ライター

2001年、北海道生まれ。書道・茶道・よさこい等を通して日本の魅力を伝えるフリーランス日本語教師。人との出会いやその土地の歴史・美術作品に触れる時間を大切にし、世界中のまだ見ぬ景色を求めて国内外を旅しています。

時代を超えるロングラン作品『CHICAGO』

これまで数多くの賞を受賞し、古きアメリカを舞台にしたジャズミュージックとダンスが特徴の作品『CHICAGO (シカゴ)』


私の大叔父も同じ場所で数十年前に『CHICAGO』を見ていたことを知っていたため、思い切って最前列のチケットを購入した。

手を伸ばせば届く距離、長い歴史を感じさせる舞台の傷には幕が上がる前から釘付けになってしまった。何度もキャストからのファンサービスをもらい、個々の美しさと力強さにも圧倒された。


数十年の時を経て、形見のジャケットを羽織り同じ作品を観劇することができたことはこの先も永遠に忘れることのできない時間。

場所は1921年に建てられ客席数は1120人と少ないながらも非常に伝統のある「アンバサダー劇場」にて。

この作品は前述したように最新作ではないため、他と比べても比較的安価でチケットを購入することができる。ブロードウェイの伝統と歴史が詰まった作品、ぜひおすすめしたい。

■詳細情報
・名称:アンバサダー劇場 (Ambassador Theatre)
・住所:219 W 49th St, New York, NY 10019 アメリカ合衆国
・地図:

『Moulin Rouge!』で感じる燃えたぎる情熱

劇場の数だけ公演が行われているブロードウェイの舞台。

「普段舞台は見ないけれどせっかくニューヨークに来たから……」
「作品がありすぎて何を見ればいいか分からない……」

そんな方におすすめしたいのが華やかなパリを舞台とし、とあるふたりのラブストーリーを描いた作品『Moulin Rouge! (ムーラン・ルージュ!)』

一歩客席に足を踏み入れるとそこには、外からは想像のつかない別世界が広がっている。


360度どこを見渡しても豪華絢爛、美しい赤色に染まる劇場内はこれから夢が叶うのだという私の心臓の高鳴りをさらに加速させた。開演前から鳴り響く音楽と感じたことのない雰囲気に、私は手が震え胸はいっぱいになっていた。

誰もが一度は聞いたことのある現代洋楽が劇中歌となっているため、舞台初心者の方や洋楽好きな方には、とくにおすすめしたい。


フレンチカンカンで有名なダンスシーンはもちろん、ラストシーンの圧倒的な盛り上がりには舞台上だけでなく客席からも歓声が飛び交い、劇場全体が熱気に包まれる。日本では感じたことのない客席のエネルギーだった。

1921年、ニューヨークで唯一借金なしに建てられたとして有名な「アル・ヒルシュフェルト劇場」は今回訪れた中でとくにお気に入りの劇場となった。

ロビー天井に施された装飾や地下にあるお手洗いも見事なつくり。ぜひ会場時間にゆとりを持って、劇場内も散策してみてほしい。

■詳細情報
・名称:アル・ヒルシュフェルト劇場 (Al Hirschfeld Theatre)
・住所:302 W 45th St, New York, NY 10036 アメリカ合衆国
・地図:

光と影が交錯する『The Great Gatsby』

アメリカ文学の最高峰と言われている『The Great Gatsby(グレートギャツビー)』、2013年にはレオナルド・ディカプリオ主演で映画化もされた世界的な名作。


邦題「華麗なるギャツビー」が示す通り、第一次世界大戦後の華やかなアメリカを舞台に夢と欲望が華麗に、そして残酷に交錯する時代を描いている。

1991年宝塚歌劇団により世界初の舞台化がされ、個人的にも大好きな作品だったためなんとしてでもブロードウェイで見たいと考えていた。


原作小説はもちろん、映画や舞台作品に一度触れたうえで足を運ぶとより深く作品を世界観を味わえるかもしれない。

ちなみに元々映画館だったこの「ブロードウェイ劇場」は、ミッキーマウスの映画が初上映された場所としても有名。

■詳細情報
・名称:ブロードウェイ劇場(Broadway Theatre)
・住所:1681 Broadway, New York, NY 10019 アメリカ合衆国
・地図:

心が震える瞬間を求めて

コロナウイルスが世界に蔓延した数年前、芸術の世界は不要不急なものとして分類されてしまった。舞台を生業とする人間ではないが、私はとても悲しく悔しい気持ちになったことを今でも覚えている。

舞台がこの世に存在しないとしても、人は生きていけると思う。この世界には物理的に誰かを救うパワーなんてこれらにはないのかもしれない。

しかし、この世界があるからこそ輝く言葉、人、音、空間、得られる刺激があると私は信じている。


夢に見た地を訪れて、私は多くの人々が舞台のもつパワーに魅了されている姿に心の底から幸せを感じた。どこを見渡しても自分の愛する世界で溢れている、今まで生きてきた中でいちばんこころに残るお金の使い方ができた気がしている。

この先どれだけ時が経ったとしても、この日見た景色、舞台上の輝く光は永遠に忘れることができないだろう。作品の音楽を聴くと、ブロードウェイで見た光景の全てが鮮明に蘇ってくる。

いつかまたこの地を訪れることができるように、精一杯生くと強く思った日。溢れるパワーを胸に抱き、私は夢の地をあとにした。


まだ観劇をしたことがない方にはぜひ、非日常を感じることや旅先のひとつの目的として、舞台に足を運んでみて欲しい。

そしていつか、世界最高峰のエンターテインメントが息づく街、ニューヨーク・ブロードウェイであなたの心が震える瞬間に出会えたら、きっと何かが少し変わるはず。

日常では得られない舞台の上だけに存在する眩しいほどに輝く光を、この先もずっと見続けることができますように。

All photos by Tsumugi Azumaya

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2001年、北海道生まれ。書道・茶道・よさこい等を通して日本の魅力を伝えるフリーランス日本語教師。人との出会いやその土地の歴史・美術作品に触れる時間を大切にし、世界中のまだ見ぬ景色を求めて国内外を旅しています。

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