ライター

現在ハンガリーで建築の大学に通学中。 一度アメリカの大学で生物学部を卒業して、コロラド州とニュージーランドの剥製工房で熊や大型の鹿、野生のネコ科の動物などの剥製を作る仕事を体験した以外はほとんど無職でフラフラしたり。

タイトルを見て「え!?」と思われた方もいるかもしれませんが「カヤック」と言っても、某旅行検索サイトのことではありません。

川下りの旅の道具です。

南米に行くならアマゾン川。アメリカだったらミシシッピ川。そしてヨーロッパはドナウ川。私は、世界の大河を舟で旅するのがたまらなく好きなのです。

今回ご紹介するのは、実際に私のドナウ川の旅を叶えてくれた旅の相棒、エルズミア。アウトドアブランドMontbellのフォールディング・カヤックです。

フォールディングカヤックとは

エルズミアの組み立て。骨組みを組んで、黄色の本体に挿入する。
フォールディング・カヤックとは、読んで字のごとく「折り畳み式のカヤック」です。我がエルズミアは全長5m30cm、重さは22kg。海でのツーリングを想定した大きなカヤックですが、折りたたむと1つのバックパックに収めることができます。

22kgって重くない?と思った方もいるのでは。

いえいえ、そんなもんじゃありません。これにパドルやその他の道具を含めるとバックパックの重さは約30kg。

エルズミアを背負う筆者ジョアナ。
重ッ!重いけど、その気になれば背負って歩けないことはないッ!車輪付きのカートを使ってゴロゴロ運ぶのも良し。車のトランクにも収まるし、飛行機にだって乗れちゃいます。

カヤックとは、自分の足で歩くことのできない場所へ連れて行ってくれる夢の道具です。

普通は持ち運べない大きな道具ですが、フォールディング・カヤックならどこへでも一緒に旅ができる。画期的な道具なのです!

カヤック旅のメリット1 川を下って世界を知る

セルビアにて、現地の方にイカダ船のパーティーに誘われました。
世界を旅するということは、世界の文化を知るということです。

大陸では、人類は川沿いに文明を発展させてきました。どの国へ行っても、川沿いには大きな町があって、人々の営みがあって、文化があります。大河を旅することは、世界を知る確実な方法とも言えます。

川沿いをカヤックで旅すれば、いつか必ず地元の人と出会って、その国のことを教えてくれるのです。そしてその誰かは、私のカヤックに興味を持って、「一体それはどういう乗り物なのか?」と珍しそうに尋ねます。

フォールディングカヤックの元祖と言われているのは、ドイツ製のファルトボートと呼ばれるものです。

私はせっかくだから「日本のカヤックだよ!」と自慢したくて、エルズミアを選びました。

カヤック旅のメリット2 地球にも体にも優しい

ドナウ川をカヌーで旅するご夫婦と遭遇。意外と体力を使わないので、川下りの旅の年齢層はちょっと高め。
人力の旅なら何千キロ移動してもガソリン代はゼロ。ただし時間はかかります。

人が自分の力で旅をするんだから、しょうがないじゃない。

人力の旅と言えば自転車が一般的ですが、あれは基本的に自分でペタルを踏まないことには進みません。ところが川下りなら、川の水は下流へ向かって一定に流れています。パドルを漕がずにボーッと川に浮かんでいるだけでも、意外なほど進みます。

体力に合わせて自分のペースで旅ができるのも、カヤックの魅力の一つです。

カヤック旅のメリット3 旅の予算を大幅カット

キャンプで過ごした夜。
カヤックで旅をした場合、宿泊はどうするのか?

私は基本的に野宿です。

あえて極端な例を挙げるならば、ホームレスが寝泊まりする場所として河川敷を選ぶのには理由があるのです。

初めて川沿いにテントを張った日、私は納得しました。夜は人が来ないから比較的安全(私は野生動物よりも人の方が怖いと思う派です)。川沿いには町があるから、ちょっと歩けば買い物ができて利便性もバッチリ。

スロバキアの首都・ブラチスラバ郊外でのキャンプ風景。
とはいえ流石にホームレス式の旅は表向きにはおすすめしません。幸いヨーロッパの場合、カヤックが競技やレジャーとして親しまれていて、ドナウ川沿いのほとんどの町にもカヤッククラブと呼ばれる施設があります。

カヤッククラブとは、地域のカヤック好きが練習場所や倉庫として使用する施設のこと。毎年たまに現れるドナウ川下りの旅人のために、キャンプ場を設けているカヤッククラブが少なくありません。

泥臭く人力で、円安も物価高も跳ね飛ばす。それがカヤック旅なのです。


今回ご紹介したフォールディング・カヤック、エルズミアによるドナウ川旅行の様子は、書籍『ホープレスinドナウ川』(報知新聞社)よりお楽しみいただけます。

職場をクビになった20代。まさにホープレスで旅したドナウ川。

ドイツからルーマニアまで9カ国の国境を越えて旅したエルズミアは、私の誇り高き相棒です。

All photos by Joana Sato

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現在ハンガリーで建築の大学に通学中。 一度アメリカの大学で生物学部を卒業して、コロラド州とニュージーランドの剥製工房で熊や大型の鹿、野生のネコ科の動物などの剥製を作る仕事を体験した以外はほとんど無職でフラフラしたり。

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