『サハラに死す――上温湯隆の一生』
世界最大の砂漠・サハラ。この広大な砂漠へ、1972年に1人の日本人の青年が、前人未踏の単独横断の挑戦をする。共に挑戦する愛すべき相棒のラクダは「サーハビー」。アラビア語で「わが友よ」とういう意味。ただ、冒険の途中に砂漠の真ん中で、彼は亡くなってしまう。彼が日々書いていた日記が発見されて、それを元に出版をされた本がこの『サハラに死す』。20代の青年が何に葛藤し、何を求めたのか。単なる冒険記でない、彼の内面を描いた胸が熱くなる珠玉の1冊。
作品のおすすめポイント
これは“危険な本”だと思う。おすすめと言いながら、みんなに薦めるわけにはいかない。
なぜならば、この本を読んだらサハラ砂漠に行きたくなってしまうから。冒険をしたくなってしまうから。挑戦をしたくなってしまうから…。それほどに、主人公の上温湯くんの純粋な気持ちが心に突き刺さる。
時代は1970年代のことなので、今とはもちろん違う。彼の挑戦は無謀と言われたし、今ならばSNSで叩かれてしまうかもしれない。でも言いたいことはそんなことじゃない。彼は日本を良くしようとした。彼は世界を良くしようとした。彼は自分を成長させようとした。
そして、彼は冒険をした。最後に彼が挑戦の途中の文章を引用して終わりたい。
「ー考えるだけで恐ろしい。しかし、それが貴様の魅力だ。だからこそ俺は貴様の虜になった、敵愾心に燃えた心に、ふと恐怖の黒い雲が現れても、俺はそれを乗り越えて、この足は地平線の彼方へ一歩ずつ近づく。
『冒険とは可能性への信仰である』
こうつぶやき、俺は、汝を征服する、必ず貴様を征服する。それが貴様に対する、 俺の全存在を賭けた愛と友情だ。きらめく星は流れ、やさしき風が流れ、素晴らしき青春も流れ去る。流れ去るものは美しい、 だから、俺も流れよう」