動植物との共生を目指す、奄美大島・西表島
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、島の成り立ちを反映した独自の生物進化を背景とした生物多様性を理由として、2021年7月に世界自然遺産に登録されました。
現存種の中で、最も絶滅の恐れが高いとされている「イリオモテヤマネコ」や、奄美大島でしか見ることができない鳥「オオトラツグミ」など、多数の絶滅危惧種が生息する貴重な場所です。
島々を囲む美しい海と豊かな生態系を守る森に入り、生き物との出会いを楽しみました。
希少な動物たちと出会える、金作原
綺麗な葉を広げるシダ植物「ヒカゲヘゴ」
亜熱帯の植物と固有種の生物が残る「金作原(きんさくばる)」は、奄美大島を象徴する森のひとつ。金作原を訪れる際には、自然環境保護のため、奄美群島エコツーリズム推進協議会が認定したガイドの同行が必須です。
保護色をまとっている生き物を見つけるのは至難の業ですが、ベテランガイドさんが鳥やイモリなど、次々と珍しい生き物を発見して、紹介してくれました。
中でも県の天然記念物にも指定されている「アマミイシカワガエル」は、滅多に遭遇できないそう。緑色の地に金茶の斑紋が浮かび「日本一美しい」と称されるカエルです。
ブナ科で大きなドングリの実をつける「オキナワウラジロガシ」の木は、「板根(ばんこん)」と呼ばれる根の形が特徴です。熱帯雨林では多雨により土壌が流出し、根を深く張れないため、幹を安定させるためにこのように板状に根を広げるのだそう。
気軽に参加しやすい往復約2km未満の行程ながら、奄美大島ならではの多様な動植物に出会うことができました。
・名称:奄美ツアーズ(金作原原生林散策&トレッキングツアー)
・住所:鹿児島県奄美市名瀬大字朝戸
・営業時間:8:00〜18:00
・開催期間:通年
・電話番号:050-5434-3472
・公式サイトURL:https://amami-tour.com/plan/trekking002
歌い継がれる島唄を学ぶ、三味線体験
自然だけでなく文化にも触れるべく、奄美地方で古くから親しまれている「奄美三味線」を直接地元の方に教わる体験教室に参加。奄美の三味線は沖縄のものに比べ、細い弦で高音が出ることが特徴で、細い竹のバチを弾いて演奏します。
まずは聞き馴染みのある童謡「チューリップ」で、練習開始。普段全く楽器を弾かないので真剣な表情になっていますが(笑)、音や指使いが書かれた紙を見ながら、先生と一緒にゆっくり弾くことができるので、みなさんは安心してください。
練習を重ねた後は、奄美の島唄「金かぶ節」も教えていただきました。大切に歌われてきた民謡を生演奏で聴くことができる贅沢な体験でした。先生の演奏と歌声はこちらから聞くことができます。
休憩時間には、庭で採れたグアバを使ったフレッシュジュースやサーターアンダギー(揚げ菓子)などのおやつも振る舞っていただきました。
先生は故郷の文化をより多くの人に伝えるべく、英語ガイドも始めたそう。地元の方の想いに触れる温かい時間を過ごすことができました。
・名称:あまみシマ博覧会(三味線体験)
・住所:奄美市名瀬平松町194
・地図:
・営業時間:9:00〜17:00
・開催期間:通年
・電話番号:0997-58-4888
・公式サイトURL:https://booking.amami-shimahaku.com/provider/activity_plan?sourcePage=plalist&planId=4
■問い合わせ先
・名称:あまみシマ博覧会事務局(一般社団法人奄美群島観光物産協会内)
住所:奄美市名瀬港町15-1 紬会館7階
電話:0997-58-4888(平日9:00~17:00 土日祝休み)
メール:shimahaku@gntamami.jp
西表島の果て「イダの浜」で、シュノーケル
続いて向かった先は、島の90%がジャングルに覆われ、東洋のガラパゴスとも呼ばれる「西表島」。周囲は約130kmで、沖縄県内では本島についで2番目の大きさにも関わらず、人口はわずか2,300人ほどの自然豊かな場所です。
そんな西表島の西部エリア道路の終点となる白浜地区のさらに先に、船でしか行けない船浮地区に絶景ビーチ「イダの浜」があります。
白い砂浜と透明な海をプライベート気分でのんびりと味わいました。シュノーケリングをすると、カラフルな熱帯魚とのんびり泳ぐウミガメにも出会えました。(3月下旬の海開きから10月頃まで水着で泳ぐことができます)
西表島では、自然環境と共生し、持続可能な観光を提案する、日本初のエコツーリズムリゾート「星野リゾート 西表島ホテル」に滞在。
今回参加した「イダの浜で遊ぼう!」をはじめ、「イリオモテヤマネコ痕跡ツアー」「ジャングルナイトウォーク」など、自然を満喫したり、生き物や環境について学んだりできるアクティビティがたくさん用意されています。宿泊者が無料で参加できる「世界遺産の学校」もおすすめです。
・名称:星野リゾート 西表島ホテル(イダの浜で遊ぼう!)
