世界第4位の面積を持つ中国は広い。誰もが知っている中国と言えば、北京や上海がある東海岸の大都市ですよね。今や世界の経済を牽引する存在で、仕事に旅行に訪れたことにある方も多いのではないでしょうか?
一方で東海岸から5000kmほど離れた中国の最西端の地域は、どのような場所なんでしょう。今回はめったに旅行者が訪れないであろう、最西端のエリアを旅してきたのでご紹介したいと思います。
中国最西端の新疆ウィグル自治区って?
中華人民共和国の最西端は、新疆ウイグル自治区で省都はウルムチ市です。新疆ウィグル地区の面積は中国全体の6分の1を占め、各省の中で最大です。面積が大きく、中国の西端であることから、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンなど6ヵ国と隣接しています。
よって人口の多数は漢民族とウイグル族の人々ですが、国境を挟んで隣接する中央アジア諸国の、カザフ族、キルギス族、タジク族なども住んでいます。
photo by Tomoya Yamauchi
ここ新疆ウイグル自治区は、かつてテュルク系民族が多く居住していました。そのことからペルシア語で「テュルク系(トルコ系)言語を話す人々の土地」を意味する東トルキスタンと呼ばれていました。
ここでは長くなるので詳しい歴史的経緯は省略しますが、ウィグル帝国やモンゴル帝国、清朝の支配下に置かれながらもシルクロードの要所として繁栄してきました。そして1949年に中国の支配下に置かれ、その後1955年に現在の新疆ウイグル自治区となりました。
シルクロードのオアシス都市カシュガル
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省都ウルムチから夜行列車でやってきたのは、中国最西端のカシュガル。その昔、世界を結んだ交易の道シルクロード。カシュガルはシルクロード上の重要なオアシス都市として、その昔から栄えてきました。
西安から敦煌まで続くシルクロード(オアシスの道)は、敦煌でタクラマカン砂漠を挟んでコルラやクチャを経由する西域北道と、ホータンなどのタクラマカン砂漠南のオアシス都市を経由する西域南道に分かれます。そして二つの道は再びカシュガルで合流するのです。
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そしてカシュガルからシルクロードは再び三方へルートが分かれます。北方へ向かうと天山山脈を経てキルギスタン、西方へ向かうとパミール高原を経てタジキスタン、南方へ向かうとカラコルム山脈を越えてパキスタン・インドへと、シルクロードは続いていきます。
あのマルコポーロも旅の道中カシュガルを訪れています。
イスラム建築が建ち並び異国情緒が漂う 一方で再開発の波も
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新市街を歩いていた時は、他の中国の都市とあまり変わらないなあと感じていましたが、カシュガルの旧市街周辺を歩いていると、これまでの中国の雰囲気とは一味も二味も違います。
街にはイスラム建築が建ち並び、ウィグル人特有の帽子をかぶった彫が深く長い髭をした男性達や、色とりどりのスカーフを巻いたウィグル人の女性達が通りを行き交います。
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異国情緒が漂い、中国というよりも中央アジアの文化圏へ入ってきたことを強く実感できます。
カシュガルの中でも昔の佇まいを残し、保護されているのが老城と呼ばれる旧市街です。ただ街の人々に話を聞いていると、老城にも中国の再開発の波が押し寄せていて、古い建物は壊されどんどんと新しく建て替えられているそうです。
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中国政府が旧市街を取り壊して新しく作り替えていることは、悪いことばかりではないだろうとの声もありました。水道や電気設備など大幅に改善された部分もあるとのことです。
しかし、中国のウイグル自治区はチベットと同様に、中国同化政策が進められていることも事実です。政策としての漢族の大量移住により、現在ではウイグル人よりも漢族が上回るほどになっています。
ウイグル自治区とは表面上の名で、漢族による実効支配となっているそうです。
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現在でも中国政府による政府反対派の政治犯などの虐殺、強制収容などがあるのも事実。近年では小学校からウイグル語による授業や教材が廃止されています。
古くからのウイグルの伝統やウイグル語や文化が破壊されること、何よりウィグルの人々がニコニコした笑顔の裏で抑圧されているのを感じるのは心が痛みます。
旧市街や郊外でもそうですが、不自然なように至る所にある中国国旗。ウルムチもそうでしたが、他の都市に比べて警察の数が目に見えるほど多かったです。英語が少し話せるウィグルの人と方と出会い、少し政治関係の事情について話しました。
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しかし旧市街では公安のコントロールが厳しいので話さない方がいいと言われ、町のはずれの隠れ家バーまでわざわざ行って話したことをよく覚えています。そのバーは漢族のおっちゃんの経営で二人の仲は良さそうでした。
政治は政治で、人々同士のつながりは別でした。政治とは無関係の人々のつながりには少しほっとしました。
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老城でもすこし細かい通りに行ったり、老城から少し離れたまだ再開発の手の届いていない集落や村を訪れたりすると、昔ながらのウイグル人たちの生活を垣間見ることもできます。イスラム建築の住居が迷路のように入り組んだ通りに建ち並んでいます。
まるでシルクロードの拠点として栄えていた中世時代にタイムスリップしたようです。
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郊外に少し出ると、レンガで作られたウィグルの人々の伝統的な建物を見ることができます。また各家が章有する畑もあって、果物や様々な野菜が育てられています。
雨も少なくかなり乾燥した土地のように思えますが、オアシス都市だけあり、地下水などが豊富にあるそうです。
町の中心部ではそれほどでもなかったけれど、郊外に出ると人々はとてもフレンドリーでニコニコしながら話しかけてくれたり、挨拶を返してくれました。時には家の中まで案内されたり、メロンを食べていけと誘ってくれたり。
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まだ昔の状態のまま残されている地区もまだありますが、近いうちに取り壊されるかもしれないと聞きました。ぜひともウィグルの人々の伝統や文化を尊重した開発をと願います。
ラクダまで売られてる 必見のバザールと家畜市場
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カシュガルに来て楽しめるのは、独特の文化を持つウィグル族伝統の美味しいごはんでしょう。トマトベースで様々なスパイスが効いた麺”ラグマン”。羊肉が入った炊き込みご飯”ブロフ”や鶏肉や羊肉、牛肉の炭火串焼きシャシュリクなど、グルメ好きにはたまらないラインナップです。
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ウィグル自治区ではタンドーリ窯で焼いた各種ナンがとても有名です。通りの至る所にはベーカリーがあり、香ばしいナンの香りが漂っています。
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そしてカシュガルを訪れた際に欠かせないのがバザールを訪れること。ここでは多様な店が所狭しと並んでおり、毎日大変な賑わいを見せています。カシュガルに来てここを訪れないわけにはいきません。ウイグル自治区でもかなり大きな規模のバザールです。
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カシュガルの郊外では家畜市が開かれ、周辺の村から様々な動物が売買されています。バザールの近くから出るバスに乗ると、家畜市場へ向かうウィグルの人々でたくさん。
そしてたくさんのトラックなどが家畜を連れて、バザールへ向かっていきます。
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家畜市場に到着すると、牛、羊、ロバ、馬、ラクダなどが運び込まれ、ぎゅうぎゅう詰めに動物たちがつながれています。ウイグルの男性たちが交渉し、値段が決まり握手をして交渉成立です。
契約書なんか必要ないのがウィグル流です。日本では絶対に見られない光景。
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カシュガルを訪れた場合は必見です。