お気に入りの街Burleigh Heads
「ちゃんと頑張らなきゃ」「生産的なことしなきゃ」——頭の中でそんな言葉に追われて、自分のペースを失いかけてしまう時は、誰にでもあるのでは無いでしょうか?
オーストラリア・ゴールドコーストで過ごした1年は、そんな無意識の緊張感をふっとゆるめてくれる時間でした。
この街が好きだと思えたのは、日常の中に“ゆるまる瞬間”が自然にあふれていたからだと、離れてから気付いたのです。
見出し
海とともに始まる朝
オーシャンビューが最高なシェアハウス
年間約300日が晴天と言われるゴールドコースト。そんな気候を存分に楽しむべく、一年の後半は、オーシャンビューのシェアハウスに住んでいました。
ベランダから海を見ながらコーヒーを飲むのが、毎朝のルーティン。
波の音が聞こえて、青空の中サーファーたちが海に入っていくのを見ているだけで、不思議と「今日もきっと良い日になる」と思える。
そんな根拠のない安心感に包まれて、一日が始まります。
自然とかかわることが”習慣”
休日はカフェでテイクアウトしたコーヒーを片手に、友達とビーチへ。ジョギングや犬の散歩、釣りをする人たちがいて、一歩外に出れば、いつも誰かが気持ちよさそうに過ごしています。
日々の生活にちゃんと余白があって、自然とかかわることが“週末に自然を感じにいく”というような「イベント」ではなく「習慣」という感じ。
自然の中にいると穏やかな気持ちになるからか、誰しもが自分のペースにかえりやすくなる。そのおかげか街全体がどこかゆったりしてて、どこかやわらかい。
そんな空気感での生活は無意識に自分も少しスローダウンさせられました。
「No worries!」マインドで、軽やかに挑戦を
朝5時起きして参加したビーチヨガクラスはなんと無料。
オーストラリアでは「No worries!(気にしないで、大丈夫/心配いらないよ!)」という言葉があらゆるシーンで本当によく聞こえてきます。ゴールドコーストの空気はまさにその感じで、せかせかした空気がありません。
また挑戦コストも低くて、ヨガやサルサなど参加無料のアクティビティを体験してみたり、カジノの無料映画デーの日に英語音声のみで鑑賞したり、20ドル程でサーフボードをレンタルしてサーフィンに挑戦してみたり。
“ちゃんとやらなきゃ”より“とりあえずやってみる”が自然にできる。そんな環境は、挑戦のハードルをぐっと下げてくれます。だからこそ、自分の内側にある好奇心に自然と素直になれるのです。
「気になったらやってみる」は、オーストラリアでの生活のおかげで習慣付いてきたように思います。
ボードレンタルしてハウスメイトと練習した日。
ただ居るだけで、好きになってしまう街
ゴールドコーストの魅力は、何気ない日常にも心がふっとゆるむ瞬間があるところ。
信号待ちの間に聴こえてくる波音やアコースティックギター、砂を払って裸足のままスーパーに入っていくサーファー。
そんな“なんでもない日常”が、心をじんわり温めてくれる街でした。
週末のローカルマーケットや、少し足を伸ばすだけでたどり着けるバイロンベイやヌーサ、ブリスベンはまた雰囲気が変わり気分転換になるし、海も山も選べるこの街は、「どこに行こうか」という迷いですら、ワクワクに変わります。
マーケットでは、環境配慮や健康志向の個人出店が多い
海から離れ、山の方へハイキング
なかでもお気に入りは圧倒的にサンセットの時間。
空と街がオレンジに染まる頃、みんながそれぞれの場所で静かにその景色を眺めている。その“時間の共有”が、なんともあたたかくて大好きでした。
ゆるく始まり、深まっていく人とのつながり
家を決めるまでの間に滞在したバックパッカー。
この街での出会いもまた、どこか自然体でした。
バックパッカーでゲームをして、そのまま飲みに行って終わった関係もあれば、2日間だけ一緒に働いた相手とは、数年後に宮古島で再会するくらいの仲になりました。
後先考えず、気が合えば一緒にいるし、気が合わなければサラッと離れる。そういう“ゆるさ”が結構気楽で心地良い。その分、一緒に笑った時間や、ふと真面目な話をした場面がすごく深く残ります。
出会いも別れも多い場所だけれど、「またね」と言ってハグをする時、涙が出るくらい大事な関係になっていたことに気づくこともあるのです。
「気持ちよく生きる」を教えてくれた街
決して毎日がのんびりだったわけじゃない。掛け持ちで働いていたし、むしろ忙しい日が多かったです。それでも今も心に残っているのは、海の景色や、友達と笑った夜、職場の人との休憩時間みたいな、ゆるやかな時間が圧倒的に多い。
ゴールドコーストは「肩書き」や「成果」、「ちゃんと生きる」より「気持ちよく生きる」を教えてくれた場所。
この街が好き。
そう思える場所がひとつでもあることが、人生をちょっと強く、軽やかにしてくれる気がします。
All photos by saeno