「油絵」のクラスで、ありきたりから脱却
photo by Yuri Hamashima
油絵のクラスは、初日から衝撃的でした。大きなキャンパスを歩き回って、やっとたどり着いた初めての美術室。そこには全裸の男性が堂々と立っていたのです。
いきなり⁉︎ 初回から⁉︎ ……絵のモデルの方とはいえ、予告がなかったため困惑しました。
先にきた女子生徒たちは男性を囲うように、中心に向かって好きな場所に座っていました。人気がなかったのはお尻側。遅くきた私は、光と影のバランスを考えながら、せっせとそのお尻の絵を描いたものです。
そもそも油絵初心者だった私にとって、このクラスは学ぶことばかりでした。アニメのような平面の絵を描いてしまうため、「本当の色を見なさい」と何度も注意されたのを覚えています。
photo by Yuri Hamashima
「空は青、木は緑じゃないでしょう!本物をちゃんと見たらうっすらピンクと黄色なの、わかる?」いつもこんな感じです。自分がどれだけ固定観念の色に囚われたまま絵を描いていたのか、反省する日々でした。どんなものも単色に見えて、単色ではないということですね。
先生は「自画像を描く」という宿題が好きで、何回も自画像を描きました。
こちらが初心者感丸出しの自画像
案の定、いつも肌色の絵が平面すぎると言われてしまい、「日本人の顔は平面なんだから、これが現実なのに!」と心の中で文句をたれつつ、ある日何を思ったか、緑色の肌をした自画像を描いてみたのです。植物の精みたいな感じでしょうか。
するとなぜか先生に、「素晴らしい!」と褒められ、クラスの他の生徒からも「この絵、最高!」と言ってもらえるように。自分の視点では「意味のわからない絵」が、他の人には「面白い」と評価されることもあるんですね。
「ありきたりから脱却してみる」ことの面白さを感じた瞬間でした。
自分を客観視する癖から抜け出したかった「演劇」
photo by Bryn Mawr College
最後に、演劇のクラスについてご紹介します。私は日本でもアメリカでも演劇のクラスをとりました。比べてみると、圧倒的にアメリカでの方が役に入りきることができていて、この差に本当に驚きました。
日本では、常に自分を外からみて「今の私、イタくないかな?」と多かれ少なかれ自分を客観視している人が多いと思います。
一概には言い切れませんが、アメリカでは自信をもった人が多く、人のことをイタいと軽蔑する雰囲気もなかったので、それが演技力に影響しているのかもしれません。
演劇のクラスではその役にどういう背景があり、心の奥では何を求めているのかを分析し、役になりきる練習をしました。自分を客観視してしまう癖がついている私には、本当に難しい作業です。
日本ではあまり知られていませんが、演技にもたくさんのメソッドがあるため、学問として極めていくことにも大変興味を持ちました。
日本社会を言い訳に、自分の世界を狭めないで
こうして記事を書くなかで、アメリカで芸術を学んだ経験が今の自分を作っていると改めて感じました。
「自分らしくいる」ことを恐れないことで、人生の色々な場面で、心の声に従った決断ができるようになります。
今の私は、大好きな旅のマーケティングという仕事を通して頻繁に世界を旅していますが、旅の経験で感じたことを自分の言葉で表現することも、どうしたら観光地が人気になるのか考えることも、創造的な仕事だと感じます。
そしてもう何かを始めることに年齢を気にしなくなったので、今から芸術分野を極めていくことも可能だと思うようになりました。
敷かれたレールの上にいるのは、日本のせいではなく、親のせいでもない。結局は自分で選択していること。どんな場所でも自分らしく生きることはできます。
それでも人の目を気にしてしまう方、殻を破ってみたい方は、ぜひ一度、アメリカにいってみてください。きっと勇気をもらえると思います。