こんにちは!TABIPPO編集部です。

今回は写真家の相沢亮さんが香川県の離島・豊島を旅し、TABIPPOがリコメンドするサステイナブルで暮らすように地域を巡る「あたらしい旅」の形を体現した、豊島での2泊3日の様子をレポートします。

 

香川県にある瀬戸内海の離島というと、まず思い浮かぶのはオリーブで有名な小豆島や草間彌生さんのアート作品があることで有名な直島ですが、豊島はその二つの島の間に位置します。

瀬戸内芸術祭が開催されるなどアートと自然の豊かな島として知られており、小豆島や都市部から日帰り観光をされる方も多いのだとか。

 

しかしそんな豊島での旅を、相沢さんは「日帰りでなく、長く滞在したい場所だった」と振り返ります。

相沢さんが、瀬戸内海に浮かぶ離島に長期間滞在したいと思った理由はどのようなことからなのでしょうか?

サイクリングや島で暮らすローカルフレンドとの交流を通じて相沢さんが見つけた豊島の魅力を、相沢さんの文章と、あたたかくもどこか懐かしい雰囲気を纏った写真とともにお届けします。

昔ながらの魅力を活かした、あたらしい豊島を。「アートの島」だけではない豊島の魅力


今回は、2泊3日で「豊島」を旅してきた。

「豊島」がどこにあるのか知っている方は、どのくらいいるのだろうか。

香川県の瀬戸内海の離島というと、まず思い浮かぶのはフェリーに乗って行く旅先の定番である「小豆島」や「直島」だと思う。

その間に位置する「豊島」を、瀬戸内芸術祭のイメージからいわゆる「アートの島」と感じていたが、実際に訪れてみるとアートのみでなく、その島で暮らす方々の魅力や穏やかな空気感にすごく惹かれた。

特に嬉しかったのは、アミューズをはじめとする、豊島の昔ながらの魅力を活かしながら新しいことを始めようと奮闘する方々に出会えたことだった。

0から何かを始めるのでなく、昔からの魅力との共存や豊島の元々の魅力を活かした挑戦をしている姿は、強く印象に残っている。

 

離島の本来の穏やかさを体験しながらも、新しいことに挑戦する方々に触れあった旅の様子を振り返る。

「ゴミの島」から「自然豊かな島」へ。豊島のいま


瀬戸内芸術祭などいわゆる「アートの島」のイメージが強い豊島だが、実は1970年頃から外部の業者によって大量の産業廃棄物が違法に投棄され「ごみの島」と言われた過去がある。

今年やっと産業廃棄物の撤去が終わり、徐々に自然豊かな姿へと戻りつつあるという。

今回は、昔から存在する豊島の魅力を活かしつつも、新しいことに挑戦する方々に出会うことができた。外部から新しいことを始めたいと来た方々が住民のようにその島で暮らし、住民の方々との交流を通じ、共に活動している。

「新しいことを始めるため、みんなが同じ方向を向いている」
そんな姿が印象的だった。


海を見下ろす美しい田園


さまざまな農作物が採れる豊島では、地産地消の食文化が根付いている。

かつての美しいビーチを、新たなコミュニティの場所へ。静かなビーチで地元の食材をいただく

豊島は、ごみの島からアートの島になった。
そして今、昔ながらの美しい自然を活かすという次の一歩を歩み始めている。

遠くの瀬戸内海の島々の間に沈む夕日を眺めることのできるビーチ。

この場所は、かつてリゾートホテルが建設され、その後廃墟となった場所。

廃材の撤去作業がようやく最近終わったこの場所はいま、更地になり、かつての美しいビーチの姿を取り戻そうとしている。


凪の瀬戸内海は優しく暮れていく。風と波の音、五感でこの穏やかさを体感してほしい。

さらにこのビーチを豊島の憩いの場所のひとつにできないかと、新たな挑戦も始まっているそうだ。アミューズの坂口結衣(ゆいぴー)さんを中心とした、活動の中心となっている方々に話を聞いた。

