かつてシルクロードの交易の中心地だったウズベキスタン。
中央アジアの中心部に位置し、1991年に旧ソ連から独立しました。
日本の約1.2倍の国土に、約3600万人が暮らしており、若い世代の割合がとても高く、年々人口も増え続けています。
そんなウズベキスタンを先日訪れてきました。そしてタイミング良く、4月13日から開催されている「大阪・関西万博」ではウズベキスタンパビリオンが登場していて、なんと世界遺産をモチーフにデザインされているのだとか。
この記事では、ウズベキスタンの世界遺産の魅力と、そのエッセンスを詰め込んでつくられた大阪・関西万博のウズベキスタンパビリオンについてご紹介します。
見出し
- 1中央アジアの歴史と文化が息づく世界遺産都市ヒヴァ「イチャン・カラ」
- 1.1ヒヴァのシンボルである未完成のミナレット「カルタミノル」
- 1.2神学校に滞在できる「オリエントスター・ヒヴァ・ホテル」
- 1.3213本の柱に施された彫刻が美しい「ジュマモスク」
- 2大阪万博ウズベキスタンパビリオンに見るジュマモスクの美学と未来志向の取り組み
- 3中央アジアの交易とイスラム教の中心地「ブハラ歴史地区」
- 3.1チンギス・ハーンも攻めた、ブハラのアルク城
- 3.2チンギス・ハーンも壊せなかった伝説の塔「カラーン・ミナレット」と「カラーン・モスク」
- 4手作業から生まれる色鮮やかな“青”が魅力のウズベキスタンの伝統陶器
- 5文化の交差点「ウズベキスタン」が育んだユニークな文化
- 6旅の続きを、大阪・関西万博で
中央アジアの歴史と文化が息づく世界遺産都市ヒヴァ「イチャン・カラ」
西門の隣にあるキャラバン隊の像。当時はこのようにシルクロードを歩いてきたのだろうか?
ウズベキスタン西部のホレズム州にあるヒヴァは、昔からシルクロードを行き交う人々のオアシス都市として栄えました。周囲を砂漠に囲まれており、カラクム砂漠の入り口に位置しています。
城壁に囲まれていることもあり歴史的な建造物が保存状態よく残されたようだ
16~20世紀に存在したヒヴァ・ハン国がこの地に都を構え、全長6kmもの「デシャン・カラ(外城壁)」と、高さ8〜10mの「イチャン・カラ(内城)」という二重の城壁が都市を取り囲んでいました。
世界遺産好きにとってはたまらない認定証も入口すぐに飾られていた
現在もイチャン・カラは、当時の町並みがそのまま残されており、“博物館都市”と称されるほどです。
正式名称:ヒヴァのイチャン・カラ
登録年:1990年
登録理由:中央アジアの伝統的な都市計画と建築技術の優れた例として評価されている。
地図:
公式サイト:https://khivamuseum.uz/
ヒヴァのシンボルである未完成のミナレット「カルタミノル」
西門から入ってすぐ目に飛び込んでくるのは、鮮やかな青いタイルが印象的な、美しいヒヴァのシンボル「カルタミノル」。
直径は14.2m、現在の高さは26mありますが、じつはこれは“未完成”の姿。
町のどこからでも見ることができるヒヴァのシンボル「カルタミノル」
建設を命じたムハンマド・アミン・ハーンが途中で亡くなってしまったことで、工事は中断され、再開されることなく現在に至っています。
もし完成していたら、世界一高いミナレットになっていたかもしれない——そんなロマンを感じさせる建物です。
・名称:Kalta Minor Minaret
・住所:99H5+85H, Xiva, Xorazm Viloyati,Uzbekistan
・地図:
・営業時間:24時間
・定休日:-
・電話番号:+998623752455
神学校に滞在できる「オリエントスター・ヒヴァ・ホテル」
カルタミノルのすぐそばに建つ立派な建物は、かつての神学校「ムハンマド・アミン・ハン・メドレセ」。現在はホテル「オリエントスター・ヒヴァ・ホテル(Orient Star Khiva Hotel)」として利用されています。
日本の団体ツアーでもよく利用されているのだとか
建物内は、もともとの学生の勉強部屋や宿舎を客室として使用していて、内側には開放的な中庭もあり、自由に見学できるのが魅力です。
内部は広く、落ち着いて滞在できる
中に入ってみると、とても落ち着いた雰囲気で、まさに“泊まれる歴史遺産”といった感じでした。
・名称:Orient Star Khiva
・住所:PAKHLAVAN MAHMUD STR. 1, Khiva, 220900, 220900 Uzbekistan
・地図:
・チェックイン / チェックアウト:14:00~ / ~11:00
・公式サイトURL:http://globalconnect.uz/uzbekistan/hotels/khiva/orient-star
213本の柱に施された彫刻が美しい「ジュマモスク」
