ニュージーランドの庭
ライター

田舎の古民家で暮らす27歳のマーケター。ゼロ日婚をした夫と2人でニュージーランドにてワーキングホリデー生活を送る。帰国後はフルリモートで会社員をしながら田舎暮らし。趣味は料理で、現地での暮らしや食文化に触れるような旅が好き。「主体的な選択で、幸せな人生をデザインできる人を増やしたい」という想いを胸に発信をしています!

あたらしい景色に出会ったとき、心のなかがすーっと静かになるような気がします。

人の話を聞いて、はじめて知る考え方にふれたとき、日々考えていた世界の枠がすこしだけ広がる気がします。

それが、わたしにとっての「旅」の意味です。じつはこの感覚、昔からずっと同じだったわけではありません。


旅は、いつも同じように見えて、自分の年齢や状況で表情を変えていくものだと思います。

この記事では、そんな私の人生の中での旅の変化を綴ります。あなたにとっての旅と重ねながら、読んでいただけたらうれしいです。

「たのしい!」がすべてだった学生時代

黒卵
学生のころの旅は、とにかく「思い出づくり」でした。

ふだんは学校で会うだけの友だちと、泊まりがけで出かける特別な時間。

いつもとちがう景色を見て、はしゃいで、夜通しおしゃべりをして……。朝まで話して、すこしだけ眠って、「たのしかったね!」と笑い合う。

そんな時間が、たまらなくうれしかったのです。ただそれだけで、じゅうぶんでした。

旅の目的は、観光地をめぐることでも、グルメを楽しむことでもなく、「みんなと過ごすこと」そのものだったのかもしれません。

「旅」と「旅行」はちがうもの?

広島
社会人になってしばらくして、私にとっての「旅行」が、「旅」という感覚になりました。

きっかけは、広島のゲストハウスに泊まったことです。

オーナーさんを中心に、友人や、そのさらに友人が集ってくる、ゆるいコミュニティができあがっており、旅仲間ができたのです。

気がつけば何度も同じ場所に通っていました。そこで出会った人たちとは、学歴も、肩書きも、会社名も、仕事も関係なくつながることができます。

みんなでゲストハウスに集まり、暮らすように過ごす。そんな時間が、いつの間にか、わたしにとっての「旅」になっていきました。

食卓
とくに印象的だったのは、「人との出会い」です。

大人になると、会社の外で人間関係をつくることが難しくなります。でも、旅のなかで出会う人たちは、なんの利害関係もなく、ただ「人と人」としてつながることができます。それがすごく心地よいのです。

学校や会社といった共通点がない人たちとの出会いは、さまざまな生き方も教えてくれました。会社員以外の働き方、東京以外での暮らし方。人生の選択肢が大きく広がったのは、たくさんの旅を通した出会いのおかげでした。

旅がくれた、いちばん大きな経験

羊
そんなわたしが、いちばん大きな旅に出たのは、結婚2年目のこと。夫婦でニュージーランドに、ワーキングホリデーに行くことにしたのです。

1年間、移動をしながら暮らすような旅。

2週間ごとに滞在先を変えたり、車中泊をしたりしながら、ニュージーランド全土を巡りました。

たくさん活用したのが、「WWOOF(ウーフ)」という仕組みです。農場や家庭に滞在して、農作業を手伝うかわりに、食事と宿を提供してもらう、エクスチェンジサービス。

わたしたちは、この仕組みを通じて、たくさんの家族のなかにお邪魔しました。

2週間くらいの滞在でも、生活のなかに混ざっていくことで、その土地のこと、家族のこと、文化のことが、肌で感じられるのです。

ミルク牧場を経営する家族のもとに滞在。搾りたてのオーガニックミルクをいただいていました。
わたしは、このスタイルが本当に好きです。たった2週間でも、その家族のことを少しだけ知ることができます。

食卓での会話や、庭での作業、空き時間に連れて行ってくれたアクティビティ。そんなひとつひとつが、旅を「観光」ではないものにしてくれます。

何を思ってその地に住むことを決め、これからの人生をどう描いていくのか。ひとりひとりの人生哲学に触れるようで、とても楽しい旅でした。

旅は、人生の選択肢をふやしてくれる

ニュージーランドの旅のあいだ、夫とよく話をしました。

「この自然の風景、落ちつくね」
「この人たちの暮らし方、すてきだね」
「この鳥の鳴き声、かわいい」
「こういう生き方も、あるんだね」

そうやって、毎日なにかを見て、感じて、話していたのです。

アルパカ動物に触れる機会もたくさん
たった1年の旅でしたが、日本でふつうに暮らしていたら知らなかったことばかりでした。「当たり前」という壁がなくなり、暮らしの選択肢や考え方が大きく広がりました。