「旅行者だけでなく、地元の方々とも交流できる憩いの場所になることが理想です。

旅行者が、人と環境を豊かにする豊島の本来の魅力 “自然の循環” に触れ合いながら、ビーチでのアクティビティを楽しみ、島の方々との繋がりも気軽に感じることができる場所になれば嬉しいです。

豊島ならではロケーションを活かした、特別な空間になればと思っています」

 

実際、訪れた2023年の3月には、地産地消の食材にこだわった夕食としてのバーベキューと朝食をこの場所で体験した。


四季を通した彩り豊かな食材たち。季節ごとに自然の恵みを頂き、堪能できる。

街灯はもちろん、波や風の音以外の雑音も一切ないビーチでいただく、地産地消の食材たち。豊島では綺麗な湧き水や豊かな土壌のおかげで、自給自足の文化が当然のように育まれていた。

街中の忙しない時間の流れと距離を置ける、そんな魅力が詰まっている場所だった。

この場所は将来、キャンプなどもできるように準備を進めているそうだ。雑音と距離を置き、満点の星空と過ごす夜は、素敵な体験ができることが楽しみだ。


photo by アミューズ

そして、ビーチに行く前に見える土地で新たな取り組みに出会うことができた。

豊島では、山地などの斜面を利用し果樹園や畜産、畑作を立体的に組み合わせた「立体農業」が昔から盛んだった。アミューズの方々はこの場所で、当時の自然が循環する立体農業をよみがえらそうとしている。

目指すのは、人の営みが周りの自然環境に寄り添い、暮らしと自然が共に豊かになるような空間を作ること。

五感を通して、自然の循環に触れ合える場所。

人との交流のみならず、豊島の自然の恵みに触れ合うことができる、そんな素敵な場所になりつつあると感じた。

豊島の中心に位置する壇山で立体農業について教えてくれた藤崎さん。

藤崎さんの実家では、1947年から1982年まで「豊島農民福音学校」として立体農業を日本全国から集まった生徒に教えてきた。

綺麗な湧き水があり、豊かな気候でなだらかな高低差のある豊島の土地は、循環型の立体農業を実践する上で最適な場所だった。

現在は、「豊島農民福音学校 土曜クラス」という形で豊島で採れた食材を使ったおやつ作りを中心とした交流の場となっている。

街では感じることのできない魅力。豊島の自然と空気に触れる

今回の移動手段は、レンタサイクル。少し自転車を走らせてみると、さまざまな景色や豊島だからこその魅力に触れることができる。

島特有の空気感、穏やかな気候、目の前に広がる自然。豊島に滞在した時に感じた居心地の良さは、その昔ながらの自然が残されているからこそだ。

この旅では、豊島ならではの魅力に触れることができた。出会った素敵な景色を写真で振り返る。

島中に展示されるアートたち

もちろん、アートにも数多く触れた。

豊島美術館は、休耕地となっていた広大な棚田を再生させ、その一角に建てられた施設。水滴をイメージした建物は、風や音、光を感じられる造りになっており、豊島の自然と一体化するようなアート空間になっている。


お土産コーナーには地元のいちごを使ったいちごジャムが。

また、島のあちこちには独創的で楽しい芸術作品が展示してある。


島の人や来場者たちがバスケットボールを楽しめる場所として作られた『勝者はいないーマルチバスケットボールー(イオベット&ポンズ・作)』。ゴールがたくさんあり、誰もが思い思いのルールで遊ぶことができる。


海を夢見る人たちが座り、海を眺める椅子・『海を夢見る人々の場所(ヘザー・B・スワン+ノンダ・カサリディス・作)』。オーストラリアを代表する現代美術家と建築家のユニットによる作品で、漁網のような流木のような見た目となっている。


