電車に揺られながら読む本は、いいものだ。
本を読むのは好きだけど、家にいるとついほかごとに気を取られたりもする。掃除しなきゃいけないなーとか、ご飯つくってないなとか、あの仕事終わってなかったなとか。
電車は、できることが限られている。持ち物も限られている。だから手の中にある本に集中できる。それにふっと現実に意識が戻ったとき、目の前の景色が進んでいて、まるでワープしたような不思議な感覚になるあの瞬間が好きだ。
そんな私は、2023年のとある日、SNSでとある投稿を見かけた。
読みたい本を2,3冊持って都内から湘南新宿ラインに乗る。ほどよく読んだころに気づくと高崎に着いている。美味しい個人店でご飯、酒、コーヒーなどを楽しみ、レベルブックスで本を買う。どこに行っても混んでるゴールデンウィーク、こんな過ごし方がおすすめです。高崎は混んでません。
— rebelbooks (@rebelbooksjp) April 30, 2023
埼玉県本屋巡りで、南北の縦のラインを攻めるなら、やっぱり小声書房、須方書店さん、rebel booksさんのルートが良いかと。高崎駅を起点に逆でも良し。高崎線を利用している本好きの皆様は是非、参考にしてみてください。 https://t.co/O0jIrx933z
— 埼玉県の本屋「小声書房」|新刊注文&買取|1冊からでも大歓迎✨ (@kogoeshobo) June 15, 2023
これはやってみたい!!と思った私は、早速決行することもなく、年末を迎えた(なぜ)。
その年の年末、今年は帰省どうしようかなぁ。帰省よりもどこか行きたい気もするなぁ。とか考えていたときに、また別の投稿のことを思い出した。
「青春18きっぷ×積読」のコラボ旅、中毒性が高くて何回もやってる。青春18きっぷを買ったら、積読本を3冊ほど持って、とりあえず遠くに行く電車に乗ります。鈍行列車で移動に8時間とかかかるので、列車内でひたすら本を読みます。いい感じの場所に着いたら美味しいもの食べます。これを繰り返します。
— 柞木風(ユスキカゼ) (@yusukikaze) August 8, 2023
今度こそ、これだ!!!とひらめいた私は、12月30日の早朝、青春18きっぷを片手に電車に乗り込んだ。
青春18きっぷでめぐる本の旅
今回考えたルートは、こんな感じ。
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昼:高崎到着&お昼ごはん
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Rebel Books(高崎にある本屋さん)へ
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夕方:埼玉の小声書房へ向けて移動
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東京へ移動&宿泊
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翌日:実家の名古屋まで7時間ほどかけて鈍行で向かう
ルチャ・リブロ
まずは、千葉から高崎へ向かう電車の中で、奈良の山奥で個人の蔵書を図書館として開いている、人文系私設図書館ルチャ・リブロの司書さんが書いた『本が語ること、語らせること』を手に取った。
図書館を訪れた人の悩み相談に、選書というかたちで答えていく一冊。
「そんなことで悩んでどうするの?」と、もしかしたらするりと一蹴されてしまうかもしれないモヤモヤやぐるぐるに、一つひとつ丁寧に向き合って、「こんなのはどうでしょう?」と提案してくれる。
そのやりとりに本を通して触れていると、ふと「誠実に生きようともがいている人に届けたい本」というこの本に対するフレーズが浮かんできた。
そうやって、少し遠い地方の本に囲まれた空間に思いを馳せたり、言葉を噛みして味わったり、いつのまにかアルプスみたいな山が覗くようになった電車の窓を、ただぼーっと眺めたりしているうちに、高崎に到着した。
食べて、出会って、また食べて
高崎にたどり着いた頃には、すっかりお昼。お腹も空いた。焼きまんじゅうや、釜飯など有名な食べものもいろいろあるけど、私が目指すは、ここ。スパイスカレーのお店、curry stand baimaiさん!
