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yui ライター・編集者

出版社出身のライター・編集者。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。

みなさん、こんにちは!TABIPPO編集部の西嶋です。

今回は、11月20日にTABIPPOオフィス本社で行われたPOOLOの講義 「自分らしい旅と人生の編集の仕方」の様子をレポートします。

登壇者は、株式会社ライツ社の代表取締役である大塚 啓志郎さん、ゲスト兼ファシリテーターはTABIPPOマーケティングチームのありーさんです。※ゲストプロフィール詳細は、文末に記載しております。

そもそもPOOLOって?

POOLOのことを初めて知る方も多いかと思うので、簡単に説明すると、TABIPPOが今年3月に21世紀型のグローバル人材を育成するべく200名のメンバーを募集し、新しい学びの場としてオンラインとオフラインの両軸でコミュニティを作りながら、1年間を通して21世紀型のグローバル人材に育っていくというプログラムです。

詳細については、POOLO公式サイトをご覧ください。

さて、今日はそんなPOOLOのイベントレポートをお届けしたいと思います。来年POOLOに参加してみたいなと考えている方はぜひ読んでいただけたらうれしいいです。

 

おふたりの経歴の紹介

まず、大塚さんとありーさんのご経歴の紹介から。大塚さんは、出版社、ライツ社の代表取締役でいらっしゃいます。新卒でいろは出版に入社され、26歳にして編集部長を務められました。

いろは出版で担当されたのは、先日POOLOにご登壇いただいた太田英基さんの『日本がヤバイではなく、世界がオモシロイから僕らは動く。』や、TABIPPOの『ウユニ塩湖 世界一の「奇跡」と呼ばれた絶景』『僕らの人生を変えた世界一周』などなど。

独立されたのは2016年のとき。今は地元の明石にて、年間6点ほどの本を世に送り出しています。2018年11月に出版された旅人のバイブル『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』も大塚さんがご担当です。

ありーさんは、フリーランスの編集者です。主婦と生活社でファッション誌『ar』の編集部に在籍したのち、2018年12月にフリーランスに。

パラレルワーカーとして、『LARME』『mina』などの紙媒体や、Webマガジン「SPUR.JP 」、アパレルブランドのカタログのディレクションなど、幅広く活躍されています。

TABIPPOではマーケティングチームに所属。観光局やエアラインのPR案件の企画のディレクションを担当されています。

 

大塚さんが制作した作品あれこれ

まず、大塚さんがご担当された書籍の経緯や苦労話をうかがっていきます。ファシリテーターのありーさんも現役編集者だからこそ、なかなか聞けない裏話も盛りだくさん!

写真家ヨシダナギさんのベスト作品集『HEROES』

アフリカを中心に海外に渡航し、少数民族や先住民の最も美しい姿を引き出すため、彼らと同じ格好で撮影に臨むことで有名な写真家、ヨシダナギさん。

HEROES』には、ヨシダナギさんの写真家人生すべての作品が収録されています。

実はこちらの写真集、定価は1万2千円。一般的な写真集の4~5倍のお値段です。その背景には、「安売りはしない」という大塚さんの決心があります。1回の渡航に数百万円をかけるヨシダナギさんの活動を応援するために腹をくくったそう!かっこよすぎ。

銀行から融資を受けてまで制作したので、売れなければ大赤字。非常に勇気がいる決断でしたが、書店の協力もあり、5刷8500部という、高価格書籍では異例の大ベストセラーになりました。「100年後にも残したい写真たちです」というナギさんの言葉を受け止めて作られた、想いの詰まった作品です。

本田直之さんと四角大輔さんの共著『モバイルボヘミアン』

タイトルの「モバイルボヘミアン」は、ノマドワーカーのもう一つ上の概念のこと。仕事と遊びの垣根をなくした、自分らしい生き方を指します。その概念を広く伝えたいという想いから、制作がスタートしました。

本書のユニークな点は、一度も対面の打ち合わせをせずに作られたこと。本田さんの拠点はハワイ、四角さんはニュージーランド。「一度も会わずに作れば、それがモバイルボヘミアンという生き方の証明になる」というコンセプトです。四角さんが暮らす湖畔は電波が非常に悪かったなんて苦労話も!(笑)

書籍制作期間は1年ほど。取材をし、構成を立て、原稿を起こし、原稿に肉付けして……と、オンラインでの打ち合わせを重ねて作られました。

「自分の人生を考えられる一冊なので、ぜひPOOLOのみなさんに読んでほしい!」と大塚さん。

シェフ・本山尚義さんの『全196ヵ国おうちで作れる世界のレシピ』

本書の著者である本山さんは、20代のときに世界中を旅したシェフです。バズった経験もなく、インフルエンサーでもない、いわば普通のおじさん。ですが、なんと、ご自身のレストランで世界全196か国の料理を提供していたのです。そこには、料理を通して社会問題について考えてみてほしいという想いがありました。

本書の制作費用は、クラウドファンディングで集められました。

著名人でない著者の本は、売れる保証がありません。それは出版社にとっても、本業の時間を割いて書籍制作に協力してくれる本山さんにとっても大きなリスクです。だからクラウドファンディングで「仲間をつくる」ことに決めました。その結果、425人から350万円以上の支援を受け、出版が実現したのです。

