加賀とウェルビーイング
「この宿坊はなにもありませんが、ゆったりとした時間をお楽しみください」
生雲の山頂は本当に素晴らしかった。
早くに起きて、宿坊の周りを散歩する。そして、部屋に戻って読書をする。そして、また雲海を眺める。
冒険家が冒険の魅力として語る「圧倒的自然との対峙感」を垣間みたような気がする。そして、世界に存在しているのが今自分だけだという心地いい孤独感。
この刹那的な絶頂な気分を味わいながら、頭を少し働かせ「幸せ」について考える。久しぶりに感じる自分の時間を楽しみながらゆっくりと目を閉じた。
*
最近こんな記事を読んだ。
生活をサボるな。とインド人に叱られて二年経ってから分かったこと|はし かよこ|note
自然と経済のめぐりに感謝し「誰のために何を生産して、どんな消費をして、誰に支えてもらっているのか」ちゃんと自覚しておきたい。
「ご飯を作る、服を洗う、住まいを綺麗に保つ。すべて君が君の責任においてやることだよ。一つ一つマインドフルであること。それが大事なことなんだ。」
忙しい日々を送っていると、すぐにこの「生活」をおろそかにしてしまう。そして、すぐに自分の中の優先順位を忘れる。これは大切。これはいらないと整理することが必要なのだ。
そうじゃないと大切なことに時間をさくことさえも忘れてしまって、日々が過ぎていく。そして、いつの間にか忘れたことにも気づかずにどこかわからない場所へとふらふら歩いていってしまう。
旅をしている間は自分の時間を大切に、自分らしい生活を取り戻すことができる。そして、なによりこうして考えることができること自体に幸せを感じる。
さて、もう少し続けていく。
幸せについて学習院大学の斎藤先生は3つの視点から考えている。
・身近な幸せ
・持続的な幸せ
・永続的な幸せ
最近はSDGsもそうだけれども、「持続可能」という長期的な軸で語られることが多い。幸福も、持続可能な「ウェルビーイング」へと移行しているように。
ちなみに、ウェルビーイングはこんな定義らしい。
個人の権利が保証されて、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること。(国連解釈)
持続的幸福感のある穏やかな心の状態。(心理学)
さて、このウェルビーイング/持続的な幸せの状態になるための手段としてこんなことが書いてある。
【自分の特徴的強み×最適な挑戦課題】
この組み合わせの発見が必要であると。
ふむ、最適な挑戦課題ってなんだろう…?
これは自分の幸せの対象を考えることになると思う。たぶん、幸せは個人だけで達成することはできなくて、他者が必要になる。なので、「他者のためにできることをどれだけ自分で納得できながらやるのか?」ということに落ち着くのではないだろうか。
最適な挑戦課題が見つからない人は、幸せについて考える時間がもっと必要かもしれない。つまり、幸せにしたい他者を理解することが必要で、旅はその1つの解決手段となりえる。
日本で生まれた人は、日本人である宿命を負う。神道についても、仏教についてもあまり習っていないミレニアル世代は、日本に対するアイデンティティは上の世代よりもやや希薄かもしれない。
ただ、こんなにも素敵な文化があり、自然があり、美味しいご飯がある日本。もっと日本のことを知りたいと思えたし、日本を通じて自分らしく生きていきたいと思えた加賀の滞在だった。僕にとってはこうやって旅をして、記事にして伝えることがいい挑戦課題で、ウェルビーイングにつながっているらしい。
国内を旅しながら理解を深め、この素晴らしい場所をもっといい所にしようと感じる時期はいつだって遅くはないだろう。
自分の人生を決めるのは、言うまでもなく自分の判断であり、自分の行動である。
自分の幸せは自分でつくる。
そして、10年後にまた自分の”波乱万丈な”人生を振り返るのが良さそうだ。
この雲海を眺めながら。