わたしは2025年夏、アイルランドの首都・ダブリンに渡航しました。現地で走るさまざまなバスとの出会い、そしてバスが出会わせてくれた風景や体験が、この地での思い出を彩ってくれました。
「移動手段」として利用していたバスが、異国での思い出のひとつとしてこんなに大きな存在になるなんて思っていなかったのです。この記事では、ダブリン市内を走るバスと、わたしが参加した2つのバスツアーについて綴っていきます。
市内循環バスと、バスツアー
アイルランド・ダブリンのバス
アイルランドでわたしが一番心躍り、毎日利用したのがダブリンバス。最初は乗るのにも一苦労。バス停で待っているだけでは停まってくれなかったのです。
ダブリンでは数多くのバスが連なるように運行しており、行き先もそれぞれ。同じバス停にいくつものバスが停まるので、乗りたい人は、バスが近づくと手を挙げます。乗らない人が居ても必ず停まってくれるというこれまでのわたしのバスへの認識は、到着初日から覆されたのでした。
バスが近づくと運転手に見えるように手を挙げて、気づいた運転手が停車するためにウインカーを出すこの何秒間。話す言語が異なる異国でも、意思疎通ができるんだというちょっとした自信や嬉しさを感じたのを覚えています。
ダブリンのくもり空とバス
わたしが利用していた路線は、時刻表通りには来ないことがほとんどでした。時刻表より早くバスが到着しても時間まで待つということはないそうで、5分以上遅れることも普通。バス停にそれぞれQRコードがあり、読み込むとどのバスがあと何分で来るかわかったので、それは助かりました。
それからWi-Fiも使えて、USB給電も各席にあり、旅行客の強い味方。運賃を払うための「リープカード」は、ダブリン空港内の売店で購入可能なので、到着後すぐに買っておくと良いかもしれません。専用のアプリでオンラインでのチャージも可能です。
そして忘れてはいけないのが2階建てであるということ。2階に乗ってしまえば、もう1階には乗れないなと思うほど、見晴らしがとっても良いのです。
日本よりもスケールの広い緑の景色、川沿いの街並み、さまざまな国から訪れた人が思い思いに歩いている様子、曇りがちな空、それらを見ながら過ごすバスでの時間は毎日飽きることなく、とても楽しいものでした。2階の一番前の席に座れたときは、それだけで本当に気分が上がりますよ。
2階席から見える街並み
バスだけでこんなに感動できるのか!……と欲張りなわたしは、アイルランドでもっとバスに乗りたくなり、バスツアーに参加することに。ここからはその2つをご紹介します。
都会を離れて森林浴ができる半日バスツアー
ダブリン発のバスツアーもたくさん充実していました。ひとつ検索すると、あれよあれよと候補が出てきます。どれがいいかなと迷いましたが、午後出発、計5時間のバスツアーで、美しい自然を見ることができるツアーをチョイス。
バスの車窓から見えた景色
13時半にダブリンの中心地に集合。1時間半かけてウィックロウ山脈国立公園へ。2時間近くの自由時間を楽しんだあと、ダブリンに戻ってくるコースです。午前中や夕飯の時間はダブリンでの時間を楽しみ、間で森林浴ができるという素敵な1日を叶えてくれます。なんて観光客想いのコース!
