世界一周の旅でアフリカを訪れた時に、やりたいことのひとつであった「タンザン鉄道」に乗ること。アフリカ縦断旅などをする人たちにも人気がある鉄道だ。
タンザニアのダルエスサラームからザンビアのカピリムポシまでを結ぶ、約1,700キロの距離を2泊3日かけて移動する鉄道である。
見出し
いざ、タンザン鉄道に乗車
大幅な遅延や運休は日常茶飯事であり、訪れた時(2025年1月)は両国の直通運転は行なっておらず、タンザニア内の移動のみで利用するつもりであった。
ダルエスサラームの駅舎
「自分は比較的運を持っているから大丈夫だ!」そう思い込んでいたのも束の間、当日にそうなるだろうということが起きる。
折り返しの列車が遅延し、その日の運休が決定。早くても出発は翌日の夜以降とのことで、更に遅れる可能性はあるらしい。
そのまま街に滞在し運行再開を待つのもひとつであったが、先の予定があるため別の移動手段を選ばなければならない。
時間を最優先し飛行機を選びたいものの、直近のため運賃は高い。そこで選択したのが、ダルエスサラームからザンビアの首都ルサカまで約2,000キロのバス移動。
距離でいうと青森から鹿児島まで、下道で2日間かけて移動するイメージだ。果たして無事に辿り着けるのか。
【前半戦】深夜から始まるタンザニア横断移動
宿からバスターミナルへトゥクトゥクで移動
バスは早朝発だが予約をしていなかったため、余裕を持ち午前2時ごろに宿から郊外のバスターミナルへ。深夜のバイクタクシーはリスクがあり、1人だとタクシーも割高なので、ちょうど中間の価格であるトゥクトゥクで移動。
通常ならバスターミナルで前日に購入もしくはオンラインで予約がベターだが、事前購入した鉄道の払い戻し金を使い切るためだ。
深夜のバスターミナル
バスターミナルへ入るためにはチケットが必要であり、現金でバスへ直接支払うことを伝え、なかへ。ここから客引きをスルーしながら自分が乗るバスを探し、出発まで警戒度MAXにしながらひたすら待つ。
定刻通りにバスは出発し予定では15時間半の乗車時間。トイレ休憩は3〜4時間に1回の頻度で10分前後とる程度なので、飲食も控えめにしておいた方が無難だ。バスの出発はクラクションで知らせてくれる。
緑豊かなタンザニアの山道
道中には国立公園の横を通るので、野生動物が見られる可能性もある。また、山間部の道から見る緑の景色も退屈なバス移動を少しだけ楽しませてくれる。
途中渋滞に巻き込まれた時やバス停に停車した時には物売りが窓越しに寄ってくる。飲食物はもちろん雑貨など、売られている物は多種多様だ。
窓越しに売るため、物売りも高さを工夫する
夜になると景色も見えなくなり退屈さが増す。車内では音無しの映画やほぼ聞こえないミュージックビデオが流れるが、いかんせん飽きてくる。
そんなバス移動に耐えながら、2時間遅れの17時間半移動でタンザニアとザンビアの国境の街トゥンドゥマに到着。
【ハーフタイム】タンザニアからザンビアへ、徒歩で国境越え
国境の街で降車
バスを降りたのは午後11時前、ここからザンビアへの徒歩の国境越えが始まる。降りると間も無くして両替人たちが「ザンビア?クワチャ!(現地通貨の名前)」と寄ってくる。
暗い道端で両替するのはこちら側に不利な状況なので、近くの屋台でほぼ1日ぶりの食事をとりながら、残ったお金で交渉しながら両替。
身に染みる暖かい屋台飯
両替を終え出国したらザンビアへ無事入国したのだが、ここでも両替人に加えバスの客引きが”我こそは!”と寄ってくるため、華麗にスルーしていく。
雨で濡れた道を歩きながらバス乗り場へ。バスのチケットは車内で買うシステムのため、懐中電灯で照らしながら運賃の交渉、そして購入するなんとも斬新なやり方。
バスは明朝に出発のため車内で仮眠することに。疲労は溜まりながら2回目の長距離バスの出発を待つ。
【後半戦】疲労困憊、映画に助けられるザンビア移動
車中泊をした頃には数人だった乗客も、出発の頃にはそれなりの人数になり、夜明けを待たずに出発した。なお、タンザニアでは使えたSIMもザンビアでは使えないため、ルサカに到着するまではインターネットデトックスの状態になる。
道中の車窓からの景色に魅了されたタンザニアのバスとは一転、ザンビアでは単調な道が続く。休憩も少なくトイレは草むらで済ませるなど、国をひとつ越えるだけでだいぶ変わってくるのだ。
小さな村が点々とするザンビアの道中
そんななか、車内でひたすら上映される映画(おそらく7本ほど)がほとんど視聴したことがあるもので、究極の暇つぶしができた。
パソコンは盗難を気にして容易に使えず、あいにくスマートフォンにもダウンロードした動画や音楽も無かったため、唯一の救いである。
前方のモニターで映画が上映される
オフラインのマップでなかなか進まない現在地を見たり、映画を見るか寝るかの退屈な時間もいよいよ終わりに近づいてくる。
2回目のバスは16時間半、前日のダルエスサラームの宿を出発してからおよそ40時間が経過し目的地のルサカへ到着。
移動もまた旅の楽しみ、各々のスタイルで
1000キロ超走ったザンビアのバス
今回のルートだと国境の街で宿泊することもでき、鉄道が再開次第のんびりと進んだり、時間をお金で買い飛行機で快適に早く移動することもできたであろう。
しかし旅をしている時はその時の気分やお財布事情、スケジュールでその選択は異なってくる。
移動を乗り切った後の格別なビール
このようなハードなバス移動でも、振り返ってみると旅のネタのひとつにでもなるはずだ。
体力と時間があれば、チャレンジしてみるのもいいかもしれない。
All photos by Suzuki Ei