ライター

ローカルな街並みや文化が大好きな、兵庫県出身の25歳。ベンチャー企業の法務担当として勤務する傍ら、休日は機会を見つけて地方を旅している。熱意の応援者として、ともに刺激を受け与える関係でありたい。最近は地域の魅力を伝えるツアーづくりに取り組む。秋のフルマラソンに向けても奮闘中。

仕事に勉強に、時間に追われる日々を過ごす日々、たまにはゆったりとした時間を過ごしたい。そんなときにおすすめの旅先が、島根県西部に位置する「津和野町」だ。

「山陰の小京都」ともよばれ、まちの風土や伝統が大切に紡がれてきたこの街では、普段過ごしている街とは異なる、どこかゆったりとした時間が流れているように思う。

筆者は2023年の冬に初めて津和野町を訪れて以来、その魅力に惹かれてこれまでに3度足を運んでいる。

大きなテーマパークや商業施設があるわけではないけれど、何度でも帰ってきたくなる、不思議な街。その魅力の一端をご紹介すべく、今回、2泊3日のモデルコースを作成した。

旅の玄関口、津和野駅。photo by Nakashin

1日目:津和野の風土を学ぶ

津和野町日本遺産センター~「津和野百景図」のインプット~

お気に入りの1枚を見つけてみよう photo by 2unay101
津和野の街を訪れたらまず、「津和野町日本遺産センター」で「津和野百景図」を見てみたい。2015年、「津和野今昔~百景図を歩く~」というテーマで初の日本遺産(※)に選定され、その重要な役割を果たしたのが今回紹介する「津和野百景図」だ。

※日本遺産とは
平成27年度より文化庁より創設された新しい文化財制度で “地域に点在する史跡・伝統芸能など有形・無形の文化財をパッケージ化し、我が国の文化・伝統を語るストーリーとして「日本遺産(Japan Heritage)」に認定する仕組みを新たに創設。

歴史的魅力に溢れた文化財群を地域主体で総合的に整備・活用し、世界に戦略的に発信することにより、地域の活性化を図るものです。
文化庁「日本遺産 ポータルサイト」より引用)

幕末の津和野藩主のお仕え役・栗本里治によって描かれたこの百景図には、旧津和野藩の名所や風俗、食文化などが登場し、それに詳細な解説を加えてまとめられている。

注目すべきは、この百景図に描かれた情景の多くが今も残っており、現代を生きる私たちも見ることができるということだ。

毎年7月20日・27日に開催される古典芸能神事、鷺舞 photo by Nakashin
他にも、津和野町の弥栄神社に伝わる古典芸能神事「鷺舞」や日本で唯一の現存ともいわれる室町時代の馬場で行われる「流鏑馬神事」など、地域の主要な伝統行事について学ぶことができる。地域の歴史を学んだうえで街を巡れば、さらにまちを楽しめるはずだ。

■詳細情報
・名称:津和野町日本遺産センター
・住所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ253
・地図:
・営業時間:9:00〜17:00
・定休日:火曜日
・電話番号:0856-72-1901
・料金:無料
・公式サイトURL:こちら

殿町通り、本町通り~津和野のメインストリートをまち歩き~

殿町通り photo by Nakashin

本町通り photo by Nakashin
日本遺産センターで学びを得た後は、津和野の城下町の風情が残るメインストリート「殿町通り」「本町通り」を歩いてみよう。

「殿町通り」はかつて津和野藩の藩邸が置かれたことからその名がついたといわれ、掘割には鯉が泳いでいる。一方、「本町通り」はかつての商業区域であり、商家や酒蔵などが立ち並ぶ。

江戸や明治の時代から続く歴史ある酒造で今夜の一杯を選んだり、明治後期に造られた古民家をリノベーションしたお店で生活雑貨や工芸品を選んだり。地域の紡いできた歴史を感じながら、まち歩きを楽しみたい。

香美園上領茶舗~老舗茶舗でティータイム~

季節限定のざら茶ブレンドとカヌレのセット photo by Nakashin
まちを歩いて少し疲れてきたら、本町通りにある「上領茶房」でひと休み。津和野町では古くからお茶産業が発展しており、こちらも創業90年を超える老舗店。長年、地域で親しまれているカワラケツメイを焙煎したお茶「ざら茶」を販売されている他、2023年にオープンしたカフェスペースでは、手づくりのお菓子と一緒にティータイムを楽しむことができる。

