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RORO ライター × 星空案内人

動画編集/ライター/星空準案内人/フリーランス。香川生まれ、三浦半島在住。大学卒業後、PEACE BOATで初海外、世界一周の旅に出る。帰国後、次は日本を知るために、北から南まで約2年半旅をしながら働く生活を送る。訪れた国は29カ国、国内は45県を制覇。「ソトコト」のオンラインメディアで連載記事執筆の他、イベントレポート執筆・編集も行いながら、星空案内人(準案内人)としても活動中。

近年注目を集めている世界遺産。一度は耳にしたことがある方も多いと思いますが、世界遺産の登録数は現在いくつあるか知っていますか?

2016年7月現在では1052件(文化遺産814件、自然遺産203件、複合遺産35件)の世界遺産が記載されており、このうち日本の世界遺産は20件(文化遺産16件、自然遺産4件)です。

 

数多くの世界遺産が存在し、NPO法人・世界遺産アカデミーが主催する「世界遺産検定」という資格も世界遺産の認知度を高めています。今後ますます注目を浴びるであろう世界遺産ですが、世界遺産の楽しみ方や今後ブレイクしそうな国など、「世界遺産アカデミー認定講師」の片岡英夫さんに話を伺ってみました。

 

片岡英夫 プロフィール

千葉県山武市出身。「旅行地理検定試験」の初代・海外地理名誉博士の認定を受ける。世界遺産検定の最高峰「世界遺産マイスター」に、2008年冬に第一期生で合格。現在、2つの検定の最高峰を手にしている日本で唯一の人物。現在は世界遺産アカデミー認定講師も務めており、世界遺産アカデミーの派遣により、全国各地の大学・専門学校で講演を行い、カリスマ講師として人気を博している。日本テレビ系列「笑ってコラえて」、テレビ朝日系列「アタック25」などのテレビやラジオ番組に多数出演。他にインターネットや新聞でも多数取り上げられる。また、地元の「道の駅 オライはすぬま」の観光大使に任命され、地域経済活性化に参画している

 

世界遺産に興味を持ったきっかけを教えてください

世界遺産に興味があったから世界遺産の勉強を始めたというわけではないんですよ。幼少の頃から世界に興味があって、小学校高学年から一段と興味の熱が入って以来、その後切れることなく専門的に研究する人生を送っているんです。

具体的にお話しすれば、3歳の時に時刻表からその興味の扉は開かれました。時刻表を眺めて地名と漢字を覚え、そこから世界地図に発展していって4歳の頃には世界の国・首都・国旗を自由に操れるようになっていました。

 

他の学科は全然ダメだったのですが、地歴だけはすごく得意で、地理だけに特化した試験の類がないかなぁ、ってずっと焦がれていた時に出会ったのが地理検定試験でした。地理検定試験は国内と海外の2つの部門に分かれ、それぞれ1級〜4級まであり、1級の1番、つまり日本一になりますと、試験を主催する地理検定協会から地理博士という認定をいただけるんですが、私は受検開始数年後に地理博士になって、そこから5期連続日本一を獲得しました。

5期連続1位になった時に初代の海外地理名誉博士の認定を受けました。現在も地理検定試験はライフワークにしていて、前回の試験も日本一をキープし、通算18回日本一になっています。地理名誉博士になった後、新しい何かを模索していていた時に、ちょうど世界遺産検定が産声をあげました。次はこれだ!ということで、世界遺産検定に挑戦し始めたんです。

 

世界遺産マイスターを取得

世界遺産を受験した全国6千人〜1万人くらいの中から、最初にマイスターになったのが全国の中の29名で、そのうちの一名となりました。今は200人以上のマイスターがいると思うんですけれど、その中から更にやる気がある人、特に優秀な人が、世界遺産アカデミー認定講師となり、市民講座とか各種専門学校や大学に派遣されます。その関係でピースボートも87回クルーズ、93回クルーズにも水先案内人(ゲスト講師)として乗船しました。