いちご農家直営のスイーツのお店「いちご家」のパフェ

暮らすように滞在できる場所へ。長くいられる豊島を目指した宿泊施設

今回お世話になった宿は、豊島の玄関口・家浦港から徒歩5分ほどの場所にある「古宿 たかまつ屋」。

日当たり、風通しが良く、畳の温もりを感じ、どこか懐かしい空気感に包まれた日本家屋だ。


古宿たかまつ屋のご主人

ここの特徴のひとつとしてWi-Fi環境が整っていることがある。

瀬戸内海の旅でよく耳にするのは、豊島美術館に行くために小豆島や高松に宿を取り、日帰りで豊島に行くということ。宿泊をせずに日帰りで帰る方が多い理由は、気軽な滞在先がなく、また通信環境が十分に整っていないことが理由のひとつでもあると考えていた。

離島の宿の中には通信環境が整っていない場所もまだまだ存在する一方、これだけの環境があることは、気軽に仕事をしながら滞在したい方にとっても嬉しいものだと感じる。

一方、豊島の良さは、忙しない街中と距離を置き、時がゆっくり流れていくような日々を過ごせること。夜中に開いているコンビニ、電車の音などはもちろん存在しない。

そんな環境で仕事をしながらのんびりと過ごしてみたいという方にも、豊島はおすすめだ。

また、2022年には交流を目的としたスペースや宿泊施設が建てられた複合施設「豊島エスポワールパーク」がオープンするなど、豊島には続々と新しい宿泊先も生まれ始めている。

次の目標は、旅行者と島の方々が交流できるコミュニティの場としてワーケーションスペースを作ること。豊島が長期滞在できる場所として利用しやすくなる未来が楽しみだ。

豊島の旅で、ゆったりとした時間の良さを感じる

豊島で過ごした日々は、アートのみでない豊島の自然の魅力に触れ合えた旅だったと感じる。

アートのみでなく「自然」という本来の土地が持つ魅力を活かし、暮らすように旅ができる場所に移り変わろうとしている豊島。実際に2泊3日を過ごしてみて、朝夜の静けさや、時間がゆっくり流れるような心地良さが強く心に残った。

日帰りでなく、滞在したい場所。豊島はそんな場所だったと思う。

 

そして忘れてはならないのは、この居心地の良い日々を過ごすことができたのは豊島を「より良い場所に」と日々奮闘する方々のおかげだということ。

「この島の自然を活かし、何かできないか?」そんな皆さんの熱意に触れると、かつてゴミの島といわれた豊島は、すでに次の未来への大きな一歩を踏み出しているのだと強く感じた。

5年後、10年後、豊島が旅行者にどんな魅力を提供してくれるのか楽しみでならない。

***

わたしにとっての豊かさに出会う、豊島の旅。アートと自然と人をつなぐサステイナブルツアー

今回相沢さんに参加していただいたのは「瀬戸内海サステイナブルツアー」。

情報が多く疲れ、他人と同じレールを生きることで豊かさを少しずつ失っている現代。そんな今、瀬戸内に浮かぶ自然とアートの豊かなこの島を通じて「豊かさに出会う」ものとして企画されています。

ツアーの詳細はこちら

このツアーの特徴は自然の中にある豊島の人々の豊かな暮らしを体感できること。

島で暮らす方がローカルな体験を案内してくれるなど、訪れるだけでは知り得ない豊島の空気を交流を通じて感じられます。

・地元の方々の暮らしに溶け込みながら、豊島の四季の色を感じられるような体験
・現地で活動するローカルコーディネーターと過ごす余白の時間の中で、それぞれが想う “豊かさ” に出会う旅
・海が輝く綺麗なビーチで、豊島の贅沢な自然と食に触れ合いながら、非日常的な時間を過ごすツアー

など、豊島のローカルフレンドと観光客を繋げる「人と島を近づける」ツアーを随時開催中です。

 

皆さんもぜひ瀬戸内の自然とアートの豊かな島でローカルな島体験を味わいながら、ゆったりとした時間の流れを楽しんでみてはいかがでしょうか?

ライター

早稲田大学院中退後、2017年にカメラに出逢い、2020年より東京を拠点に写真家、ライターとして活動中。 メーカータイアップ、企業案件や広告撮影、雑誌への寄稿・記事の執筆等、活動の幅を広げる。 月の半分ほど国内を中心に旅をしている旅好き。初の著書を2022年3月「日常のフォトグラフィ」(玄光社)に出版。

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