パミール高原標高3600mに佇む湖カラコリ湖へヒッチハイク
photo by Tomoya Yamauchi
オアシス都市カシュガルを離れ、次に向かうのはカラクリ湖です。標高3600mに位置し、7000mを越える山々を眺めることができる。ものすごくきれいな場所だと聞いていたので一度訪れてみたかったのです。
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秋の終わりの冷たい風の中、大切な親指を手袋で保護しつつ、カラクリ湖方面に向けてヒッチハイクを開始です。この道はパキスタンとの国境まで続く道。車の数も少ないので、長期戦を覚悟しながら待ちます。
何台か車が通り過ぎた後、なぜか中国公安の車が止まりました。「うわー何でよりによって公安が。ウィグル自治区は政治的にも複雑な地域なので嫌な予感。日本から来たらスパイだと疑われるかも」と内心ビクビクしつつも笑顔でニコニコしながら挨拶。
私:「ハーイ!ニーハオ!(怪しいものではありません)」
公安(中国語で):「#%&#$‘!」「@|¥~=&&!?」
私:「カラクリ湖までヒッチハイクしているだけなんです」
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何を言っているのかまったく理解できないのでボディランゲージで会話していると、彼らは私を逮捕するためではなく、助けるためにわざわざ車を止めてくれた様子で一安心。どうやらカラクリ湖までは直接行かないようですが、途中までは行くらしいです。
私を乗せたパトカーは、2時間ほど進んだ場所にあった警察署で停車。私が感謝を述べてヒッチハイクを継続するために立ち去ろうとすると、
「警察署まで一緒に来なさい(ボディランゲージで)」と、どうやら警察署の中まで一緒に行かなければならない様子。あれ?やっぱり逮捕される?パスポートの提示を要求されて没収。
少し不安に思いながら、しばらく椅子に座って待っていると、
「お前腹が減っているか?昼飯を食べるぞ(ボディランゲージで)」と、なんと昼食を警察署内でおごってくれました。こんなことってありますか⁉︎
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警察署でご飯をおごってもらいました。でっかい羊肉がドンっとのった炊き込みご飯(ブロフ)とサラダとスイカだ。本当にありがとうございます。
そして昼食を食べた後は、何と目の前の検問所で止める車にカラクリ湖まで行くかわざわざ聞き始めてくださいました。そして待つこと20分のみ。難なく二台目の車をゲット。パミール高原の絶景を眺めながら、3時間ぐらいでカラクリ湖に到着しました。
カラコリ湖に到着 そしてキャンプ
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カラクリ湖に到着したのは、夕方になってからでした。湖からはムスタグ・アタ山(7546m)やコングール山(7649m)などの、ずっぽりと深く雪を抱いた7000m級の山々を見渡すことができます。湖面の標高は3600m。
湖の面積はそれほど大きくありませんが、パミール高原の山々に囲まれた景色は素晴らしすぎます。夏のシーズン中は宿泊施設もあるようですが、10月下旬の当時はもう閉まっていました。テント持ってきて良かったー!
湖の周囲ではヤクや羊、山羊などが放牧されています。放牧されている山羊と背景の景色がかっこいいので写真を撮っていると、この地域に住むキルギス族のおばちゃんがやってきて、「ヤギを柵の中に入れるのを手伝ってくれないかい?」という感じにボディランゲージで話しかけられました。
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各国のファーム仕事で家畜の扱いに慣れている私は、任せなさいという感じで大声を出しながら山羊を脅かして柵内に閉じ込めました。するとおばちゃんは「今夜寝る所あるの?」と、家に招待してくれた様子でしたが、今日は自然の中で寝たかったので今回は丁重にお断りしました。
別の男性にも話しかけられ家に招待していただいたので、カラコリ湖の周辺の家でホームステイ形式で泊めてもらうこともできそうですよ。
気温も夜になると、かなり冷え込むので(標高3600mですから)テントを張って泊まるバカは自分一人だけでした。寝袋を2つ重ね合わせてもかなり寒かったですが、夜にこそっとテントから顔を出して見た星空は素晴らしかったです。流れ星もたくさん見えました。
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翌日は湖の周りを一周しながら、周辺にある丘に(丘と言っても標高4000m以上は確実にあります)に登ってみることにしました。湖の周りには流れ込む川が無数にあり、湿地帯のようになっています。
その中に浮島のようにある足場をみつけてはジャンプしながら、何とか目的の丘方向に進んでいきます。寒さのせいで川の部分部分が凍り付いています。周辺ではこれぐらいの寒さなんか関係なさそうにヤクが草を食んでいます。
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旅していると、本当にこれまでの想像を超える美しい景色に出会うことがあります。
欲深い私は7000m級の山々をもっとはっきりと見てみたかったので、とりあえず近くにある一番高い丘に登ることにしました。まずトレッキングルートなんかないので、これまでの経験と直感を頼りに、丘に登りつつも湖を一周できる欲張りルートを見つけました。