町の中心にあり、ミナレットはヒヴァを一望できる絶好のスポット
高さ42mあるミナレットが目印になっている「ジュマモスク」はヒヴァを訪れた際には絶対に外せない場所の一つ。
このモスクの最初の建設は10世紀頃。その後、火災などの影響で何度も修復を重ねてきた歴史があります。
柱の彫刻は1本1本異なる
ジュマモスクで圧巻なのは、213本の柱がずらりと並ぶ空間。一本一本の柱に美しい彫刻が施されており、なかには過去の火災で黒ずんだ柱を再利用しているものも。
砂漠地帯で貴重な木材を贅沢に利用してできた空間はまさに圧巻です。
・名称:Juma Mouque
・住所:99H5+2X6, Xiva, Xorazm Viloyati, Uzbekistan
・地図:
・営業時間:9:00~18:00
・定休日:-
大阪万博ウズベキスタンパビリオンに見るジュマモスクの美学と未来志向の取り組み
ジュマモスクは小さな天窓から入る光が神秘的
じつはこのジュマモスクの柱からインスピレーションを得て、大阪・関西万博のウズベキスタンパビリオンがデザインされています。
2025年大阪・関西万博 ウズベキスタンパビリオン(デザイン:アトリエ・ブリュックナー、提供:ウズベキスタン芸術文化開発財団〈ACDF〉)
大阪・関西万博にあるウズベキスタンパビリオンの屋根には286本の木材が使用されており、この部分がジュマモスクの柱のようになっています。重なり合う柱と梁が光と影を演出し、ウズベキスタンの伝統的な装飾模様を思わせるデザインが特徴です。
開放的なテラスエリアは、日差しを遮るだけでなく、訪れた人たちがアイデアを交換する場としても利用される予定とのこと。
パビリオンでは、ウズベキスタンの未来に向けたチャレンジを、体験型の展示で楽しめます。SDGsに基づき、グリーン経済への転換や再生可能エネルギー、エコな交通手段、省エネ住宅など、持続可能な暮らしを目指すさまざまな取り組みが紹介される予定です。
・名称:2025年大阪・関西万博 ウズベキスタンパビリオン
・開館時間: 9:00 – 21:00 (最終入場:20:30)
・入場方法: 事前予約 、当日受付、当日現地でのチケット購入(先着順)
・所要時間:10-30分
・大阪・関西万博ウズベキスタンパビリオン公式サイトURL:https://www.expo2025.or.jp/official-participant/uzbekistan/
*備考:ドイツの建築設計会社のアトリエ・ブリュックナー(ATELIER BRÜCKNER)がデザインと建築を担当
・公式サイト:https://www.atelier-brueckner.com/en
中央アジアの交易とイスラム教の中心地「ブハラ歴史地区」
ウズベキスタン南部に位置するブハラは、2500年以上の歴史を持つ街で、中世中央アジアの面影を色濃く残すイスラム教の聖地です。9~10世紀にかけてサーマーン朝の首都となり、その期間にアラビア文字を用いたペルシア語が発達しました。
シルクロードの要塞としてはすでに1世紀ごろから繁栄し、8世紀初頭にはアラブ人の到来によりイスラム文化が根づいていきます。その後チンギス・ハーンによって町の破壊はあったものの、16世紀に復活を遂げました。
アルク城から見たブハラの中心地
また、共産主義の旧ソ連時代は宗教が否定されてきた時代でしたが、それでもカラーン・ミナレットなどのブハラの貴重なイスラム建築や歴史的な町並みは保存されました。そしてそれらが今に残されていることに価値があるとされています。
中央アジア最古のイスラーム建築のチョルミナルのてっぺんにはコウノトリの巣のレプリカがある
正式名:ブハラの歴史地区
登録年:1993年 / 2016年範囲拡大
登録理由:中央アジアの重要な交易と学問の中心地として発展し、多くのイスラム教の歴史的建造物が保存されているため
地図:
公式サイト:http://bukharamuseums.uz/
チンギス・ハーンも攻めた、ブハラのアルク城
壮大なアルク城の要塞の門
ブハラ発祥の地に建つ「アルク城」は、ブハラの支配者たちの居住地となってきた場所です。13世紀にチンギス・ハーンに一度完全に破壊され、その後も外敵との戦いのなかで破壊と再建を繰り返し、最終的には20mにも及ぶ高さの外壁が築かれました。
壮大な門とは打って変わって、奥は荒れ地のままで、その中に遊歩道がある
立派な城門をくぐった先にはモスクや博物館があるのですが、奥の方は破壊されたまま手付かずの状態の遺構が残っており、不思議な空間が広がります。
・名称:Buxoro arki
・住所:QCH5+5VG, Afrosiab St, Bukhara, Bukhara Region, Uzbekistan
・地図:
・営業時間:9:00~18:00
・定休日:-
・電話番号:+998652241729
