ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは、トラベルライターの土庄です。とうとう12月に入り、冬も本番を迎えますね!私にとっては、この12月~3月が1年で一番エキサイティングなシーズンなので、早くもいろいろなところへ行く計画を立てています。

photo by Yuhei Tonosyou

その理由は、私が愛する山というフィールドが、一番美しい姿に変わるから。一面白銀の雪原、思わず見惚れる雄大な雪稜、青空に咲く霧氷の花など、ひとたび雪山へ足を踏み入れれば、心揺さぶられる圧倒的な世界に出会うことができます。

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今回は、そんな魅力あふれる雪山登山を一人でも多くの方に体験してほしいという思いから筆を執りました。しっかり対策をし、装備を整えれば、決してハードルは高くないので、ぜひ一度挑戦してみてください!きっとそこには、一度見たら目に焼き付いて離れない、至極の絶景が待っています。

雪山登山を始めた理由は「お金がないから」

photo by Yuhei Tonosyou

私の雪山歴は約4年、学生最後の年から登りはじめ、これまで65座以上の雪山を登頂してきました。若者で雪山登山が趣味って、かなり異色というか、変わり者と言われることも多いのですが、実はその動機はとても単純なものでした。

それは「お金がなかったから」。学生最後の年、時間はたくさんあるのに、貯金は底をついていました。お金をかけることなく、あふれんばかりの好奇心を思いっきり解放できることはないか?そう試行錯誤した結果、見出した一つの解が「雪山登山」だったのです。

photo by Yuhei Tonosyou
初めて雪山登山を行った京都・大文字山の記憶は今でも鮮明です。周囲が雪に包まれると、普段の登山道とはガラリと雰囲気を変え、どこまでも美しく、非日常の世界。

火床(展望台)から眺めた京都市街の雪景色や、雪粉舞い散る山頂部、まだ誰も歩いていない道を開拓していく高揚感。雪山登山にハマるには、十分な魅力が詰まっていました。

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これを機に、京都周辺の雪山を攻め続け、社会人になった今でも熱は冷めやらず、その魅力に憑りつかれています。

雪山登山をするなら装備は入念に、選定する山にも注意

photo by Yuhei Tonosyou
雪山と言われると、ハードルが高く感じられるかもしれません。確かに、無雪期に比べて求められる準備や体力のレベルは上がります。

しかしながら、近年はワークマンなど高性能なウェアを低価格で購入することができ、登る山や時期を考えれば危険な目に遭う可能性も極めて低く抑えられ、雪山登山を楽しむことが可能です。ポイントを以下に列挙してみましょう!

雪山登山のおすすめ装備

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雪山登山において、まず必須となってくるのが装備です。本格的な雪山に登らないかぎりハイスペックのウェアやグローブはなくても大丈夫ですが、雪山ならではの装備「厳冬期用のトレッキングシューズ」と「アイゼン」が必要になります。

また体力の消耗も激しいので、ストックを持参するのもおすすめ!選ぶものにもよりますが、全部揃えると3万円~10万円ほどです。

・防水ウェア上下(おすすめ:ワークマン)
・完全防水グローブ(おすすめ:テムレス黒)
・完全防水のトレッキングシューズ※厳冬期用
・6本爪~8本爪アイゼン

※今回は初心者向けの内容なので、ピッケルや12本爪アイゼンなど本格装備については言及しません。

登る雪山の選び方

photo by Say Yamaguchi
雪山の難易度は、歩行距離と積雪量によって左右されます。初心者の方は、ここのハードルをいかに下げて、山を選定できるかがポイントです。重視したい点は以下の通り。

・人気の山を選ぶ→距離が手頃で、道が明瞭。
・土日を選ぶ→登山客が多く、トレース(雪の上を進んだ足跡)が多い。
・リフトやロープウェイを使ってアクセスできる観光地の山

これらは、いずれも道迷いのリスク・歩行の負荷低減につながります。
なお山の選定にあたっては、可能なら一度登ったことがある山がベター!

また登る際には、あらかじめSNSや山のコミュニティサイト(ヤマケイオンラインやYAMAPなど)で、積雪情報をチェックしておくことをおすすめします。

おすすめポイントも!初心者に登ってほしい日本の雪山7選

それでは次に、私が登ってきたなかで初心者にチャレンジしてほしい雪山を厳選してご紹介します。難易度別にしているので、まずは簡単なところから登ってみてください!

【三重県】霧氷の世界に触れたいなら!まずおすすめの「御在所岳」(入門)

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まず手軽に雪山の世界に触れたいなら、断然おすすめしたいのが三重県の「御在所岳(ございしょだけ、標高1,212メートル)」。登山道もありますが、麓にある湯の山温泉から御在所ロープウェイが運行しており、登山装備がなくても雪山の世界を味わえます。

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その醍醐味は、山公園駅一帯を彩る冬の風物詩「霧氷」。空気中の水分が急激に冷やされ、枯木に付着する現象で、「冬に咲く桜」とも呼ばれています。

青空とのコントラストが爽快で、御在所岳の北側に続く鈴鹿の山並みとのコラボレーションは、まるで絵画のような風景です。

【長崎県】島原半島で出会う景観!霧氷と火山のコラボ「雲仙普賢岳」(初級)

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次に紹介したいのは、どっしりとした山容が特徴的な、長崎県の最高峰「雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ、標高1,486メートル)」。車とロープウェイを使って山頂近くまでアクセスでき、積雪量も適度なので、雪山入門にもってこいの名山です。

ポイントは荒涼とした火山地形に加わる「霧氷」。雲仙では、”花ぼうろ”の名称で親しまれています。

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急激に冷えた日の翌日に訪れれば、荒々しい山肌へ一気に霧氷原が広がります。そして遥か眼下には海。