その国の自然にふれ、食べものにふれ、人にふれ、それらが混ざり合って、「こういう暮らし、いいな」と思える瞬間がありました。

旅は、きっかけをくれるものだと思います。

「こうあるべき」と思っていた価値観がほぐれて、「こういうふうにも、生きていいんだ」と教えてくれるのです。

「旅の仲間」は、人生の宝物

ニュージーランド以外でも、海外での印象的な旅は、やはり暮らすような旅でした。

ドミニカ共和国に友人の実家に遊びに行ったこと。家族の一員のように迎えてもらって、一緒に踊りながら年越しをしました。ドミニカの食や文化にたくさん触れただけでなく、友人が生まれ育った場所に身を置き、家族を大切にするあたたかい人たちと交流をし、感じることがたくさんあった旅でした。

ドミニカクリスマス&ニューイヤーホリデーをドミニカ共和国で満喫
フィリピンで孤児院に滞在したときは、子どもたちの純粋さに触れて、生きていく上で本当に大切なものを思い出しました。

タイで日本語を教えていた友人に、学校に連れて行ってもらったことも忘れられません。バンコクだけでなく、友人が暮らしたタイの田舎を体験できたことも印象的です。

ただの「旅行者」ではなく、その土地の暮らしに入りこむような体験が、わたしはとても好きです。

国内でも、よく通っている広島のゲストハウスで、みんなで暮らすように滞在したり、友だちの実家にお邪魔させてもらって、畑の野菜を収穫させてもらったり、一緒に花火を見に行ったり。

そういう時間のひとつひとつが、心に残っています。

だれかの暮らしの中に、ほんの少し入れてもらうこと。その土地の空気を、深く吸い込むこと。旅のなかで出会った人と、なんでもない会話を重ねていくこと。

そのひとつひとつが大切な思い出になり、その先のわたしをつくってくれるのです。

旅を重ねるたび、わたしは変わっていく

夕日
社会人として働いていると、日々に変化が少なくなります。

「仕事モード」のまま人と接する時間が増えていきます。

もちろん、職場の人と信頼関係ができて、気軽に話せるのはうれしいことですし、仕事からはたくさんの学びもあります。会社での出会いから、仕事を辞めても繋がり続ける大事な友人もできました。

でも、ときどき、肩書きを脱いで、「ただのわたし」に戻りたくなります。

旅をしていると、その状態に自然となれるのです。

誰かと肩書きなしで話すこと。利害関係のない人と、まっすぐに向き合うこと。なんでもない日常のなかにおじゃますること。

それが、わたしにとっての旅です。

これからも、そんなふうに旅をしていきたいと思っています。

その土地の暮らしのリズムを感じるような旅。旅の時間が、わたしの心を豊かにし、わたしの考えを、すこしだけ広げてくれる。そして、なによりも「人間としての感覚」を取り戻させてくれる。

日常に戻ったとき、旅で出会った人たちのことを思い出すと、心が温かくなります。異国の地で見たきれい夕陽を思い出すと、ちょっと悩んでいることからも解放されます。

家族でも、友だちとでも。旅のスタイルはさまざまですが、根っこにあるのは「人とのつながり」と「新しい発見への好奇心」。この2つを大切にして、これからもたくさんの素敵な出会いと経験を重ねていきたいと思います。

きっとあなたにも、あなたなりの旅のスタイルがあるはず。それがどんなものであっても、旅があなたの人生に彩りを添えてくれますように。

All photos by Yuka Chiba

ライター

田舎の古民家で暮らす27歳のマーケター。ゼロ日婚をした夫と2人でニュージーランドにてワーキングホリデー生活を送る。帰国後はフルリモートで会社員をしながら田舎暮らし。趣味は料理で、現地での暮らしや食文化に触れるような旅が好き。「主体的な選択で、幸せな人生をデザインできる人を増やしたい」という想いを胸に発信をしています!

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