ライター

高橋歩さんの「BELIEVE YOUR トリハダ」という言葉に影響を受け、自身も人の心を動かせる仕事をしたいと決心。サックスとジャズへの愛が止められず、メンフィスとニューオーリンズを訪れたことから旅に目覚める。好きなものはお酒といちご。

バルセロナといったらサグラダファミリア、ローマといったらトレビの泉、パリといったらエッフェル塔。ではオーストリアの「ウィーン」から想像するものは……?

 

アート?(小声)

 

自慢ではありませんが現在24歳のわたくし阿部サキソフォンは、「アート」というものにあまり興味がありません。なんだか絵とか建築って、難しそうじゃないですか?美術館に行っても、いつもスタスタ~っと作品を通り過ぎてしまいます。

そんな理由から、なかなか重い腰が上がらなかった私ですが「どうやらウィーンではほとんど国外にでないメチャうまワインがあるらしい」という噂を耳にしました。こ、これは行くしかない!ということで早速ウィーン行きの航空券をゲット。

完全にワインが目的になっていますが、せっかくウィーンを訪れるのなら120%満喫したい。アートの「ア」の字も知らない私でもそんなことが可能なのか、実際に行って検証してみました!

コンテンツ盛りだくさんの「美術館」

「アート=難しい」という先入観にどっぷり浸かっている私ですが、実際に行って見てみないことには分かりません。ということで、まず「レオポルド美術館」にやってきました。

どうやらこちらは、画家「エゴン・シーレ」のコレクションを所蔵している世界最大のコレクション。この左にいる、やや流し目気味の男性がエゴン・シーレです。ちょっとジェームス・ディーンに似てない?(分からない人はお母さんに聞いてね)

こちらは、美術館創設者のご子息ディートハルト・レオポルドさん。なんと日本に住んでいたことがあるそうで、大学でドイツ語を教えていたのだとか。

エゴン・シーレは肖像画家として名を馳せた「グスタフ・クリムト」の影響を受け、女性像において精神状態を描写する傾向があったようです。クリムト先輩も、また多くの有名作品があるので、それは後ほど。

▲シーレ自身の自画像。なんだかちょっと、心配です。

左には、最初に見た流し目風シーレの「ほおずきの実のある自画像」。そして右にいるのが多くの作品のモデルを務め、公私にわたるパートナーであった「ヴァリ」。てっきり奥さん…かと思いきや、実は彼女とは結婚しなかったそうです。シーレが結婚相手に選んだのは中流階級の娘。

え、なんでなんで。ヴァリとラブラブだったはずなのに、なんで違う人と結婚?同じ女としては納得がいきません。芸術のことはさっぱり分かりませんが、このエゴン・シーレという画家についての興味は湧いてきました。

ちなみにシーレの左側、ヴァリの右側に描かれている植物は繋がるように描かれているとのこと。

▲2017年に映画化されています。気になる人はぜひ。

そして結婚した奥さんとは子どもを授かったそうですが、奥さんは妊娠している間に病気で亡くなったそう。シーレもその3日後に命を落としました。自分と奥さん、そしてまだ見ぬ子どもの3人を描いた作品も残しています。そちらは後ほど。

カラフルで一見ポップなこちらは、シーレが慕っていたクリムト先輩の作品「死と生」。生を表現している右は目を閉じて夢を見ていますが、左の死神は目を開けています。「生」には丸い模様がたくさん描かれていて、十字架など四角い模様の死神とはやはり対照的。

なんとなく分かるような、難しいような…。

少し重たい作品が続いて「うっ……やっぱり初心者の私にはキツイか」と思い始めていたら、気になる作品を発見。コロマン・モーザーによる「ラブポーション」という作品です。

この男女、杯の水(?)を飲むと死ぬと思っているそうですが、実は飲むとますます恋に落ちてしまうそう!なにそれ可愛いな!なるほど、だから「Love Potion=愛の薬」なんですね。なんだよ〜ただの素敵エピソードにしか聞こえない。

そして私が思わず日本語で「やべえ」と言ってしまった作品がこちら。オスカー・ココシュカが描いたものですが、なにが「やべえ」って、この左にいる赤い女性らしきもの。これ、惚れた女に似せた人形なんだもん。しかも、その人形と一緒に旅をしていたらしい。

いや、これは「やべえ」って言っちゃうでしょ。

また美術館からは、こんな景色も見られます!エゴン・シーレも、クリムトもココシュカもこの地で100年ほど前に生きてたんだなぁって思ったら、なんだか芸術を知らない私でもちょっと鼻高になれた気がしました。

