編集部

こんにちは、旅を広める会社である株式会社TABIPPOが運営をしている「旅」の総合WEBメディアです。世界一周のひとり旅を経験した旅好きなメンバーが、世界中を旅する魅力を伝えたいという想いで設立しました。旅人たちが実際に旅した体験をベースに1つずつ記事を配信して、これからの時代の多様な旅を提案します。

この記事では、TABIPPOがつくりあげた最初の旅の本、『僕らの人生を変えた世界一周』のコンテンツをTABIPPO.netをご覧の皆様にもご紹介したいと考え、本誌に掲載している世界一周体験記を厳選して連載しています。

今回の主人公は、角田直樹(当時24歳) です。

「世界一周」。それは、誰もが憧れる旅。でもその旅、夢で終わらせていいんですか?
人生最後の日のあなたが後悔するか、満足できるかどうかは今のあなたが踏み出す一歩で決まります。この特集では、そんな一歩を踏み出し、何も変わらない日常を生きることをやめて、世界中を旅することで人生が変わった15人の感動ストーリーを連載します。

 

\この記事は、書籍化もされています/

sekaiisshu_mainvisual-01

・角田直樹(当時24歳) / エンジニア 1998.5〜1998.11 / 180日間 / 15ヵ国

・世界一周の旅ルート

韓国→アメリカ→カナダ→ドイツ→チェコ →ハンガリー→オーストリア→スイス→イタリ ア→バチカン市国→スペイン→モロッコ→フラ ンス→シンガポール→マレーシア

 

私の夢は宇宙に行くことだった

私は、現在 39 歳。この地球を一周して旅したのは、もう 15 年も前のことだ。

当時、私は航空宇宙関連の研究所(現在の JAXA)で、 研究者として働いていた。北の大地に生まれ、小さい頃から北海道の大自然の中で、 無限に広がる星空を見上げることが好きだった。宇宙飛行士という夢は、いつしか宇宙に行くロケットを つくりたい!という夢に代わり、エンジニアの仕事に就いた。

夢だった仕事。

しかしそれは、「科学技術を結集した最先端のロケット開発」 といった華やかなイメージとは、ほど遠かった。パソコンに向かい、細かい英数字をプログラミングしながら、 画面の中でシミュレーションを繰り返す日々。

理想としていた未来とはほど遠かった。宇宙へのロマンを追って輝いている自分はそこにいなかった。

5年 10 年と進めてきたプロジェクトが、 たった1回のロケットの打ち上げの失敗によって 宇宙の藻屑となり、落胆している先輩方を見て、思った。

 

(今やっていることは、自分の幸せに繋がるものなのか?)

 

宇宙への夢は、世界一周という夢へ

当時は、ようやくインターネットが普及しだした頃だった。研究者として歩んでいくべきか模索している中で、「世界一周航空券」という7文字が私の目に映った。

その言葉の持つ可能性やスケールの大きさにワクワクした。宇宙への夢が、世界一周という夢に代わった瞬間だった。研究者としての地位と収入?後悔など何もなかった。

自分が世界一周に行くこと、それ自体が、まるで宇宙という無限の可能性の中を突き進む宇宙船に乗り込む船長になったような感覚だった。

 

当時、わずか10万円の航空券。(のるかそるかの人生だ。おもしろい)

 

「お兄ちゃん、無事に帰ってきてね」

東京のアパートを引き払い、北海道の実家へ。家族に挨拶をした。裕福でもない家庭環境で、東京のしかも理系の大学。学費や仕送り、大きな負担をかけながら、エンジニアになるという道を支えてくれた両親に 申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

妹が声をかけてきた。

 

「お兄ちゃん、無事に家に帰ってきてね」

 

その一言を聞いた途端、新しい世界へのワクワク感と、 未知の世界に飲み込まれる不安とが入り交じり、 気を紛らわせるために、何度も荷物を詰め直した。

旅立つ日は、桜も散ろうとする春の終わり頃だった。 わずか1時間 30 分のフライトで、金浦空港に到着。 キラキラとドアが光る地下鉄に乗り、ソウルへ向かう。

地上に出ると、ムワっとした暑い空気と、眩い日差し。 道路には韓国メーカーの車が溢れ、クラクションが鳴り響く。 露店が連なった市場のようなストリートでは、 キムチとゴマ油が混ざった香ばしい匂いが食欲をそそる。

 

(この国から、世界一周がスタートするのだ!)そう思うと、高揚感で胸が高鳴った。

 

北米の大自然、カナディアンロッキー

6164617698_ea4769aeca_b

photo by Esther Lee 

1週間のソウル滞在を楽しんだ後、太平洋を横断して、一路、北米大陸に渡った。

世界一周の魅力の一つが、二つの海を越えていく大陸横断の連続である。まったく違う大陸から大陸、国から国へ移動するたびに、どんな新しい世界が待っているのか、心が震えるほどワクワクする。

カナダのバンクーバーからバスに揺られること 12 時間、やって来たのは、大自然、カナディアンロッキー。

ジャスパーという国立公園の麓となる駅でバスを降りて、交通費節約のため、歩いて 1 時間半ほどかけて宿に向かう。新緑の香りが、ふわーと鼻の中に充満していく。

鼻歌を歌いながら木陰の光が刺す森を歩いていると、大きな角を持ったエルクという鹿が現れたり、グリズリーという熊に遭遇してヒヤッとした。

 

幻想的な「天使の氷河」

宿に着くと、これからレンタカーを借りて観光するという日本人女性とコロンビア人男性に出会い、ご一緒させてもらうことにした。偶然の出会いの中で、予定を決めて行動していくのも自由旅行のおもしろさだ。

いくつかの渓谷や美しい湖を巡ったあと、イデス・キャべルという 3,000 m級の山の断崖絶壁へ。天使が純白の羽を広げたような幻想的な氷河が 目の前に現れた。「エンジェル・グレイシャー(氷河)」だ。

北米で最大の氷原でもあるコロンビア大氷原の一部で、そのスケールに圧倒され、思わずため息がもれた。

 

挨拶は「ハロー」から「ボンジュール」に

カナダと言えば、カナディアンロッキーが見どころだが、広大な国土の中で、東西で大きく異なる文化圏を有する国ということも 注目すべき点である。

その最も大きな変化を感じたのが、カナダ最大の都市トロントから西のモントリオールへの移動。それは、英語圏からフランス語圏への移動でもあった。

ストリートひとつ挟んで、挨拶が「ハロー」から「ボンジュール」に、「サンキュー」が「メルシー」に変わった。

おもしろい。看板もフランス語になり、街並みも一気にヨーロッパ風の石畳や石造りの家、お洒落なカフェが立ち並び、エスプレッソの心地よい香りが漂う。

編集部

こんにちは、旅を広める会社である株式会社TABIPPOが運営をしている「旅」の総合WEBメディアです。世界一周のひとり旅を経験した旅好きなメンバーが、世界中を旅する魅力を伝えたいという想いで設立しました。旅人たちが実際に旅した体験をベースに1つずつ記事を配信して、これからの時代の多様な旅を提案します。

RELATED

関連記事