世界遺産検定が始まったから勉強したというわけではなく、昔からずっとその道が好きだったんです。今でも毎朝4時から6時まで地理や世界遺産の勉強をしています。他人からみれば勉強かもしれないんですけど、私からすると、朝のジョギングやヨガみたいな感じで、毎朝のルーティンワークとして机上旅行を楽しんでいます。

 

小学校高学年から世界、特に国際関係に関心を強くもっていて、以来ずっと国際情勢を追っています。ですので、実は世界遺産以上に国際関係のほうが得意分野と言っても過言ではありません。世界遺産アカデミーのHP上で、私が情報提供している世界遺産最新ニュースコーナーもあります。

 

今まで訪れた世界遺産の数はどれくらいですか?

およそ350弱ですね。世界遺産は現在全部で1052件あるので、考えようによってはまだ3分の1しか行けていないことになりますよね。よく「何ヶ国くらい行ったんですか?」って聞かれるんですが、110ヶ国くらいって答えると、そんなに行ったんですねと言われることがあります。

ですが、アメリカと言っても広い国なので、全部見たわけではないですし、カナダも生活は長くしていたんですけど、全部の州行ったわけでもないんです。だから何か国周ったといっても、どれだけ見てきたかという判断とは別の意味で違うような気もします。でも世界遺産の数だと、世界のおおよその訪問程度の見当がつきますよね。今は何ヶ国行ったと言うよりも、訪問した世界遺産の数を言った方が、分かりやすいかなって思っています。

 

今まで訪れた国の中で印象に残っている国はありますか?

これもよく聞かれますが、非常に答えが難しい質問なんです。例えば、どんなにいい場所でも天気が悪いと感動が薄れてしまいますし、あまり期待していなかった場所でも、そこで会った現地の人との交流とかで楽しかったりするとそっちの方が印象が強かったりしますね。

最近でいうと、ジョージア(旧グルジア)かなぁ。特にアッパースワネッティというところが一番印象深かったですね。アッパースワネッティのウシュグリ村は文化遺産なんですが、スイスみたいな高原地帯の中にあって、まるで天国のような美しい風景が出迎えてくれます。街のあちこちに中世の石造りの塔がいくつも建っていて、背景の美しい自然とのマッチングがいいのと、まだあまり知られていないので観光客も少ないところがいいですよ。

政治が安定していれば、あと10年後くらいにはジョージアと隣国のアルメニアは、間違いなくバックパッカーや旅行者に大ブレイクすると思いますよ!

 

これからブレイクしそうだなって思う基準はあるんですか?

ありますね!これから政治が安定すればとか、交通の便が良くなってくるとか、今なら現地通貨安だとか、今だったらテロの危険性が無くなってきて治安が収まってきているとかね。例えば、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチアは90年代半ばくらいまで内戦で絶対行けない場所だったのに、今や気軽に行けるようになりましたし、逆にシリア、リビア、アフガニスタンなど、行きにくくなった、あるいは行けなくなってしまった国とかもありますし。

 

要するに、旅をする「旅の旬」やタイミングは確実に存在します。それにまだまだ世界には、一般に知られていない魅力溢れる場所が数多く眠っているので、それを先取りして見てくるのも楽しいものです。

 

海外に行って危険な目に遭ったことはありますか?

photo by pixta

ありましたよ。ブラジルのリオで強盗に遭いました。当時は今以上に危険だったので、注意してお財布やパスポートは持たず、紙幣を靴下の中に隠し入れて出掛けたのですが、雨が降っていたのでカメラと傘をカバンの中に入れて持ってたんですね。白昼、大通りを友達3人と歩いていたんですが、警戒していたにも関わらず、5人組の強盗に突然襲われました。