大塚さんは、「クラウドファンディングをしたいなら編集者やライターとタッグを組むべき」と言います。クラウドファンディングで重要なのは、「なぜそのプロジェクトを達成したいのか」「なぜその手段を選んだのか」「集めた費用をどう使うのか」をアピールすること。

編集者やライターにお願いして、そうした要素を引き出してもらい、文章の形にまとめてもらうのが有効なんですね。

 

課題「あなたの人生を本にするなら?」へのフィードバック

今回の講義には、事前課題が与えられていました。大塚さんによると、その意図は、「SHOWROOM代表の前田裕二さんが、出版を通して自分を整理することで、人生が変わったというようなことをおっしゃっていたんです。目次づくりを通して、みなさんにもそれを体験してほしくて」とのこと。

ちなみに、今回の課題のポイントは「具体的であること」「自分の人生を解像度高く、客観的に見ること」だそう。

それでは、みなさんの課題をみていきましょう。大塚さんに6人の作品をみてもらい、コメントをいただきました。

まず1作品目。「18禁ゲームが教えてくれたリアル」という章タイトルが気になって仕方ない……!大塚さんは、「単語が具体的で、イメージしやすい!抽象的な単語と具体的な単語を組み合わせて、『18禁ゲームが壊した私の世界』なんて章タイトルもいいかも」とコメント。

次に、2作品目。「研究職求人数0で無理ゲーな就活」「おじさんと仲良くすし詰めオフィス」なんてキャッチ―な目次が並びます。大塚さんは、「とにかく目次が具体的で、著者がその場面をしっかり覚えていることがうかがえますね」とコメント。ありーさんも、「シーンが想像できて、クスッと笑えるのがいいですね」と絶賛です!

次に、旅が軸になっている3作品目。特徴的なのは、章ごとに「開放度30%」「開放度100%」など、そのシーンにおける著者の開放度が提示されているところ。大塚さんは、「軸があって、著者が自身を開放することを意識して生きてきたのが伝わっていいですね」とのこと。

次に、4作品目。著者の恥を集めて構成されているユニークな作品です。大塚さんは、「何かを集めて本にするという考え方がすばらしい」とコメント。ご本人は、「自分の人格形成に影響した出来事を集めたらネタになるかもと思った」とのこと!まさに編集者的発想です。

次に、5作品目。「人生を背理法で解いてみる」という、なんともときめくタイトルです。背理法とは、矛盾を証明することで命題を証明する手法のことだそう。大塚さんは、「数学と人生という異質のものを掛け合わせているのがおもしろい!」とコメント。

最後に、「安定という名の波乱万丈との決別」というタイトルの作品。なんだか哲学的です。大塚さんは、「小学生から現在まで、時系列で構成されているのがすばらしい」とのこと。

 

「具体的に書くこと以外に、何かポイントはありますか?」

「目次は具体的に書くことが大切」と話してくださった大塚さん。それ以外にもポイントがあれば教えてください!

ありーさんは、「相手に、シーンを具体的にイメージさせること。かっこいい夢よりも、3秒くらいのリアルな一瞬を切り取ること」と話してくださいました。

大塚さんもありーさんに同意しつつ、「センテンスには、ある程度の長さがあるといいですね。個性を出せますし、より具体的になりますから」とのこと。

 

自分のストーリーに向き合うこと

最後に大塚さんは、「誰しも、本になる人生を歩んでいるはず。本にならないのは、表現していないから。まず書いてみよう」と、思わずドキッとするようなメッセージをくださいました。大塚さん自身、小説を書き続け、「いつか出版しよう」とワクワクしているそうです。

また、「本を書こうとすると、人生をさかのぼって自分のターニングポイントと向き合うことになる。就活のときの自己分析と同じ。自己分析は全然ワクワクしなかったけど、自分が本になると思うと楽しかったのでは?ぜひ、自分のストーリーに気付いて、向き合ってほしい」とも。大塚さん、ありがとうございました!

 

ゲストのご紹介


大塚 啓志郎さん
1986年、兵庫県明石市生まれ。3児の父。 新卒で京都の出版社に入社し、編集長を務めたあと30歳で独立。 ライツ社を創業。 「いま日本でもっとも新しい出版社」の1つとして、本づくりだけでなく、新しい出版社像をつくることに挑戦している。

学生時代に世界中をバックパッカーとして巡っていたことから、「旅」や「世界」という言葉を軸に、 紀行文・写真集・ガイドブック・ビジネス書などジャンルを越境した本づくりを行っている。 主な編集作品に『ヨシダナギBEST作品集HEROES』『毎日読みたい365日の広告コピー』『僕たちはもう帰りたい』『この世界で死ぬまでにしたいこと2000』などがある。最新刊は「リュウジ式 悪魔のレシピ」、サイボウズ式ブックス「最軽量のマネジメント」。

ありーさん(ゲスト兼ファシリテーター)

旅・ファッション・美容などのコンテンツをディレクションするフリーランス編集者/ディレクター。女性ファッション誌『ar(アール)』に在籍したのち独立。雑誌などを中心に、様々なメディアで幅広く活動中。最近は、写真集や広告なども手がけている。

Text:西嶋結
Photo:栗原秋紀子

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出版社出身のライター・編集者。これまで訪れた国は70か国ほどで、自分を驚かせてくれる街や国が好みです。

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