ライター

栃木県出身、2002年生まれの大学生。高校時代にアフリカの多様な文化を知ったことがきっかけで、大学でザンビアに留学。夏休みにはアフリカ7ヵ国をバックパッカーとして旅をしたりと本格的に旅にハマり始めたところ。旅で得た知識や発見をTABIPPO CARAVAN編集部で発信中。

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ザンビアってこんな国

ザンビアは南部アフリカに位置する内陸国で豊かな自然環境と温かい国民性が魅力的な国。

世界自然遺産に登録されている「ヴィクトリアの滝」の壮大さと迫力は圧巻で世界中から観光客が訪れている。


ヴィクトリアの滝(1月撮影)
またザンビアには70を超える民族が存在しており、それぞれが独自の文化と言語を保持ながら共存している多様性を象徴するような国でもある。

首都ルサカは非常に発展した都市としてザンビア経済をリードしている。一方で「ザンビアンタイム」などと言われるゆっくりと流れる時間が流れており、これに慣れてくると余裕を持った穏かな生活を送ることができる。

ザンビア人の多くの人が日本に対して好意的な印象を持っており、日本人に対しても親切で紳士的な対応見せてくれる。

文化的な違いなどから、ザンビアは日本人にとって刺激的な国だと思うが、ザンビアの人が見せてくれる親切心によってどこか親近感を抱かせてくれる国であるとも僕は思っている。

ザンビアの首都ルサカの幹線道路

クオンボカ祭りとは

「クオンボカ祭り(Kuonboka ceremony)」とはザンビアの西部に住むロジ族によって行われる伝統的な儀式でザンビアを代表する文化行事の1つである。

毎年3月から4月にかけて雨季が終わり、バロツェ平原が氾濫する時期に実施されている。「クオンボカ」とは「水から上がる」という意味があり、ロジ族の王リトゥンガが低地から高地の宮殿に移動することを意味している。この移動がクオンボカセレモニーの中心的な儀式である。

このセレモニーに先立って、ロジ族の人々も氾濫を起こす低地から高地へと移動する。クオンボカ祭りはロジ族の人々の生活と深く結びつくものとして200年以上の歴史を持つ。しかし近年はコロナの影響や気候変動によって平原の氾濫が十分に起こらなかったことを理由にセレモニーの開催が度々見送られていた。

2024年の今年は2年ぶりに、王の移動の儀式が取り行われた。


クオンボカ祭り舞台、バロツェ氾濫原

旅の準備

ザンビアでの留学中、どうしても訪れたい行事があった。

それがクオンボカ祭り(Kuonboka ceremony) である。

毎年雨季と乾季の変わり目に合わせて1年に1回行われる行事でありザンビアの人であれば誰でも知っているほど有名なお祭りである。

水上に巨大な船を浮かばせて移動するユニークなお祭りがあると聞いてぜひ行ってみたいと思っていたのだが、調べてみても観光に関する情報は多くない。

首都ルサカからバスで10時間もかかるモング(Mongu)という街がクオンボカ祭りの会場ということもあって、気軽に行けるようなところではないのかもしれないと思ったがどうしても諦めきれない。

情報を漁って今年(2024年)の開催が決定したことを知った。もうこのタイミングでザンビアにいることは二度とないかもしれないという思いも重なり、出発の準備を急いだ。

Airhubで泊まらせてもらえる家を見つけバスに飛び乗った。

いざモングヘ

クオンボカ祭りは1週間ほどの期間を通して行われる。

できる限り長く滞在したいが大学での用事もあり移動も含めて2泊3日の弾丸旅となった。

ザンビアの西部へ移動することおよそ10時間。クオンボカ祭りの会場、モングに到着。小さな個人商店が並ぶ繁華街のそばに近代的なモールが置かれている。

到着してすぐ、街の様子が首都ルサカとは違うことに気づいた。

赤い帽子をかぶっている男性でや色鮮やかなワンピースやドレスを身に纏っている女性が歩いている。

街全体で静かに高まる高揚感に乗せられ僕の気持ちも高まってきた。

そんな調子で宿泊先のお家に向かおうとしたのだが道に迷ってしまい、ホストファミリーのお母さんに助けを求めて連絡すると車で迎えにきてくれた。


道に迷って行き着いたお店の前で
「本当にどこに行ってしまったのかと頑張って探したわ」と一言。

到着して早々本当に助かった。

お家に到着して驚いた。1階の平屋建ての広々としたお家で庭に出てみると植物栽培や魚の養殖池まである。そんな立派なお家の一角のお部屋をお借りした。

忘れられない時間

王(リトゥンガ)が移動するクオンボカ祭りのメイン行事が行われるその日。

僕は、王が移動してくるハーバー(岸辺)へ先に行き、王がやってくるのを待とうと考えていた。

仕度を整え、まさに出発しようとしていたその時、ホストファミリーのお母さんが息子も行くから一緒に行ったらどうかと提案してくれた。

それならぜひということで息子さんを待って一緒に家を出た。

途中息子さんのパートナーも合流し、いざお祭りが行われるハーバーへ。

なんと船に乗って祭りに参加できるらしい。

木製のボートにエンジンを取り付けた簡易的な船に乗り込む。


乗り込むことになる船
10メートルほどの長さのボートに老若男女50人ほどが押し合いへし合い乗っているという具合。


船に乗り込んで
人々の手によって氾濫原に縦横無尽に作られた水路を伝いながら進んでいくと王(リトゥンガ)が乗っている船がこちらに近づいてきた。


白と黒のラインが特徴的な王の乗る船
すぐに水路の端に船を寄せると小さなボートの上で人々が腰を低くし手を叩く。船が目の前に近づいてくると人々は甲高い声を出して王を讃えていた。

王が乗った船が目の前を通り過ぎると、王が乗っている船を追う形で王妃を乗せた船,王族の子供達を乗せているであろう船が続き,その後には見物客乗せた無数の小型舟が後をつけながら進んいく。船の行進そのものである。

我々を乗せた船もその一団となって進んでいった。

船の中はそれ自体がコミュニティのようだった。

何やら仲間意識が芽生え始める。

ダンスを見てくれ!と踊っている彼をみんなで盛り上げたり、隣を進む船を抜かすと歓声をあげたり,ご飯をシェアしてもらって一緒に食べたり。


愉快なダンス好きのお兄さん
途中儀式のために王を乗せた船は一時停止し、その後本日の目的地であるハーバーまで進んでいった。


氾濫原の陸地に上がっている時の子供達
目的地のハーバーには岸を取り囲むように人々が集まり、水辺には数えきれないほどの小型船が互いに衝突しながらもゆっくりと前に進んでいく。


船の密集具合は半端ではない
決して大きくはない簡素な街のどこからこれほどの人々が集まって来たのだろうかと思うほどだった。


岸辺に集まる人々
こうしてハーバーに到着すると船から降り、家に戻った。

最初から最後まで支えてくれた家族にお別れを告げ、翌日にはまた10時間かけて首都のルサカに戻る。

あっという間の、けれどあの日あの瞬間に戻りたいなと思い出す。

忘れられない旅だった。

All photos by Moto Kitano

ライター

栃木県出身、2002年生まれの大学生。高校時代にアフリカの多様な文化を知ったことがきっかけで、大学でザンビアに留学。夏休みにはアフリカ7ヵ国をバックパッカーとして旅をしたりと本格的に旅にハマり始めたところ。旅で得た知識や発見をTABIPPO CARAVAN編集部で発信中。

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