ライター
永崎 裕麻 生きる旅幸家

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2014/2016/2017)のフィジー共和国へ07年から移住し、現在13年目。 100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府事業に参画、教育企画の立案、ライターとして「ハフィントンポスト(日本版)」「日経doors」などで執筆、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動中。 二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

「アービトラージ」という言葉をご存知でしょうか。英和辞典によると「サヤ取り(市場間の価格差で利益を得る取引)」という意味です。

それがなぜ旅人の生存戦略なのか…。具体的事例のほうがわかりやすいと思いますので、最近話題のFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期退職を目指すライフスタイル)の中でも出てくる「地理的アービトラージ」について説明します。

地理的アービトラージとは

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20年前の大学時代、東南アジアを一人旅していたとき、宿が同じだった50代の日本人男性と出会いました。彼は自分のことをIHだと言っていました。「IHって何ですか?」と尋ねると、「International Homeless(インターナショナル・ホームレス)」だと返ってきました。かっこいいような悪いような…。

話を詳しく聞くと、「日本で3か月働き、残りの9か月は物価の安い東南アジアの3カ国を周遊しながら生活費を抑えて暮らす」というライフスタイルのことでした。ホームレスとはいっても、「日本に居場所がない」という意味であって野宿しているわけではなく、日本では住み込みで働き、海外では1泊300円くらいの宿に泊まる生活。

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ざっくりいえば、給与水準の高い国で短期間働き、家賃や食事など物価の安い国で生活する。そんなライフスタイルです。当時大学生だった私には衝撃的な生き方でしたが、これが地理的アービトラージの一つの形です。

私自身、現在フィジーに住んでいて、地理的アービトラージの恩恵を受けています。たとえば、我が家(フィジーで4人暮らし)の水道料金は月200円。日本で「二人以上世帯」の平均水道料金は月5,100円なので、25.5倍の差があります。この差額の4,900円が利益ということになります。

これは海外生活に限った話ではありません。日本国内においても、都会と地方では家賃の差が非常に大きいので、それを生かすのも地理的アービトラージです。

文化的アービトラージと時間的アービトラージ

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地理的アービトラージ以外にも、いろんな種類のアービトラージがあります。たとえば、文化的アービトラージ。文化差を利用して利益を出します。

私の場合は滞在するフィジーの文化について、日本のメディアで多く発信しています。フィジー人にとっては当たり前すぎて価値を持たない情報ですが、文化の異なる日本では価値が発生します。また、フィジーで英語学校の校長をしていますが、日本からの留学生たちにとってはフィジー文化はとても斬新に映ります。ここでも文化差が価値を生んでいます。

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私がいちばん注目しているのは、「時間的アービトラージ」です。一般的には、「将来価値が出そうなものを早めに仕入れておき、時間が経って価値が出たあとに売り抜く」ような感じで使われています。

ただ、私自身は「ライフタイムマネジメント」としての活用価値があると思っています。どういう意味か。長い人生の中で、各年代ごとに不足しやすいものがあると思っています。個人差は激しくあると思いますが、たとえばこんなイメージです。

10代:自由貧乏
20代:金銭貧乏
30代:時間貧乏
40代:幸福貧乏
50代:モチベーション貧乏
60代:つながり貧乏
70代:健康貧乏

10代の学生時代は親の庇護の下で暮らしているので、一人暮らしはなかなか厳しく「自由」がない。20代(特に前半)はサークル活動や飲み会、就職活動、新社会人としての初期投資(スーツや引越し)などが必要だったり、奨学金の返済が始まったりと、若くエネルギーはあるものの、その活動量に見合う「お金」がない。30代は「働き盛り」と「育児期」が重なり、「時間」がない。

40代は幸福度が人生で最低になるというデータがあり「幸福感」がない。50代になると、人生の終わりが少しずつ意識されてきて、新しいことに挑戦する「モチベーション」が下がってきたり。60代では定年を迎え、長年勤めてきた会社から離れることで「つながり」が切れたり。70代以降は健康面の心配事が増えてきます。

このように、各年代で足りないものがあるのがわかっているのであれば、時間的アービトラージを活用して、うまく立ち回ることができるのではないか。

現在の60代以降の方々は、時間があまっている傾向があります(今の若い世代が60代になる頃には状況は変わっているかもしれませんが…)。その時間を20代〜40代の時期に前借りできるとすれば、人生が変わりそうな気がしませんか。

前借りってどうやってやるの?

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働き盛りと言われる時期(20代〜40代)にあえて仕事量をセーブし、時間に余裕のある豊かな中年時代を送れるようにする。そして、60代以降の課題になる「健康」や「孤独」への予防として、運動したり、いろんなコミュニティーに所属するなど、そのための時間をしっかりと配分していく。

時間を前借りした分、60代以降により働く必要が出てくるかもしれません。老化して労働負荷が高まっているのに、仕事なんかやりたくないという方も多いでしょう。

ただ、60代以降は「仕事でも何でも用事があったほうがいい」という方もいるのではないでしょうか。若いときならイヤだと感じている仕事も、シニア世代になってからは「社会と関わるチャンス」と解釈できるのかもしれません。もしくは、AIが仕事をやってくれるので、人間はさらに暇になっている未来もありえます。

世界一周で700万円を貯金

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私は20代のとき、脱サラして2年間の世界一周を決行しました。300万円ほど使いましたが、そのときにこう思っていました。

「700万、貯金できた」

65歳で定年してから、同じような世界一周をしようとすれば体力的にも厳しいので、ホテルや移動手段のクオリティーを上げたりする必要があり、総額1,000万円くらいかかるでしょう。若いときに旅をすることによって、節約できたと。

一昔前は、大学を卒業したら40年間働き続け、定年後の20年を楽しむ。そんな1サイクル(モノサイクル)でしたが、いまは「2年働いて1年休む」を繰り返すなどのマルチサイクルな生き方が選択できるようになってきてるのではないでしょうか。

各種アービトラージを活用しながら、オリジナルなライフデザインを楽しんで創っていけたらいいですね。

ライター
永崎 裕麻 生きる旅幸家

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2014/2016/2017)のフィジー共和国へ07年から移住し、現在13年目。 100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府事業に参画、教育企画の立案、ライターとして「ハフィントンポスト(日本版)」「日経doors」などで執筆、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動中。 二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

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