■詳細情報
・名称:Leopold Museum
・住所:Museumsplatz 1, 1070 Wien
・アクセス:地下鉄U3,U2 > Volkstheater / U2 Museumsquartier下車、市電 1, 2, D > Dr. Karl-Renner-Ring
・営業時間:10時〜18時、(木曜日: 10時〜21時)
・休館日:毎週火曜日
・電話番号:+43 1 525.70-0
・料金:フルチケット € 13.00
・公式サイトURL:http://www.leopoldmuseum.org/de/sprachen/ja

難しいと思っていた絵画に思わず感情移入

こちらの「ウィーン応用美術博物館(MAK)」は、若いアーティストたちの勉強の場として造られたそうです。ふむふむ、過去の作品を見てアーティストの卵たちが勉強するわけね。

ウィーンにいるはずなのに、なぜか日本語が書かれています。謎の安心感。

▲1500年代のレース。これが500年前のデザインなんて…!

▲1600年代の細かい模様が施されたガラス

▲1800年代の椅子。今見ても超おしゃれです。ついでに展示の仕方もおしゃれ。

こちらはさっき、レオポルド美術館でちょっと怖い死神を描いていたグスタフ・クリムトの作品「抱擁」。さっきよりピカピカした感じになりました。男性の腕に包まれて力が抜けているような、うっとりしているような女性の表情が素敵。

ああ、わかるわ〜。どんなに強い女でもね、好きな男の前では溶けてふにゃふにゃになっちゃうものなのよねえ。私もその広い肩に腕をまわしたい。あわよくば足がちょっと浮いちゃうくらい、ぎゅっと抱きしめてほしい。

 

あれ、なんの話でしたっけ。難しい展示ばかりかと思っていましたが、気づいたら妄想するくらい楽しめてました。アーティストの卵よ、たくさん恋愛したまえ。うちの社長も、人を成長させるのは「旅」と「恋」って言ってたし。

■詳細情報
・名称:オーストリア応用美術博物館MAK
・住所:Stubenring 5 , 1010 Wien
・アクセス:地下鉄U3, 市電 2  > Stubentor下車
・営業時間:(火)10:00〜22:00、(水)-(日)10:00〜18:00
・休館日:毎週月曜日
・電話番号:+43 1 711 36 0
・料金:€ 9.90
・公式サイトURL:http://www.mak.at/

ウィーンは街散策するのにぴったりサイズ

実はウィーンの歴史的な市街地は、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。細い路地に入ると、こんな景色も。

▲お花とマッチして可愛い。

▲同性同士が手を繋いだ信号も。

食料品の市場「ナッシュマルクト」では、たくさんの野菜や調味料などが売られています。私はここで美味しそうなイチゴの誘惑に負けそうになりました。(1人で食べきれる量じゃなかったため断念)

▲食事もできます。

移動には、公共交通機関(バス、トラム、地下鉄)が乗り放題になる「ウィーンシティカード」がおすすめ。美術館やレストラン、アクティビティが割引になる特典もついています。

もちろんグルメも充実。私はサクサクのシュニッツェルをいただきました。一見重たそうに見えますが、衣も程よく薄く、レモンをかけてあっさりした味わいです。

ワインは夜のお楽しみ…ということで、次へ。

「美しい眺め」を意味する宮殿が豪華絢爛すぎる

やっぱりヨーロッパに来たら宮殿でしょ!ってことで「ベルヴェデーレ宮殿」へ。すごい、映画で見るような景色が広がっている…。なんだこの庭は。この敷地だけで家が何軒も建つぞ。早速中に入ってみます。

中から見た景色も圧倒される美しさ。何が美しいかって、このシンメトリー!左右対称!ウィーンの街並みを贅沢に眺めることができます。

▲何が書いてあるかは1ミリもわかりません。

この宮殿は、オイゲン候が夏の離宮として造らせたもの。いや、豪華すぎだろ。ちなみにベルヴェデーレは、イタリア語で「美しい眺め」を意味するそうです。

▲あら、素敵なお尻。

これ、誰の作品かもうお気づきですか?これも先ほどから話している「クリムト」の作品。さっきの「抱擁」も素敵でしたが、なんだかロマンチック度が増しています!作品のタイトルは「接吻」(キスっていうより、なんだか照れますね)。