・住所:沖縄県八重山郡竹富町上原2-2
・地図:
・開催期間:通年
・電話番号:050-3134-8094(星野リゾート予約センター)
・公式サイトURL:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/iriomote/activities/13197/
水牛車で由布島観光。その後、西表島でカヤックに乗って、日本最大のマングローブ林へ
西表島から水牛車に乗って渡ることができる、周囲約2kmほどの小さな島「由布島(ゆぶじま)」。浅瀬の海を水牛がゆっくりと歩いて、我々を運んでくれました。
由布島には、水牛車を引く水牛たちが休憩をする「水牛の池」や、多種多様な蝶や植物と出会える「蝶々園」、マングローブ林を散歩できる「マングローブ遊歩道」などがあり、多くの観光客で賑わっていました。
由布島を後にして西表島に戻り、次に向かったのは、日本最大のマングローブ林を有する沖縄県最大の川「浦内川」。ここではカヌーからマングローブ林を眺めることができます。
多くの植物は海水では育つことができませんが、海水と淡水が混ざり合う場所に生育するマングローブは、海水を根で吸い上げる際に塩分をある程度こすことができます。こしきれなかった塩分は一部の葉に貯め、落ち葉にして捨ててしまうのだそう。
厳しい環境でも、力強く根を張るマングローブの植物に自然のパワーを感じました。
・名称:西表島 ADVENTURE PiPi(由布島観光&マングローブSUP/カヌー)
・住所:沖縄県八重山郡竹富町上原870-60
・地図:
・営業時間:8:00~21:00
・開催期間:通年
・電話番号:0980-85-7240
・公式サイトURL:https://iriomote-pipi.com/archives/tour/1080
マイラ川で生き物観察。秘境の滝つぼ&鍾乳洞探検
最終日は、島に移住されて7年、西表島野鳥研究会の調査員でもある生物に詳しい認定ガイドさんと共に、マイラ川を訪れました。
5種類のマングローブ植物が群生するマイラ川をカヌーで進む中、絶滅危惧種のタカ「サシバ」、国の特別天然記念物である「カンムリワシ」など珍しい鳥を発見することができました。
※西表島には日本で唯一7種類のマングローブ植物が自生しています。
そしてカヌーを降り、約20分ほどのトレッキングを経て、たどり着いた先は秘境感溢れる滝つぼ!木漏れ日が差し込み、キラキラと光る水面の美しさに目を奪われてしまいます。
なんとここで、ガイドさんがその場で八重山そばを作ってくれました!運動をした後、自然の中で食べる出来立てのそばは感動の美味しさでした。
手作りのラフテー(豚の角煮)と出汁が絶品です!
お昼休憩後は、3つの鍾乳洞が連なる洞窟へ。サンゴや貝などが海底に堆積してできた石灰岩が地殻変動によって隆起し、このような鍾乳洞が生まれたそう。
手付かずの状態で残っているため、ヘルメットを被り、ヘッドライトをつけて、奥に進んでいきます。
すると、そこには息を飲むような美しい場所が。数千年かけて形作られた自然の光景に心を動かされました。
・名称:西表島コモレビトリップ(マイラ川・マングローブカヌー&鍾乳洞探検1日ツアー)
・住所:沖縄県八重山郡竹富町字南風見仲29-74
・地図:
・営業時間:9:00~21:00
・開催期間:通年
・電話番号:070-3801-8950
・公式サイトURL:https://www.komorebi-iriomote.com/tour-menu/kayak-cave/
世界自然遺産を巡る冒険の旅へ
こうして、世界自然遺産5エリアを巡った前後編・2記事の旅が幕を閉じました。
年を重ねる度に、やったことのある体験や見慣れた風景がどんどんと増えていき、日常で新鮮さや好奇心を感じることが少なくなってきました。
でも、今回の世界自然遺産の旅では、壮大な自然や伝統的な文化、温かい現地のガイドさんたちに出会い、知的好奇心をくすぐられる新たな発見が毎日ありました。
この後編の記事で体験したことだと、約5時間のトレッキングの末に対面した縄文杉や、カヤックに乗ってたどり着いたマングローブと秘境の滝つぼ、暗闇の中を探索して見学した鍾乳洞……。もちろん前編の記事でもたくさんの出会いや発見がありました。
世界自然遺産は私に、大人になってからも「冒険」ができることを教えてくれたと思います。この記事が、皆さんの冒険の1歩にも繋がることを願っています。ぜひ、気になるエリアへ足を運ばれてみてください。
photos by Ryo Sugano (屋久島・奄美大島)
Taka (西表島)