圧巻の標高差と、異質な世界の共存。これこそ海から一気に立ち上がる、独立峰「雲仙普賢岳」が作り出す冬の大パノラマです。

【大阪府】関西ハイカーの雪山入門!霧氷咲く「金剛山」(初級)

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関西の雪山入門と知られている「金剛山(こんごうさん、標高1,125メートル)」。大阪市街からもっとも近く、非常に登りやすいことから、冬でも連日多くの人が足を運びます。

雪山登山を趣味とする方の中には、この山が雪山にハマるきっかけという方も多くいます。今回紹介している7つの山の中で、まず最初の足がかりにするには一番オススメの山です。

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そんな金剛山の特徴は、手軽に「霧氷」が見られること。気象条件が厳しい山に行かないと中々見られない冬山の風物詩ですが、金剛山では軽アイゼンを持参すれば、誰でも手軽に見に行くことができます。雪山なのにハイキング感覚で行けるのが嬉しいところ。

メジャーなのは階段ルートの千早本道ですが、氷瀑(=凍った滝)が見られるツツジ尾谷ルートも人気です。

【岐阜県】霧氷の森の物語!飛騨が誇る雪の名峰「猪臥山」(初級〜中級)

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無雪期にはそれほど有名でないものの、厳冬期になると一躍脚光を浴びるのが、飛騨高山の「猪臥山(いぶしやま、標高1,519メートル)」。歩行距離が短く、危険箇所もない。しかしながら、圧倒的な雪山の絶景に出会えるのが魅力です。

特筆すべきは、形成される霧氷の多さと、稜線で見られる大展望!

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8合目付近には、青空と霧氷が織りなす冬の天井。まさに自分が冒険の物語の主人公となったような感覚を味わえます。そして稜線へと出れば、美しい冬桜の先に、白銀の峰々。御嶽山や乗鞍岳、北アルプス主脈など、日本屈指の高山群がひしめきます。

往復3〜4時間という手軽なコースながら、ここまで感動的な雪山の風景に出会える山を他に知りません。

【滋賀県】関西随一の雪稜!琵琶湖の絶景広がる「武奈ヶ岳」(初級〜中級)

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続いて5つ目に紹介したいのは、京都と滋賀の県境、比良山地の主峰「武奈ヶ岳(ぶながたけ、標高1,214メートル)。この山から本格的な雪山へと変わっていくため、悪天候を避けた計画と、万全な装備が必須になります。

武奈ヶ岳の冬のルートは、国道367号(鯖街道)沿いの坊村から。雪の量が多い場合、登山者が少ない平日には撤退を余儀なくされることがあります。初心者の方は、必ず土日を選びましょう。

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しかしながら、その苦労を乗り越えて、小ピーク・御殿山へたどり着いた先には、関西随一と呼ばれる雪の稜線が続きます。

片側には滋賀と福井の県境を形成する峰々、もう片側には琵琶湖の大パノラマ。雪山ハイカーの心を魅了してやまない”天空の雪稜”と呼ばれる絶景です。

【愛媛県】西日本最高峰の雪景色へ!天空の「石鎚山」(中級)

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西日本に標高2,000メートルを超える山はなく、最高峰となっているのは愛媛県の「石鎚山(いしづちさん、標高1,982メートル)。登山愛好家であれば、一度は登頂したいと憧れる山の一つです。

冬のシーズンとなると、難易度は上がるものの、この山でしか体験できない、冒険心くすぐる登山が味わえます。この山に登る場合、事前情報のチェックは必須です。

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ロープウェイからはしばらく樹林帯歩き、そして中腹の夜泣峠へたどり着けば、舞い散る雪粉の先に、石鎚山の頂上・天狗岳を望みます。まさに、圧倒的な自然と対峙していく、冬山ならではの高揚感です。

そして体力勝負で、石鎚神社 頂上社へ到着すれば、そこはもう雲の上。霊峰に相応しい圧巻の大パノラマが広がります。

【福井県】心震わす白銀の頂!大野富士「荒島岳」(中級)

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最後に紹介したいのは、越前の名峰「荒島岳(あらしまだけ、標高1,523メートル)」。福井県の山はあまり有名ではありませんが、実は雪山においては名峰ばかり。

とりわけ、高い木々が生育しなくなる森林限界(=この地方では標高1,500メートル周辺)の山が多いため、基本的に山頂の景色が開けているのが特徴です。

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中でも荒島岳のパノラマは群を抜いています。中腹のシャクナゲ平以降は、尾根に取り付く険しい道。山頂へ至るラストの”もちが壁”付近では、圧倒的な雪の稜線が続きます。

そして登りきったその先には、岐阜県との県境を形成する美しい雪の山並みが展開!アイゼンも8本爪以上が必須で、場合によってはピッケルも必要な厳しい山。しかしながら登頂すれば、感動必至の名峰です。

果てしなき絶景を求めて!私はこれからも雪山へ通い続ける

photo by Yuhei Tonosyou

今回は私の愛する雪山登山の魅力を語り、おすすめの山を紹介してきました。山登りをしたことがない方にとって、ややハードルが高い「雪山」。しかしながら、かつての私がそうであったように、一度味わえば、もう登らずにはいられない魅力が溢れています。

青空に輝く霧氷や、太陽の光に照らされる雪粉。まだ誰も歩いていない雪道に足跡をつけていく瞬間や、厳しい気候環境のなか自然と対峙する感覚。写真だけではわからない、雪山というフィールドでしか味わえない旅があります。

ぜひ簡単な山から挑戦してみてはいかがでしょうか?

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土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。トラベルライターとして寄稿した記事は2,000記事以上。 山岳雑誌『山と渓谷』掲載多数、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリ。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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