下に描かれている緑の部分が彼女の足元で途切れていますが、これはキスで…あ、いや接吻によって無意識になり、足元に気づいていない様子を表現している、とも考えられているそう。

確かにね、好きな人とキ…接吻したら、頭の中真っ白になっちゃうからね。見てよ、この女性の全てを委ねたような表情。好き好きオーラがダダ漏れ。そして男性側は直線的、女性側は曲線的に描かれているためか、男性らしさや女性らしさをより感じる気がします。

▲夏休みには風景画を書いていたんだとか。

あら、また見覚えのある画風が。最初のレオポルド美術館で見ていたエゴン・シーレの作品がここにも展示されています。シーレと奥さん、そして生まれるはずだった子どもを描いた作品。幸せな家庭を築くはずだったのに、それが叶わなかったと思うと物悲しそうに見えてきます。

なんだろう、クリムトの作品はキュンキュンするのに、シーレは重い…。でも「これが現実」感もある…。はあ、辛い。

▲ちゃっかりパネルの前で撮ってもらいました。接吻〜〜〜!(IKKOさん風に)

▲今にも喋り出しそう。

今までだったら適当にまわって絵画もサラ〜っと見るだけでしたが、作品やアーティストについて少し知るだけで、こんなに楽しめるとは。今まで世界の美術館でどれだけ損をしていたのか、ようやく気づきました。もったいなさすぎる…。

■詳細情報
・名称:ベルヴェデーレ上宮
・住所:Prinz-Eugen-Straße 27, 1030 Wien
・アクセス:市電 D > Schloss Belvedere
・営業時間:(月)〜(金)9:00〜17:00(休日除く)
・電話番号:+43 1 795 57-0
・料金:€ 15
・公式サイトURL:http://www.belvedere.at/

インスタ映えもばっちりなスイーツ◎

なんとこの日のウィーンは30度超え!ウィーン自体はコンパクトなので街歩きに適していますが、この暑さの中だと少し歩いただけで汗が止まらない…ということで、冷たいジェラートをいただいちゃいます。

訪れたのはウィーンで1、2を争う人気だという「Eissalon Schwedenplatz」。駅を出てすぐ近くに見えるジェラート屋さんで、お店の前は人だかりがたくさんできていました!

私はピスタチオ、木苺、マンゴーをオーダー。食べてみると、何これ…超なめらかな舌触り…。日本で食べるジェラートと全然違う!美味しい〜〜〜!って言ってばくばく食べていたら、いつの間にか完食してました。このジェラート、インスタ映えも間違いなし。

■詳細情報
・名称:Eissalon Schwedenplatz
・住所:Franz-Josefs-Kai 17, 1010 Wien
・アクセス:地下鉄U1,U4 > Schwedenplatz 下車、市電 1,2 > Schwedenplatz
・電話番号:+43 (0) 1 53 31 996
・公式サイトURL:http://www.gelato.at/

思わず…したくなる超イケてる「建築」

さて、しばらく歩いて見えてきたのが、どーんと構えるこの建物。博物館?役所?いえいえ、なんとこれ「郵便貯金局」なんです。おったまげ〜〜〜〜〜!(平野ノラ風)

郵便局といえば、赤と白の素朴なイメージしかないのに…。こんな郵便局ずるいじゃん、格好良すぎじゃん。思わず口座作りたくなっちゃう。

このイケイケ郵便局を設計したのは、オットー・ワーグナー(上に名前が書いてありますね)。こんなかっこいい建物が100年前にデザインされたなんて、オットーさんイケすぎです。イケオジ。

ちょっと待って…。

 

こんなの郵便局じゃない。

 

私の知ってる郵便局じゃない。自然の光が入って中が照らされています。くうう〜何よこの素敵空間。

▲灯りさえも洒落てる。

▲こんなキラキラな床の郵便局がかつてあっただろうか、いやない(反語)。

▲郵便局にBOSEの音響設備が必要かどうかはさておき、良い。

「建築」って設計がどうとか、ナントカ様式だとか難しいものだと思ってましたが、それらを抜きにしても純粋に楽しめるようです。だってこんなかっこいい建物が100年前にデザインされたって、それだけで鳥肌モノだもん。

すごくない?今見ても斬新でイケてるなんて、オットーさんさすがっす。

■詳細情報
・名称:郵便貯金局
・住所:Georg-Coch-Platz 2, 1010 Wien

私が全力でおすすめするウィーンの「ホイリゲ」

はい、いよいよワインの時間です。このために私ははるばるウィーンまでやってきましたんでした。むしろ本来の目的を忘れかけていました。

実はウィーンの都市地域の半分は、公園や庭園、森、農地などの緑地だそう。そして、ブドウ栽培とワイン醸造が市内で行われている世界で唯一の都市だといいます。660ヘクタールものブドウ畑を持つ独立したワイン特産地域なんだとか!