インスタはこちら
ちょっと歩くけど、高崎駅からは徒歩で行くことができる。開店して1時間もしないくらいで着いたけど、お店の前はすでに行列。
美味しそうな香りに包まれながら、メニューを眺めてこれにするのか、あっちにするのか、それともこっちにするのか……しあわせな悩みに没頭する。
スパイスを使ったドリンクや、季節の野菜や果物が意外な組み合わせのラッシーなんかもあって、どんな味なんだろう?と想像力が試されるし、目移りがとまらない。
散々迷った末に選んだのは、よくばりに二種類のカレーとカルダモンのチャイ。鮮やかな野菜に彩られたカレーは、見た目も味も抜群に美味しかった。
美味しすぎて、あっという間に食べてしまったカレーに名残惜しさを感じつつ、次の目的地Rebel Booksへ。baimaiさんのご近所で、徒歩で行くことができる。
Rebel Booksさんは、SNSでずっとフォローしていて行ってみたかった本屋さん。お店では、クラフトビールやジン、日本酒を片手に本を見ることもできる。
高崎出身の店主さんが、高崎市のおすすめスポットも教えてくれるし、手作りの「高崎市街地を歩いて楽しむMAP」をもらうこともできる。
ZINE(個人やグループが自由な手法、テーマで制作した冊子)もたくさん置いてあり、じっくりいろんな本を手に取りながら本の間を歩き回り、結局2〜3時間くらいはうろうろしていた。
何冊か買いたい本にも出会い、Rebel Booksさんを出たのはすっかりおやつの時間を過ぎた頃。ふと、向かいのかわいいお店が目にとまった。
昔からあった建物なのか、窓枠や内装は古民家風でレトロな雰囲気。ガラス窓には白い手書きの文字があって、入り口や店内には、年季が入った様子の古本もたくさん並べられている。
お店の名前は、「灯り屋」。カフェ兼ゲストハウスだそうで、夜は地元の人が飲みに来る場所にもなっているようだった。
そこで私が頼んだのは、ナッツのタルトとコーヒー。ぎゅうぎゅうに敷き詰められたナッツの香ばしさと、爽やかな苦味のコーヒーは相性抜群だった。
すっかり暗くなった道を駅へと歩く道中。レトロな外観の建物がそこかしこに残っていて、暗がりの中でぽっと光を灯した小さなお店もたくさん目に入る。
埼玉へ向かう電車に乗る頃には、私はすっかり高崎が好きになって、また遊びに来ようと心に決めていた。
・名称:currystand baimai
・住所:〒370-0813 群馬県高崎市本町64-1-1
・地図:
・営業時間:11:00~16:00
・定休日:日、月
・電話番号:0273818323
・公式Instagram:https://www.instagram.com/currystandbaimai/
・名称:REBEL BOOKS
・住所:〒370-0059 群馬県高崎市椿町24-3
・地図:
・営業時間:13:00~18:00
・定休日:水曜日
・公式サイトURL:http://rebelbooks.jp/
・名称:灯り屋
・住所:〒370-0059 群馬県高崎市椿町41
・地図:
・営業時間:16:00~0:00
・定休日:火、水、木曜日
・電話番号:+81273881298
・公式サイトURL:http://guesthousegunma.com/
積読は減らない
高崎から東京へ向かう途中、埼玉を電車が通る。
これまたSNSでずっとフォローしていた小声書房さんが、ちょうど道中の北本市に位置するため、乗り降り自由な青春18きっぷの利点を活かし、途中下車で本日二軒目となる本屋さんへ足を運んだ。
東京へ行く電車に乗ろうと改札を通る瞬間、きっぷが見当たらないことに気づき、本屋さんまで息を切らして猛ダッシュしながら探す羽目になった。ポケットにきっぷを入れるべきではないと学んだ。
小声書房さんは、個人書店でありながらまちの本屋さんであることを大切にしているため、ZINEや雑貨など店主さんのこだわりも感じられる一方で、漫画本や絵本のような親しみやすいものも置いてある。
そうして積読を手に、美味しいものに舌鼓をうちつつ、本屋をめぐった成果がこれだ。
……なんだかおかしい。気づいている人もいるかもしれないが、この日私が読み終えた本は一冊。対して、新しく買った本がこれ。
全然積読が減っていない。むしろ増えている。
積読と本屋めぐりと美味しいものと電車をかけあわせた旅は、心も身体も充実感にあふれていたので、よかったらぜひ次のお休みにやってみてもらいたいなと思い、こうやって書いておくことにした。
けれども、この旅の最大の欠点は積読が一切解消されないこと(笑)
積読の数冊を鞄に詰め、さらに旅先で本屋をめぐるのだから当然といえば当然だ。
もし、これから積読×電車旅に出る賢明な人がいたら、積読と新たに買う本とのバランスは考えた方がいいかもしれない。なにより荷物が重いし。
翌日の東京から名古屋への道中でも、名古屋から千葉への帰り道でも、もちろん本を読んだ。でも積読は全然減らない。
ちなみにとても残念なことに、2024年冬から青春18きっぷの仕様が変わってしまった。そのため、連続する3日間ないし5日間でしか使えなくなってしまい、不便になった。
それでも、長距離をのんびり移動するなら青春18きっぷは便利ではあるし、お得な使い方もできる。また、青春18きっぷ以外にも、地域に特化したお得なきっぷもあったりするので、そういうのを調べていろんなルートを考えたりするのも楽しいかもしれない。
なにはともあれ、積読×電車旅は、普段出かけるのが億劫になりがちな人にこそ試してみてもらいたいし、みんなのおすすめルートもぜひ教えてもらえたらうれしい。
・名称:小声書房
・住所:〒364-0031 埼玉県北本市中央1丁目109 清水コーポ・B 103
・地図:
・営業時間:公式Instagramをご覧ください
・公式Instagram:https://instagram.com/kogoeshobo?igshid=MzRlODBiNWFlZA==
All photos by Atsumi Mizuno