丘の頂上に近づくほどものすごい強風で、ひどい時にはまともに立っていられずに、しゃがまなければならない程でした。それでも何とか頂上まで辿り着く頃には絶景が広がっていました。
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絶景を堪能した後は、今夜もここで一泊しようと思いながら下山したのですが、ちょうど湖の畔で3人の女性中国人旅行者と出会いました。彼女たちはここよりさらに南のタシュクルガンに3週間も滞在していて、よほどその場所が気に入ったのか、かなり強くオススメしてくれました。
こんなタイミングで彼女たちに会うなんて、たぶんこれはタシュクルガンに行けという何者からか送られたサインなんだ!と即断して、テントと荷物を大急ぎで片付けヒッチハイクでタシュクルガンに向かうことにしました。
タシュクルガンでタジク族の結婚式に参加
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サインを信じて、カラクリ湖の絶景を眺めながらのんびりヒッチハイクしていると、一台のキャンパーバンが目の前で止まり、そこには元気の良い5人の若い中国人トラベラーが。
「ヒッチハイクしてるの?ちょっとぎゅうぎゅうだけどスペース作るから待ってて」。
ドライバーとその彼女は、一緒に中国を3ヶ月間車で旅行しているらしい。他の3人とはカシュガルで出会って意気投合し、そのまま一緒に旅行しているみたい。本当にこの出会いは自分にとって奇跡的で、出会ってくれた彼らに感謝です。出会ってから5日間もそのまま一緒に旅をしました。
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今夜の夕食はキャンプで中国火鍋にするということで、食材やビール等も買って準備万端。後ほど食材等に掛かった費用は全部割り勘にしようということになりましたが、「あなたはゲストだから特別よ」と、結局最後に少額しか彼らは請求しませんでした。
中国人の人々のおもてなしには、このように何回も感動させられます。
その晩は食べて飲んで踊っての賑やかな夜でした。「日本の歌を歌ってくれよ!日本の踊りを踊ってくれよー!」という無茶ぶりにも酔っぱらった力にまかせて対応し、盛り上がって楽しい夜でした。
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タシュクルガンはタジク族の自治区であり、この地域に住むのはほとんどがタジク族の人々です。この町の人々は人懐っこくて、とても感じが良い場所でした。
この日はパキスタン国境まで車で行こうとしましたが、外国人には許可証が発行されず、中国人でも3時間しかエリアに滞在することしか許可されないという事で中止に。
その代わりにタシュクルガンから40kmほど離れた村で、結婚式があるとの情報を得てその村に向かいました。タジク族の結婚式には誰でも参加できるようです。
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結婚式が行われる村には、午後12時ぐらいに到着しました。村の周辺は土色をしたとても乾いた土地で雪を抱いた山々がきれいに見えます。「今日結婚式がある家はどちらですか?」と村人に尋ね、ピンク色の外壁をしたかわいらしい家を発見。
我々も何も無しで参加させてもらうのは気が引けたので、お菓子などを贈り物として持っていきました。参加する際は何か贈り物を持っていくのが、タジク族の結婚式でも礼儀だそうです。
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家を訪ねるとまだ結婚式は始まっていませんでしたが、結婚するカップルの親戚の方が、「ようこそ結婚式に来てくださいました!」とニコニコしながらお茶やお菓子を出してくれました。子どもたちも我々に興味津々で、結婚式が始まるまでしばらく一緒に遊んだりしていました。
お祝いの食事のために家の外では羊や牛が解体されています。キッチンは残念ながら男子禁制のようで、見せてもらうことはできませんでしたが、女性たちがおいしそうな食事を手際よく料理していました。
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タジク族の結婚式には音楽とダンスがつきものです。キーボードと電子音を組み合わせた軽快な音楽でみんな踊る踊る。手をくねくねさせて、輪になって。もちろん自分も踊らされました。日が暮れてくると参加者全員に食べ物が振る舞われました。
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何とありがたいことに、その日は結婚当事者の親戚の家に泊めていただけることに。この人々の見ず知らずの人々に対するホスピタリティは本当に見習わなければなりません。
その家族の方々がすごくいい人達で結局2泊もさせてもらうことになりました。本当にありがとうございます。
おわりに
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かつてシルクロードの拠点として栄えた歴史を感じ、ウィグルの人々の温かさに触れたカシュガル。ヒッチハイク中に味わった中国の方々の寛容さ。タシュクルガンでのタジク族の方々のおもてなし。中国の最西端では、嬉しい驚きの連続でした。