▲市内にブドウ畑があるなんて不思議。

1年未満のワインの新酒、そしてワイン居酒屋を共通して「ホイリゲ」と呼ぶそう。ノイシュティフトに位置するホイリゲ「Fuhrgassl-Huber」では、屋外テラスでワインを楽しむことができます。

▲中には樽がずらり。

▲早く飲みたい…じゅるり。

きましたあああああ…!ワインより先に料理がきましたあああああ…!!!えげつない量の揚げ物たちです。全部茶色いので、何が揚げられているのか食べてからのお楽しみ。

これでもか、という量の肉。こんなに肉肉しいプレートを初めて見ました。そして、念願の……

 

ワインきたあああああああああああああ!!!!!

 

 

嬉しすぎて満面の笑み。

 

私がいただいたのは「ゲミシュターサッツ」というワイン。醸造責任者であるベルンハルトさんによると、1つの畑に数種類のブドウを育てて収穫しているそうです。

ちょっとピリッと辛口ですがすっきりとした味わいで、肉にはぴったりすぎる。これは、ワインも肉も進んじゃいます。どうしよう、手が止まらない。

 

もぐもぐ、ごくごく、もぐもぐ、ごくごく…。千と千尋のお父さんとお母さん状態です。

 

…と1人で夢中になっていると、何やら音楽が聞こえてきました。なんだなんだ?

 

めっちゃ愉快な人きた。

 

 

しかも2人。

 

楽しそうだなあ…美味しいワイン飲んで、生演奏聞いて、なんだか気分が良くなってきたなぁ…。

 

ということで。

混ざっちゃいました。

ブドウジュースを手に、完全に調子に乗っています。ちなみにウィーンで作られるのは主に白ワイン。輸出はあまり積極的にしていないそうで、地元の人が楽しむことを一番の目的としているそうです。

▲可愛いバラも咲いてました。

ここでしか飲めないワイン、茶色い大量の揚げ物(食べるまで何か分からないだけで、料理自体はとっても美味しいです)、そして愉快すぎる生演奏。これだけで、またウィーンに戻ってきたい理由になりました。

■詳細情報
・名称:Fuhrgassl-Huber
・住所:Neustift am Walde 68, 1190 Wien
・アクセス:バス 35A > Neustift am Walde 下車
・公式サイトURL:http://www.fuhrgassl-huber.at/

アートを知らない24歳女子でも楽しめるウィーン

あれ?私なんのためにウィーンに来たんでしたっけ?アートとか難しそう、堅苦しそう…と思ってずっと避けていたウィーン。むしろ今までなぜ行こうとしなかったのか、過去の自分を恨みたくなるくらい、充実した旅でした。さて、ここで24歳女子がウィーンを楽しんだポイントをおさらいです。

1、難しいと思っていた美術館も、アーティストを知ることで楽しさが増した
2、作品の背景や人物の気持ちを考えて…妄想まで膨らんだ
3、ウィーンは観光するのにちょうどいいサイズだった
4、今見てもかっこいい建物をデザインした建築家におったまげた
5、現地でしか飲めないウィーンのワインは格別すぎた

 

逆に、これを押さえていけば(何の逆?)私みたいな初心者でもウィーンを120%満喫することができます。

そして、来年の2018年はグスタフ・クリムト、エゴン・シーレ、オットー・ワーグナー、そしてコロマン・モーザが没後100年を迎える年。特別イベントや展覧会が予定されています。ウィーンって「アートの街でしょ?私にはちょっと難しそう…」なんて遠ざけていた方も、一歩新たな旅に出てみませんか?

https://www.wien.info/ja
http://www.austria.info/jp
Instagram: viennatouristboard

All photos by Abe saxophone

ライター

高橋歩さんの「BELIEVE YOUR トリハダ」という言葉に影響を受け、自身も人の心を動かせる仕事をしたいと決心。サックスとジャズへの愛が止められず、メンフィスとニューオーリンズを訪れたことから旅に目覚める。好きなものはお酒といちご。

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