ハーブや果物とブレンドされたざら茶も数種類提供されており、その日の気分に合わせて選べるのも魅力だ。

また、事前予約が必要だが、ざら茶や日本茶などのお茶をベースに、和洋のハーブを使った自分だけのブレンド茶を作る体験も。お茶やハーブの持つ特徴や効果も丁寧に教えていただけるため、初心者でも安心だ。

宿泊スペース photo by Nakashin
ちなみに2階は1日1組限定の完全貸切宿となっており、宿泊も可能。宿泊者には「ざら茶」もセルフサービスで提供され、心ゆくまで堪能することができる。

■詳細情報
・名称:香味園上領茶舗
・住所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ263
・地図:
・営業時間:10:00〜17:00
・定休日:不定休
・電話番号:0856-72-0266
・公式サイトURL:こちら

田舎もん~地域で愛されるまちの洋食屋さんで夕ご飯~

夕食は本町通りで気になったお店に入ってみたいが、少し足を延ばせそうなら地域の洋食屋さん「田舎もん」を訪れてみたい。手ごろな価格で楽しめるステーキが絶品のお店だが、オムライスもおすすめだ。

「田舎もん」のオムライス photo by Nakashin

■詳細情報
・名称:田舎もん
・住所:島根県鹿足郡津和野町大鳥居前
・地図:
・営業時間:日~火、金、土:11:00~13:30/17:00~19:30
木:11:00〜13:30
・定休日:水曜日
・電話番号:0856-72-0246

2日目:津和野の風土を肌で感じる

太皷谷稲成神社~願望成就を祈願~

太皷谷稲成神社 本殿 photo by Nakashin
翌朝、少し早く起きることができればぜひ、太皷谷稲成神社を訪れたい。日本五大稲荷のひとつに数えられ、願望成就の「成」を取って「稲成」と表記されているのも珍しい。

境内に向かう参拝路、千本鳥居 photo by Nakashin
境内に向かう約1,000本の鳥居のトンネルも圧巻で、その先の境内からは津和野の街を一望することができる。

■詳細情報
・名称:太皷谷稲成神社
・住所:島根県鹿足郡津和野町後田409
・地図:
・電話番号:0856-72-0219
・公式サイトURL:こちら

ちしゃの木~お塩でいただく絶品十割そば~

お塩でいただくお蕎麦は絶品 photo by Nakashin
ランチには津和野駅からすぐの場所にある農家レストラン「ちしゃの木」へ。つなぎを一切使わず、そば粉と水だけで作られた「十割そば」。ぜひ、お塩でいただくのがおすすめだ。

■詳細情報
・名称:城下町の小さな農家レストラン ちしゃの木
・住所:島根県鹿足郡津和野町後田イ140-1
・地図:
・営業時間:11:00〜16:00
・定休日:火・水
・電話番号:0856-72-1455
・公式サイトURL:こちら

津和野体験Yu-na~百景図をめぐるサイクリングツアーでタイムトリップ


サイクリングツアーを通して「津和野百景図」の世界に飛び込む photo by 2unay101
午後は少しアクティブに、サイクリングツアーに参加してみよう。「現地ガイドによるツアー」と聞くと少し身構えてしまう部分もあるが、「津和野体験Yu-na」で案内してくれるガイドは20〜30代の移住者の方。

同世代の話しやすい関係性の中、地域で暮らす彼ら、彼女らだからこそ知る地域の魅力を余すところなく教えてくれる。

サイクリングツアーで使用する電動自転車たち photo by Nakashin

複数のツアーを展開されているが、その中でもぜひおすすめしたいのが「百景図をめぐるサイクリングツアー」だ。1日目に学んだ「津和野百景図」の世界に飛び込み、その情景やストーリーを電動自転車でゆったりと巡ってゆく。

百景図に描かれた風景で立ち止まって現代の情景と対比したり、1枚1枚の絵の裏にあるストーリーの解説を聞いたりしていると、約3時間のツアーは本当にあっという間。ツアー終了後には、まるでタイムトリップしてきたかのような不思議な、そしてほんのりとあたたかな気持ちになる。

