肢が豊富な現代、選択肢をどう減らすのかが重要になってきています。

「やりたいこと」をたくさんリストアップし、やっていくのもいいでしょう。ただ、私のようにやりたいことがあまりない人は、「これはやっとかないと絶対に後悔しそうなこと」を1つ2つ挙げ、それをやっていくのもいいと思います。

ライター

永崎裕麻(ナガサキ ユウマ)フィジー南国校長|約2年間の世界一周を終えて、世界幸福度ランキング1位(2016/2017)のフィジー共和国へ2007年から移住。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズ校長。RECOMPANY取締役。 南の島のゆるい空気感を日本社会に届けるべく「南国ライフスタイルLABO」というコミュニティーを運営。内閣府国際交流事業「世界青年の船2017」日本ナショナル・リーダー。 2019年からはフィジー・デンマーク・日本の世界3拠点生活(トリプル・ライフ)を開始(現在はコロナで休止中)。 著書に「まんが南の島フィジーの脱力幸福論」「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」。

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