「なんか好き!」「わくわくする!」
そんな直感的な気持ちを大切にした旅をしたことはありますか?
私の旅のマイルールは、心が動いた瞬間を写真に収めること。なぜこのルールが生まれたのか、どんな風に写真と向き合っているのか。
この記事では、私なりの旅と写真の楽しみ方をお伝えしていきます。
心が動いた瞬間を残す
旅先では、自然の絶景やいわゆる観光スポットにカメラを向けることももちろんあります。でも、私がシャッターを切りたくなるのは「この感じ、なんか好き」「え、おもしろい!」と心が動く瞬間。
たとえば、線路の奥に青い海と空が続く風景、夕暮れ時の空に浮かぶ電線のシルエットや、道端にぽつんと置かれたモニュメント。そこに何か特別な意味があるわけではないけれど、なぜか心がくすぐられる風景です。
自然が織りなす美しさに惹かれることが多い私にとって、その移ろいを感じられる瞬間も、シャッターを押したくなるとき。それは「懐かしい」と感じる風景であることもあります。
初めて訪れる場所なのに、どこかで見たことがある気がする。子どもの頃に見た景色とどこか重なるような瞬間を見つけたり、見たことがなくてもなんだかほっとするような場景を見たりすると、思わず立ち止まって写真に収めてしまいます。
写真と五感のつながり
私にとって「写真を撮ること」は、単にその瞬間を記録する目的だけではありません。過去の写真を見返すだけで、そのときの空気や音、匂いまで蘇ってくる気がします。
たとえば、朝早起きをして散歩をしたときの一枚。その写真を見れば、澄んだ空気の中鳥のさえずりが聞こえる静かな場所に、一人たたずんでいる姿が思い出されます。
屋久島でトレッキングをしたときの写真なら、マイナスイオンたっぷりの清々しい空気や心地よい疲労感、一緒に歩いた人との「こんな生き物にも見えるかも?」といった何気ない会話まで聞こえてくる。
だからこそ、自然の中でシャッターを切る時間は、旅そのものをより深く味わう大切なひととき。レンズ越しに向き合うことで、普段なら気づかない小さな音や光の変化にも敏感になれる気がします。
私にとって写真を撮ることは、五感をフルに使って旅を体験する手段でもあるのかもしれません。
アートと写真の共通点
私がアートに惹かれるのも、じつは写真と同じ理由なのかもしれません。作品を前にしたときに「おもしろい」「なんで?」と心が動く感覚が、旅先でカメラを向ける瞬間ととても似ている気がします。
たとえば、一見よくわからないように見える作品でも、調べてみると作り手の経験や大切にしてきた価値観が込められていたりします。背景を知ることで作品がより立体的に見えてきて、ただ「変わってるな」と思った感覚が「なるほど、だからこういう表現なのか」と、理解が深まっていきます。
このおもしろさを知ると、あえて背景を調べずに、作者がどんな想いでこの作品を作ったのかを想像してみるのも楽しいもの。正解がないからこそ、自分なりの解釈で作品と向き合えるのも魅力のひとつです。
これは、写真を撮るときに自分の視点を通して表現している感覚と通じているように思います。
見る側は、どちらも「誰かのフィルターを通して世界を見る」体験で、正解がないからこそ自由に感じとることができる。そんな感覚を持ちながらカメラを構えると、また違った目線で旅を切り取ることができるんです。
旅の写真を通して自分を知る
旅から帰って写真を整理していると、撮影した瞬間には気づかなかったことに出会うことがあります。このときはこれに心を動かされたんだな、やっぱりこういうものが好きなんだな。そんな風に自分の好みの傾向や変化に気づかされます。
たとえば、人がほとんど写っていない静かな場所ばかり撮っていることに気づいたり、雲の形や光の当たり方など、同じような瞬間ばかり切り取っていることがわかったり。それは、日常では意識していない自分の「好き」や「心地よい」と感じる基準が、無意識に表れているのかもしれません。
写真は旅の軌跡であると同時に、自分の内面を映し出すものでもあるように思います。どんな瞬間に立ち止まりたくなるのか、どんな景色に安らぎを感じるのか。それを知ることで、次の旅ではもっと自分らしい時間を過ごせるような気がします。
おわりに
私にとって写真を撮ることは、旅をもっと深く味わう方法のひとつです。自然の中で五感を使って切り取った一枚、アートに触れて新しい視点で撮った一枚、そしてあとから見返して自分の好みに気づかされる一枚。すべてが旅そのものを豊かにしてくれます。
旅に決まった楽しみ方はありません。けれど、「心が動く瞬間」を大切にしながら過ごすことで、きっとあなたらしい特別な体験が生まれるはず。
次の旅は、ぜひカメラを片手に楽しんでみてはいかがでしょうか?
All photos by yuri