・公式サイトURL:http://bukharamuseums.uz/
チンギス・ハーンも壊せなかった伝説の塔「カラーン・ミナレット」と「カラーン・モスク」
チンギス・ハーンがその美しさのあまり破壊を思いとどまったという伝説も残されている
「カラーン」とはタジク語で“大きい”という意味。その名の通り、「カラーン・ミナレット」の基礎部の直径は9m、高さは46mにもなる巨大な塔です。塔は14層に分かれており、それぞれが異なるれんがの積み方をされているため、各層によって模様が違うのが見どころ。
カラーン・モスクは13世紀にモンゴル軍の来襲で破壊されたが再建された
隣にあるカラーン・モスクもまた壮大で、288の丸屋根をもつ回廊と巨大な中庭があり、最大1万人の信徒が祈りを捧げられる場所となっています。
・名称:Minorai Kalon
・住所:Khakikat Str. 9, Buxoro, Buxoro Viloyati, Uzbekistan
・地図:
・営業時間:24時間
・定休日:-
・名称:Kalon masjidi
・住所:Kalyan Mosque, Po-i-Kalyan, Khodja Nurobobod St, Bukhara, Bukhara Region, Uzbekistan
・地図:
・営業時間:9:00~18:00
・定休日:-
手作業から生まれる色鮮やかな“青”が魅力のウズベキスタンの伝統陶器
ブハラを散策しているときに訪れた一つ、伝統的な陶器工房。
そこではウズベキスタンの伝統的な陶芸技法を見学することができました。
ブハラの町の一角にある陶器工房
合計10日間ほどかけて作られる陶器の作り方を教えていただきました。
粘土はまず、大きな板状に成形されます。その後、1回目の焼成が終わると、釉薬を施して2回目の焼成が行われます。そして、焼き上がった陶器は、形に合わせて細かく断ち切られ、最後に仕上げの色付けが施され完成となります。
すべて手作業で行われるため、ひとつとして同じものはなく、色合いにわずかな違いが出るのも魅力のひとつです。
ウズベキスタンを象徴する青が美しい
色鮮やかな青色のタイルは、大阪・関西万博のウズベキスタンパビリオンにある、土産売り場の装飾の一部として使われています。
陶器の青さが引き立つ、お土産売り場となるようだ
ウズベキスタンの職人たちがひとつひとつ心を込めて作り上げた陶器は、これから日本で披露され、世界中の人々の目に触れることになります。
大阪・関西万博に訪れた際は、ぜひパビリオンの細部まで目を向けてみてください。
文化の交差点「ウズベキスタン」が育んだユニークな文化
シルクロードとは、都市から都市へとキャラバン(隊商)が移動し、荷物を引き継ぎながら運ぶ形で中継貿易が行われていた、広大な交易ルートです。
その中継地のひとつとして重要な役割を担っていたのが、ここウズベキスタン。
ライススープのマスタバはトマトベースのスープに肉や野菜が豊富に入っており日本人の口にもよく合う
ヨーロッパ、ロシア、中国、中東など、異なる文化・宗教・食習慣が少しずつ混じり合い、まさに「文化の交差点」としての独自性が育まれてきました。シルクロードが活躍した紀元前2世紀頃から、ウズベキスタンでは自由な交流が実現し、多様な文化や商業が交わる場所だったのです。
プロフは、ラム肉や牛肉、野菜、米を炊き込んだスパイシーな料理
多様性を尊重する文化が根づくウズベキスタンでは、若者の増加にともない経済発展が著しく進んでいます。そんな成長の勢いに触れると、未来への期待がますます膨らみました。
ヒヴァの町中では伝統的なダンスや歌を観光客に披露していた
文化が融合したウズベキスタンは見どころが非常に多い国です。歴史的な遺産や美しい建築物、そして伝統文化が随所に息づいており、訪れる人々を魅了しています。
旅の続きを、大阪・関西万博で
今回は時間の都合で、サマルカンドやシャフリサーブスといった世界遺産には訪れられませんでした。でもその分、大阪・関西万博のウズベキスタンパビリオンで、その魅力の一端に再び触れることができるのがとても楽しみです。
大阪・関西万博の開催期間は、2025年4月13日〜10月13日まで。
大阪・関西万博の「ウズベキスタン・パビリオン」の詳細はこちら
建築や伝統文化、再生可能エネルギーなど、未来に向けたウズベキスタンの取り組みにも出会える展示がたくさん用意されているそうなので、訪れる価値は大いにあるはず。
ウズベキスタンの文化や歴史に少しでも興味が湧いた方は、ぜひ万博会場でその空気を感じてみてください。
きっと、あなたもいつかこの国を訪れてみたくなるはずです。
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All photos by Yuichi Yokota