野窓~世界を旅したオーナーが営む津和野の「窓」~

素敵なラウンジ photo by Nakashin
サイクリングを終えたら、いよいよ今晩のお宿へ。津和野駅からほど近い場所にあるゲストハウス「野窓」は、世界24ヶ国を旅したオーナーが営むあたたかい空間だ。

築50年の古民家を改装した建物にはコンセプトの異なる3つの部屋があり、どの部屋になるかは当日のお楽しみ。カフェラウンジでは多くの本が用意されており、中には店主の方の旅日記も。地酒やクラフトビールを楽しみながら、リラックスして本の世界に飛び込むことができる。

やさしい味の朝食に心があたたまる photo by Nakashin
また、個人的に嬉しいのは翌朝の朝食。地域でとれた野菜や味噌、お米を使った朝食はどこかほっとした味わいで、そのおいしさに思わずため息が出てしまうほど。宿泊者以外にも提供されているが、時間や曜日によっては売り切れのこともあるため注意したい。

■詳細情報
・名称:Tsuwano GuestHouse & Cafe Lounge 野窓 Nomad
・住所:島根県鹿足郡津和野町後田イ80−13
・地図:
・電話番号:0856-73-7170
・公式サイトURL:こちら

3日目:ゆったりと流れる時間の中で、気の向くままに過ごしてみる

朝食を食べた後は、せっかくなら気の向くままに過ごす時間を取ってみよう。

この2日間で訪れた場所の中でもう一度行きたい場所に行ってみたり、少し足を延ばして津和野城跡に足を運んでみたり、「SLやまぐち号」の写真を撮ってみたり。

時間に追われる日常だからこそ、最終日は何も決めず、非日常の時間を楽しみながらゆったりと過ごしてみるのも旅の楽しみだ。

津和野城跡からの眺め photo by 2unay101
貴重な蒸気機関車がけん引する「SLやまぐち号」の撮影も楽しい photo by Nakashin
cafe&hostel TMCのルーローハン。素敵な本もたくさん置いてあり、いつの間にか時間が過ぎていく photo by Nakashin
華泉酒造の地酒「㐂津禰 (キツネ)」。かわいらしい見た目にもつい惹かれてしまう photo by Nakashin

「ゆうにしんさい」と言われた気がして

「ゆうにしんさい」これは津和野の言葉で「ゆったりしてしていってね」という言葉だそうだ(「津和野体験Yu-na」のブランド名もこの言葉が由来とのこと)。

津和野の街を訪れると、ついゆったりと過ごしてしまう。それは、もしかすると街からの「ゆうにしんさい」というメッセージなのかもしれない。

たまにはゆったりとした時間を過ごしたい、ひと休みしたい。そんなときにはぜひ、津和野町を訪れてみてはいかがだろうか。

アクセス

関東からであれば、飛行機が便利だ。羽田空港から最寄りの空港、萩・石見空港までは1日2往復のフライトがあり、所要時間は約90分。関東在住の身近な友人からも「島根は遠そう」という声を聴くことが多いが、実際のところは案外、気軽に訪れることができる。

萩・石見空港から津和野までは、乗り合いタクシーでさらに1時間で到着。ただし、乗車希望日前日の21時までの事前予約が必須。訪問時には忘れずに予約するようにしたい。

また、土日・祝日を中心に新山口駅から1往復、「SLやまぐち号」も運航している。全国的にも数を減らしつつある貴重なSL(蒸気機関車)に乗車できる貴重な機会。

ご都合が合う方はぜひ、乗ってみてほしい。(冬季など運航しない時期もあるため、最新の運行状況は必ず、JRのウェブサイトを要チェック!)

ライター

ローカルな街並みや文化が大好きな、兵庫県出身の25歳。ベンチャー企業の法務担当として勤務する傍ら、休日は機会を見つけて地方を旅している。熱意の応援者として、ともに刺激を受け与える関係でありたい。最近は地域の魅力を伝えるツアーづくりに取り組む。秋のフルマラソンに向けても奮闘中。

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