バスに乗車する前からツアーは始まっている模様。申し込んだ際にQRコードが送られてきたので、これを提示して受付なのだなと思っていたら、まったく使いませんでした。運転手さんはクル一ひと組ずつと顔を合わせ、名前を確認し、一言二言挨拶代わりの会話をします。
わたしは英語学習中の身なので、すべてを聞き取れなかったのがもどかしかったです。日本から来たと言うと桜の話題を振ってくれてたのですが……
バスは先に乗った人から席を選び、1階も2階も超満員。運転手さんはガイドをしながら運転も行います。時に選曲とジョークを掛け合わせて笑わせてくれたり、大人な話題がお子さんクルーにウケたところを逃さず突っ込んで、さらに車内を盛り上げたり。
賑やかな車内の一方、ダブリンの都会を抜けた先に、窓の外から見える緑の風景。木々の葉たちが道路側にせり出しています。放牧されている羊、馬、牛たちも。広大な土地との対比でとても小さく見えました。
バスがウィックロウ山脈国立公園に到着し、2時間ほどの自由時間。この時間内に目指すは、ロウアー・レイクとアッパー・レイク。
ハイキングコースを歩き、歴史ある教会群を抜けた先にあるふたつの湖が目の前に広がります。さてどこを写真に納めましょうか、と悩んでしまうほどのスケールと美しさです。
ロウアー・レイク
深呼吸したくなる景色
湖で遊ぶ子どもたちもいれば、近くの木々の下でアイスを食べながらくつろぐ人たちも。ゆっくりと流れる時間を楽しむ人たちの姿を目にすることができたのも、わたしにとって大きなお土産です。
てくてく2時間ほど歩いて写真を撮って、ほどよい疲労感を感じながら、バスが待つ駐車場へ。8月半ばでしたが、気温は20度前後。暑さで体力を持っていかれる、ということがないのでとてもありがたいです。
バスが動き出し、ダブリンの最初の集合場所へ戻ります。バスを降りるクルーを一組ずつお見送りをしてくれる運転手さん。たった数時間ですが、都会から離れて森林浴を楽しめるバスツアーでした。
ケーキを食べながら観光が叶う、夢のようなバスツアー
ある日ダブリンの中心地を歩いていたら、出会ってしまったのです。黄色と水色のとても可愛いバスに。アフタヌーンティーと観光を掛け合わせているらしいこのバス、乗るしかない!
ひとりでヌン活というのは日本でも経験がなかったのですが、思いがけず異国でデビューを果たすことに。オンラインで予約して、いざ乗車。案内された席に着くとすでにテーブルには、ケーキスタンドがわたしのことを待っていてくれました。
車内はお花たちで可愛らしくデコレーションされており、気分をさらに高めてくれます。出発前にドリンクのオーダーを。バスが描かれた素敵なカップで、カプチーノやブレックファストティーをいただきました。
クライスト・チャーチ大聖堂やギネス・ストアハウスなど、ダブリンの主要観光スポットにさしかかると、ガイドさんがそのスポットにまつわるエピソードを話してくれます。
広大なフェニックスパークも、端から端までゆっくりと走行してくれます。いつまでも続いていきそうな緑あふれる公園を実際に歩くのも良いですが、こうしてバスでゆったり満喫できるのも、なんとも贅沢な時間。
1日数回予約できる時間帯があり、わたしは11時半の回に参加しました。スイーツだけでなくサンドイッチなどもあったので、お昼ごはんと兼ねることができて、とてもいい時間帯の参加だったなと思います。
途中で提供されたレーズン入りのスコーンがまた美味しくて。あったかくて、生地がみちっと詰まっており、すでに少しとろけたバターを塗って食べるのもまた至福。
1時間ほどのバスツアーはあっという間。でもスイーツを食べきれなかったらどうしよう、という心配はご無用。お持ち帰り用のボックスも提供してくれます。
旅の最初に参加して、バスから見た気になるスポットを改めて回るもよし、思い出の総まとめとして旅の最後にバスツアーに参加するもよしですね。
おわりに
市内観光で楽しむバス時間も、少し遠出をして自然を楽しむツアーも、街中をスイーツと共に巡るツアーも、満足度が高いものでした。渡航前はまったくバスツアーに参加する予定はありませんでしたが、思いきって参加してよかったなと思います。
アイルランド・ダブリンでのバスアクティビティは、とてもおすすめです。気になった方はぜひ、旅の思い出のひとつとして2階席で街並みや自然を味わってみてはいかがでしょうか。
All photos by Natsumi Nakamoto