ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは、山岳自転車旅ライターの土庄です。

とうとう夏を迎えましたね!蝉の声が鳴り響き、山はいっそう緑濃く。見上げれば、雄大な青空とドラマチックな雲が広がります。

夏は冒険心をかき立ててやまない季節です。山というフィールドを好む筆者にとって、日本屈指の高峰を旅できる束の間のシーズンでもあります。

今回はそんな夏の山旅のうち、南アルプス「白峰三山」へ縦走した2泊3日の旅をレポート!日本第2位と3位の標高をつなぐ天空の稜線は、今も目に焼き付いて離れません。

白峰三山を縦走する2泊3日の山旅


白峰三山とは、南アルプスの北岳(きただけ、標高3,193m)、間ノ岳(あいのだけ、標高3,190m)、農鳥岳(のうとりだけ、標高3,026m)の総称。そのうち、前二者は登山愛好家のバイブル・日本百名山にも選ばれた山として知られています。

今回ご紹介するルートは、この3つの山頂をつなぐ総距離約27kmのロングコースです。テントを担いで登りましたが、設営場所が限られるため、以下のように区切って行程を組んでいます。

【1日目】奈良田〜広河原〜北岳肩の小屋 約5km
【2日目前半】北岳肩の小屋・北岳〜間ノ岳縦走 約5km
【2日目後半】間ノ岳〜農鳥岳縦走〜大門沢小屋 約9km
【3日目】大門沢小屋〜奈良田 約8km

1日目に標高を稼ぎ、日本一高いテント場へ。2日目に標高3,000m超の山頂と天空の稜線を歩き、大門沢小屋まで一気に下ります。最終日の3日目は、余韻に浸りつつ奈良田温泉へ下山しました。

【1日目】日本最高標高のテント場へ(奈良田〜広河原〜北岳肩の小屋)


山梨県の山間部奈良田からバスに揺られること約45分、南アルプスの登山拠点となっている広河原へ到着します。

バス停から北へ、川にかかっている橋を渡れば北岳登山道の始まりです。あいにく北岳は雲の中ですが、夏らしい壮大な風景を前にすると、「これから登るんだ!」と気持ちが高揚します。


初日は、北岳山頂にほど近い「北岳肩ノ小屋テント場」を目指します。日本一の標高を誇るテント場で、その高さは3,000m超。スタートの広河原との標高差は1,500mです。

前半は樹林帯をたんたんと登っていきます。緑が鮮やかで、吹き抜ける風が心地よい。ペースを上げすぎると、あとあと効いてくるので控えめに。


途中、白根御池小屋を通り過ぎると、道の傾斜が上がります。道端の高山植物に癒やされつつ、ひたすら目の前の坂道をのぼります。

登山開始から約4〜5時間で、北岳への稜線に出てきます。絶景が待っているかと思いきや、山頂は霧の中。なんだか雲行きが怪しいですが、ゴールはすぐそこです。


「北岳肩ノ小屋テント場」へ到着!北岳の山頂直下、鞍部に100以上テントを張れる大きなキャンプ場が設けられています。

夕方には少し雨が降ってきたので、テントの中で雨宿り。山の天候はなかなか読めないので難しいですね。しかし30分もすると、雨が少し止んで、目の前には虹が……!


気づいたときには、北岳山頂を目指している自分がいました。「もしかしたら晴れるかもしれない!」完全に自分の勘ですが、それを信じて一心不乱に登っていると……

山頂に到達した時には、青空が待ち受けてくれました。そこは日本で第2の標高の場所。

「とうとう来たんだ……!」という思いが込み上げます。


そんな1日目を祝ってくれているかのように、目の間に広がるのは南アルプス「鳳凰三山(ほうおうさんざん、標高2,840m)」に架かる美しい虹。

山頂に居合わせた2人組の登山客と感動を共有し、しばし写真撮影を楽しみました。景色や人との一期一会があるので、やはり登山はやめられませんね。

【2日目前半】雲上の縦走路を歩く(北岳肩の小屋・北岳〜間ノ岳縦走)


早朝起床すると、昨日とは打って変わって晴れた空。雲海の先に、ご来光を眺めます。標高3,000mという立地だけに、非日常感も格別。

2日目が最もハードな行程なので、早めにテントを撤収して北岳山頂へ。周囲には仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ、標高3,033m)や甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ、標高2,967m)など、朝焼けから浮かび上がる南アルプスの山容が見事でした。


北岳(きただけ、標高3,193m)登頂前の一枚。山頂の先には、秀峰・富士山がそびえ立ちます。まさに頂点にふさわしい山岳風情を味わいました。

昨日はガスが漂う荘厳な雰囲気でしたが、2日目はすっきりとした夏山らしい趣。さぁ、ここから白峰三山への本格的な縦走の始まりです!


北岳から間ノ岳(あいのだけ、標高3,190m)へ向かう稜線は、標高3,000mを超える国内最高標高クラスの稜線。雲遊ぶ間ノ岳は、まさに神仙の世界を思わせるたたずまいです。

危険な箇所はありませんが、高度感と山岳パノラマに圧倒されながら一歩一歩進んでいきました。


朝は快晴だったのですが、次第に雲も出てきました。ガスが充満したり消えたりと、梅雨が残ったような天気でしたが、それゆえに山らしい表情変化も楽しめます。

ずっと続いていく稜線にかかった雲。山頂が見えないからこそ、ラピュタを前にしてパズーが言い放った名台詞「あの雲の先に何があるのか?」を思い出しました。


間ノ岳に続く、中白根山(なかしらねやま、標高3,055m)の山頂付近では、雷鳥の親子に出会いました。

親鳥の近くに、子どもの雷鳥がなんと4羽も!テクテクと走り回って一生懸命餌を探す姿が、とてもかわいらしかったです。


そうこうしているうちに、本格的にガスが充満してきました。あたりは真っ白になり、岩稜のシルエットしかわかりません。

畏怖の念さえ抱く、美しくも過酷な山の姿を垣間見ます。


そんな真っ白な世界も束の間、間ノ岳山頂で青空が顔をのぞかせました。この劇的な景色変化こそ、天空の稜線を歩く感動を伝えてくれますね。

さぁ、これで白峰三山の2座登頂!残すところは農鳥岳(のうとりだけ、標高3,026m)の1座ですが、実はここからが正念場になります。

きついけれど、とても充実していた2日目後半戦です。

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「創業110周年記念 愛知銀行フォトコンテスト」最優秀賞など。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

RELATED

関連記事