ライター
永崎 裕麻 生きる旅幸家

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2014/2016/2017)のフィジー共和国へ07年から移住し、現在13年目。 100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府事業に参画、教育企画の立案、ライターとして「ハフィントンポスト(日本版)」「日経doors」などで執筆、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動中。 二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

「不便益」という言葉を聞いたことがありますか?英語なら、benefit of inconvenienceです。一言でいえば、「不便でよかったこと」を指します。

フィジーで生活していると、不便だと感じることはたくさんあります。たとえば外食したいとき、レストランの選択肢が非常に限られています。ただ、選ぶ時間がかかりませんし、選んだあとの後悔もありません(日本で飲み会の幹事とかやると、店探しが大変だったりしますよね…)。

一見不便だとしても、実はいいことって結構あります。そんな不便益の研究をされているのが、京都大学デザイン学ユニットの川上浩司(特定教授)さんです。

京都大学の有名なお土産に「素数の目盛りしかないものさし」があります。普通に不便ですが、測るときに頭を使う必要があり楽しくボケ防止にもいいですね。これも不便益の研究から生まれたヒット商品です。

効率性や合理性が追求され、社会は便利になりました。ただ、これ以上に便利さを追い続けることでより豊かな社会が実現できるのかは疑問です。むしろ、逆方向(不便方向)に光があるのかもしれません。

旅はまさに不便益の宝石箱

photo by unsplash
外国への旅はいろんな不便機会を提供してくれます。いくつか「海外旅行の不便あるある」を列挙してみます。

・ゲストハウスでホットシャワーが出ない
・買い物するとき、値札がないのでいちいち交渉
・洗濯が手洗い
・ラマダン(イスラム教徒の断食期)中は自由に食事できない
・日本よりも治安が悪い場所が多い
・日本語が通じない
・詐欺被害に遭う
・ネットがめちゃくちゃ遅い
・店員の接客態度にイライラする
・コロナで日本に帰れなくなる

どれも不便ではありますが、コインの裏表のようにいい面(不便益)もあります。こんな感じでしょうか。

ゲストハウスでホットシャワーが出ない
→どこかの宿でホットシャワーが出たときに感動できる

買い物するとき、値札がないのでいちいち交渉
→日本人が苦手なネゴシエーション力がアップする

洗濯が手洗い
→体力がつく

ラマダン(イスラム教徒の断食期)中は自由に食事できない
→空腹の過酷さを体験でき、貧困問題が自分ごとになる

日本よりも治安が悪い場所が多い
→危機管理能力がアップする

日本語が通じない
→英語ができないことが死活問題となり、英語に本気になれる

詐欺被害に遭う
→困っているときこそ仲間ができる

ネットがめちゃくちゃ遅い
→デジタルデトックスできる

店員の接客態度にイライラする
→日本のサービス業の質の高さに気づくことができる

コロナで日本に帰れなくなる
→生涯語れるネタができる

不便はいろんなことを私たちに教えてくれます。だからこそ、不便の宝石箱である「旅」は確実に人を成長させてくれるのです。

ステイホームが基本のコロナ禍では旅という不便パッケージを活用しにくいので、不便を意識的につくっていく必要が出てきます。

不便のつくり方

では、不便をどうやってつくっていくのか。例として以下4つの技を挙げます。

1. アナログにしてみる

photo by unsplash
たとえば、メールで連絡するのではなく、絵葉書を書いてみる。親指に一瞬だけ力を入れて「あ」とタイプするのと、2秒という時間を使って「あ」と書くのとでは、感情の入り方が違います。

メールを100通受信するよりも、短文でも直筆の手紙を1通もらったほうが感動できるってことは多いのではないでしょうか。

2. 情報を減らす

photo by unsplash
スマートフォンでググれば、多くの情報を入手することができます。ただ、その結果、私たちは情報肥満になっていないでしょうか。

私たちにとって貴重なリソースである「時間」を「情報」と交換しすぎてしまっていたりはしませんか。必要以上に仕入れている情報量を減らすことで、日々の多忙感から脱することができるのかもしれません。

3. 危険にする

フィジーで子供たちと公園やグラウンドでよく遊んでいますが、シーソーやジャングルジムなんかよりも人気のスポットがあります。下の写真のように、車が2台重なり合って放置されている場所です。

photo by Yuma Nagasaki
フロントガラスが割れて破片が飛び散っていたり、車の部品がむき出しになっていたりで、普通の遊具と違って危険です。でも、子供たちはその危険性に夢中になります。

作られた安全な世界観よりも、リアルで危険な世界観が価値を持つことがあります。TABIPPOが世界を旅することを応援していることと似ている気がします。

4. 工数を増やす

photo by unsplash
時間をかける。遠くにいく。そうやって苦労するからこそ、価値を実感できる。

ボリビアのウユニ塩湖やナミビアのナミブ砂漠に行ったときにものすごく感動するのは、それ自体の価値ももちろんありますが、そこに自分が投下した工数も大きなスパイスになっているのではないでしょうか。

琵琶湖や鳥取砂丘がそのレベルの光景だったとしても、日帰りで行くことができてしまうと感動は目減りしそうです。

感動の反対語は快適

photo by unsplash
「感動」の反対語は「快適」だという話を聞いたことがあります。快適な環境にい続けてはなかなか感動できないと。では、さらに「快適」の反対語は何でしょうか?「不便」だと思います。

感動 ⇔ 快適 ⇔ 不便

こんな関係性が成り立ちそうです。つまり、「感動 ≒ 不便」なのかもしれません。感動は不便な環境から多く生み出される。

便利に向かうベクトルだけでなく、不便に向かうベクトルも活用していくと、人生はより豊かに彩られていくのではないでしょうか。

コロナ時代はまさにそれを学ぶ最適なタイミングなのかもしれません。

ライター
永崎 裕麻 生きる旅幸家

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2014/2016/2017)のフィジー共和国へ07年から移住し、現在13年目。 100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府事業に参画、教育企画の立案、ライターとして「ハフィントンポスト(日本版)」「日経doors」などで執筆、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動中。 二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

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