旅行好きにとって、連休は絶好のチャンス。
ゴールデンウィークやお盆、年末年始など、日本では“みんなが一斉に休むタイミング”に旅へ出かける人が多いですよね。
一方、ヨーロッパでは「バカンス文化」が根付いており、休みの取り方や旅のスタイルが日本とはまた少し異なります。
今回の記事では、そんなヨーロッパと日本の有給休暇のちがいについて、「休みの取り方」「旅のスタイル」「旅費の感覚」にフォーカスして見ていきたいとおもいます。
見出し
休みの取り方:「カレンダーどおり」or「自分のペース」
スイス・モントルーのレマン湖
わたし自身、スイスに暮らし始めて4年が経ちますが、実際に、日本とヨーロッパの連休の「違い」を肌で実感しています。
では、ヨーロッパの人々はどのように休みを取り、どのように旅を楽んでいるのか。そして、日本人の旅のスタイルと何が異なるのでしょうか。
日本:カレンダー上の連休制度
日本では、多くの人が同じ時期に休みを取りますね。とくに、ゴールデンウィーク(GW)、お盆、年末年始は「三大連休」とも呼ばれ、この期間に国内外へ旅行に出かける人は多いと思います。
そのため、どの観光地も混雑し、交通機関は満席、宿泊料金も通常期の数倍になるのはみなさんご存知のとおり。また、日本の企業文化では、有給休暇があっても自由にとりづらい雰囲気があり、長期休暇をとることはハードルが高いように思います。
その結果、カレンダー上の連休をフル活用して旅行に行くスタイルが定着しています。
スイス:バカンス文化が根付いた休暇制度
一方、スイスでは有給休暇の取り方が自由で、長期バカンスを楽しむ文化が根付いています。法律で最低4週間の有給休暇が保証されており、5週間以上取得できる企業も多く存在しています。
とくに夏には、2週間から1カ月の長期休暇を取る人が多く、7月や8月には職場の人数が減ったり、飲食店や商店が「バカンスのため休業」ということも珍しくありません。
さらに、スイスには「連邦休日」や州ごとの祝日があり、地域によって休日が異なります。全国一斉に休むのではなく、比較的分散して休暇を取ることができるのも特徴の一つです。
旅のスタイル:「弾丸旅行」or「じっくり滞在型」
車でスイスからクロアチアの島へ。
日本:行きたいところを詰める旅
日本では、連休が限られているため、短期間でできるだけ多くの観光地を巡る「弾丸旅行」が主流かなと感じています。例えば、ゴールデンウィークにヨーロッパ旅行をする場合、「パリ・ローマ・バルセロナを数日間で巡る」ようなハードスケジュールを組む話もよく耳にします。
わたし自身、「せっかく行くなら、あれもこれも見たい!」という気持ちで、スケジュールを詰めて、「疲れた!」となった経験も少なくはありません。
スイス:リラックスを重視した長期滞在型の旅
スイスの人々は「ゆっくりと滞在する」ことを重視していて、1カ所に1週間〜滞在することも珍しくはありません。
「観光名所巡り」を重視するよりかは貸別荘を借りたり、キャンピングカーや車でロードトリップをしたりしながら、その地域を時間をかけて探索するようにのんびり過ごす。そんな人が多いように見受けられます。
ヨーロッパの短い連休の楽しみ方
とはいえ、週末+1日の祝日のような短い連休を活かして気軽に小旅行を楽しむ人もたくさん。
例えば、飛行機で2〜3時間圏内の都市へ飛び、美術館や建築巡りを満喫する「シティトリップ」、自然豊かなエリアでの「アウトドアトリップ」など、目的に応じた多様な旅が可能です。
短い休みでも気軽に異国の雰囲気を味わえるのがヨーロッパの魅力。スイスからは車・電車・飛行機を駆使すれば、2〜3時間圏内で行ける場所や国はたくさんあります。
旅費の感覚:「今しかないから高くても」or「安い時期を狙って賢く」
10月のクレタ島では、ハイシーズン時の半額で宿泊
日本:高くても行く!連休に集中する旅行
日本の大型連休は、どうしても旅費が高騰しますよね。
「この時期しか休めないから」と、多少高くても決行する人も多いと思います。
スイス:お得な時期を狙って計画的に旅行
スイスのみならずヨーロッパ全土では、「行きたいけど高いなら、別の時期にしよう」という考えは一般的。
航空券や宿の値段を見ながら、自分のスケジュールを柔軟に合わせて旅を計画するスタイルです。
また、物価の高いスイスでは、旅行先の物価を考慮して行き先を決める人も多く、例えば、ポルトガルやギリシャ、東欧の国々は物価が比較的安いため、人気の旅行先に挙がりやすいです。
「旅」の価値観のちがい
Chalet(コテージ)では、ハイキングやサウナや映画などを友人らと楽しむ。
日本では、「せっかくの旅行だから、できるだけ多くの観光地を巡りたい」という考え方が根強い印象です。そのため、短期間で効率よく観光スポットを回る「観光重視型」の旅行が一般的。
一方、ヨーロッパ全体的に、旅行は「リラックスする時間」という考えが強く、長期滞在で、のんびり過ごすことを旅の目的にしている人が多いです。
そのため、「何もしない」を楽しみ、ただビーチで横になったり、ハイキングしたり、心身をリフレッシュすることに重きを置いているように感じます。
また地元や家族のいる地域に帰省し、彼らと一緒に過ごすことに時間を割く人も多いです。
ギリシャ・ケファロニアの家族へ会いに。
暮らしに溶けんだ「旅」
このように、日本とヨーロッパでは連休の概念や旅のスタイルが異なることを実感しています。
どちらが良い・悪いというよりかは、それぞれの働き方や文化の中で、旅のスタイルが育まれてきたんだと思います。
けれど今、スイスで「4週間以上のバカンス制度」を体験してみて、自由に「休みを選ぶ」という行為は、仕事とプライベートを両立させるためにとても大切で、人生の充実度にダイレクトに影響すると感じます。
「今年のバカンス、どこ行くの?」
こんな会話が日常にあるこの暮らしには、癒しと励ましをもらいます。
そして旅は、がんばるためのごほうびというより、もっと日々の暮らしの中に、自然と溶け込んでいていいもの。
そんなふうに思えるようになったのは、このバカンス文化のおかげかもしれません。
All photos by Saeno