彼らはそのカバンの中身をお金だと思ったのでしょう。カバンの取り合い、もみ合いとなりました。今思えばたいした怪我もせず、逆によく助かったなって感じですね。どんなに気を付けていても、運悪く狙われるときは狙われる。万が一そのような状況に陥ったときは大人しく観念しなければならない、守るべきは命であると、この経験から学習しましたよ。

もう二度とあのような体験はしたくはないので、細心の注意を払っていますから、これ以後、幸運にも事件には巻き込まれていません。

またご多分に漏れず、ひどい下痢になったりとかは何度もありましたが、最近はこれまでの経験が生きてか、お陰様で下痢も全くしなくなりました。

 

料理がすごい美味しいと思った国はありますか?

photo by pixta

私は食に対する興味が特にないので、基本的にはどの国の料理も美味しく感じられます。それよりも、世界の料理の舌鼓はしていませんが、「世界遺産をもりもり食べてます!」と言っています。何を言っているのか理解してもらえないと思いますが、世界遺産を一日中回ってる時は食事とかを全くとらなくても空腹感など感じず、目や耳、肌で世界遺産を見て感じて満腹感を味わっています。

基本的に観光するときは朝にがっつり食べて、1日食べるのを忘れ、日が沈むまで世界遺産を堪能しているので、世界遺産を食べていると言ったようなものです。

通常、中華・フランス・トルコ料理が世界三大料理って言われていますが、私にとっての世界三大料理はイタリア、スペイン、和食かなぁ。他にペルー料理も美味しいですよね。ペルーは美味しいんですが、隣国のボリビアはなぜか美味しくない。この冬にもボリビアに行ったのですが、食事が合わず、4週間の滞在で7キロも落ちました(笑)。旅先でお勧めのジョージアもご飯が美味しいですよ。ジョージアは料理やワインもおすすめ。

 

魅力がある世界遺産を一つだけあげるとしたらどこですか?

今はジョージアのアッパースワネッティのウシュグリ村が一押しかな。あとはロシアのキジ島。ここがまたすごい!草原の中に銀の炎(ほむら)が燃え上がるような教会があるんですよ。実際に燃えているわけじゃなくて、燃えているように見えるだけなんですが、それが見えた時は眼から涙が自然にこぼれてくるほど感動しました。

現在の技術力を持ってしても、その教会をどのように修復してよいかも分からないほど手の込んだ傑作で、本当に神秘のベールに包まれた教会です。

 

世界遺産を見るときのポイントはありますか?

photo by pixta

世界遺産には「なった理由」があるんですね。どうして世界遺産になったのかを掴まないと、ただ世界遺産がとても綺麗だとか、すごいなってだけで終わってしまいます。世界遺産登録になった理由を理解して初めて世界遺産を見てきたということなんですよ。

もっと強い言い方をすれば、その世界遺産になった価値を知らずに訪れて帰ってきたとすると、それは世界遺産に行ったことにはなりますが、真の世界遺産の姿を見てきたということとは全く違う!ということになります。見た目で大したことのない世界遺産も、事前にその価値を知って見学すると、素晴らしいと俄然感じるものはいくつもあります。

 

例えば石見銀山は、行ったけどつまんなかったって、今や日本の「がっかり世界遺産のひとつ」とも揶揄されていますが、17世紀の電気もない時代に、コツコツと掘った銀が世界経済を回していたってことを理解して、想像力を働かせて見ると、「なるほど素晴らしい」と納得します。つまり訪れる前にその世界遺産の価値を知っておくことが非常に重要であるのです。

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RORO ライター × 星空案内人

動画編集/ライター/星空準案内人/フリーランス。香川生まれ、三浦半島在住。大学卒業後、PEACE BOATで初海外、世界一周の旅に出る。帰国後、次は日本を知るために、北から南まで約2年半旅をしながら働く生活を送る。訪れた国は29カ国、国内は45県を制覇。「ソトコト」のオンラインメディアで連載記事執筆の他、イベントレポート執筆・編集も行いながら、星空案内人(準案内人)としても活動中。

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