――学生ながら100人をまとめる立場とは! 相当大変だったのでは?
とにかく楽しかったですね。もちろんうまくいかないこともたくさんあったんですが、落ち込んだことはなかったし、つらい思い出はほとんどありません。それも周りのみんなのサポートがあったからです。
――素敵な仲間ですね。やりきったときはどんな気持ちでしたか?
実はそれまで泣いたことがなかったんです。でもイベント終了後はめちゃくちゃ泣きましたね。メンバーのみんなに「泣いたことないって言ってたやん!」といじられるくらいの大泣き(笑)。それくらいのめり込んでいたんですよね。達成感と無事に終わった安心感、イベントが終わってしまうというさみしさがこみ上げてきました。
――すごい達成感でしょうね! 参加者、学生スタッフ、学生代表、そして社員と、さまざまな立場でBackpackFESTAにかかわってこられた平野さんですが、BackpackFESTAにかける思いをお聞かせください。
僕自身、BackpackFESTAをきっかけに旅に出たひとりです。だからBackpackFESTAというイベントに対しては、「来てもらえれば絶対に満足してもらえる」という自信があります。
やりがいという意味で言えば、本当に「やってよかった」という気持ちがあります。本気でやった分、得るものも大きかったですね。
――ちなみに学生スタッフって、旅の経験が豊富な人じゃないとなれないんですか?
まだ旅に出たことがない人でも、スタッフをやってみたい気持ちがあればオッケーです。今の環境がちょっと物足りない、刺激の多い環境に身を置いてみたい人に強くおすすめします。
人との出会いが人生を加速させるという言葉がありますが、まさにその言葉の意味を実感できる環境だと思います。僕自身、1年目にスタッフをやったときには、海外経験はほとんどゼロ。そんな僕が一緒に活動していたのは、自分のやりたいことに素直になっている仲間たちでした。
「やりたいことがあるから休学するつもり」「バイトにかける時間を減らしてTABIPPOの活動にもっと時間を割きたいと思ってるんだよね」と。そんな仲間たちとの出会いがあったからこそ、世界一周をすることに決めました。
――まさに「人との出会いが人生を加速させる」ですね。その他、学生スタッフを経験すれば、どんなスキルが身につくのでしょうか。
一番は、協調性ですね。チームでコミュニケーションを重ね、いいものをつくるために徹底的に考え抜くという姿勢が身につきます。
「仕事にはお金以外のリターンがある」という大事なことに気づけるのも、大きなポイントです。お金のためだけに働くようになると、やりたいことじゃなくても給料がいいからと我慢したり、会社の愚痴ばかり言ったりするようになりますよね。そうじゃなく、やりがいや将来の夢を語り合える仲間ができるのは、とてもいいことだと思っています。
――「学生スタッフ、やってみたいけどなかなか一歩踏み出せない……」そんな学生の背中を押してあげるとしたら、なんと伝えますか?
気になったらとりあえずやってみてほしいと思います。目の前にチャンスがあらわれたら、失敗して当然という気持ちで、とりあえずやってみましょう。
これは学生スタッフに限らずです。もちろん仲間になってくれればうれしいけど、何より大事なのはいい学生生活を送ることですから。
僕は本当にチャレンジして良かったと思います。今でも、「あのときイベントに行かなければどんな人生だったかな」と思うことがあります。
――平野さんは首都圏ではなく地方の大学に通われていましたが、地方の学生に伝えたいことはありますか。
僕は地元和歌山で20年間ほど過ごしましたが、「世界一周」「バックパッカー」という言葉を一度も聞いたことがありませんでした。東京にいると自然と情報が飛び込んできますが、地方にいると、自分から情報を取りに行かなければならない。だから、自分の前にあるたくさんの選択肢に気づかないままになってしまうリスクがあると思います。
だからこそ地方の学生には、新しい環境に自ら飛び込んでいく意識を持ってほしい。そうすれば刺激を受けられるし、視野が広がるから。
――最後に、今後の夢や目標を教えてください。
TABIPPOには「若者に旅を広める」「旅の経験が生きる社会をつくる」という2つの柱がありますが、若者向けのプロジェクトにもっとかかわっていきたいと思っています。もっと地方の若者に、海外という選択肢、旅という選択肢を持ってほしい。実際に旅に出るかどうかは別として、そういう選択肢があることを知ってもらいたいですね。
和歌山に帰って若者の支援をしたり、若者に機会を提供できる場づくりをしたりすることも検討中です。和歌山に拠点を置きつつ、日本全国、海外を飛び回りたいですね。
――ありがとうございました!
text:西嶋結
photo:前田塁