こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年10月12日に締め切った、「#私たちは旅をやめられない」コンテスト。たくさんのご応募ありがとうございました!

募集時にクリエイターの方々の作品例を掲載しておりました特集にて、受賞作を順次掲載する形で発表させていただきます。

それぞれの旅への思いが詰まった素晴らしい作品をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。

今回はAIRPORT賞に輝いた、miiさんの作品『恋しいSuomi。憧れの国フィンランド。』をご紹介します。

miiさんには、成田国際空港より「NARITA PREMIER LOUNGE(成田プレミアラウンジ)チケット」が贈られます。それでは、作品をお楽しみください。

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” Suomi ”

Suomi(スオミ)とは、フィンランド語で、フィンランドそのものを表すことばだ。

一年半前の四月。わたしは長年憧れてやまなかった北欧の国、フィンランドの海辺に面した公園で、ひとり満月を眺めていた。

はじめてのひとり旅。不安と期待をおおきな鞄に詰め込んで、FINNAIRで日本から八時間。

たどり着いたその場所は、至るところカモメが飛び交う美しい街。これから白夜の季節に向かう北極圏に近いその街の空は、夜九時を過ぎてもまだぼんやりと明るい。

わたしが愛してやまないmarimekkoの洋服に身を包むご婦人、シンプルで質の良いホテル、昼下がりの公園で寝そべり語らう人々。異国の地では目に映るものすべてが新鮮で、キラキラと輝いて見えた。

この時のわたしは”いま自分が憧れの国にいる”という状況にただただ浮かれまくっていて、「次はあの店を見なきゃ、あれは食べておかなきゃ、あの写真も撮りたい」と身体も心も大忙しで。

旅の二日目の夜に体調を崩し、しまいには現地の病院に人生初の救急車に乗って運ばれる始末。思い返せば、憧れのフィンランドを存分に満喫したとは言い難い、最初から最後までてんやわんやの旅だった。

そんなわたしが唯一ほっと息をつき呼吸を整えた場所。それが、寄せては返すしずかな波の音に耳を澄ませ、水平線近くに昇るおおきな満月を眺めた、あの海辺の公園だったとおもう。

憧れの国まで旅しておいて不思議なことに、「ああ、月は日本で見るのと同じだなあ」と思うとなんだかふっと気が抜けたのだ。

お月さまもびっくりのとんでもない勘違いなんだろうけれど、その時のわたしには、暮れかけの瑠璃紺の空に浮かぶ満月が、わたしの人生初めてのひとり旅をそっと見守ってくれているように思えてならなかった。

「世界はつながっている」という当たり前の事実を、そのことばの意味を、初めてすこしだけ理解した気がした。

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2020年、あれよあれよという間に世界が大きく変わり。気軽に海を渡ることも、会いたい時に会いたい人に会いに行くことも叶わなくなったいま。

20代も後半になってようやく自分の身の回りを整える生活の大切さに気付かされながらも、それでもなお。

海の向こうのあの場所へ恋焦がれてやまない。

上空数千メートルで眺める朝焼けや、空港独特の浮き足だった空気感。見慣れない乗り物や食べ物、異国の色彩。手に入れようと思えばいつだって手に入るはずだった”非日常”が、恋しくて恋しくてたまらない。

その気持ちは何度も、何度でも押し寄せて、そのたびにますます色濃く、強くなる。

次にフィンランドを訪れるときは、”予定は未定で行く”と決めている。

気が向いたら遠くの森へ出かけ、午後中サウナと湖をひたすら往復するもよし。街角で奏でられるチェロの音色に足を止めて聞き惚れるのも、オーロラを求めてラップランドまで足を伸ばしてみるのも良いな。

Suomiの暮らしに、ライフスタイルに、そのまま没入してしまうような滞在を。次は急がず慌てずじっくりと、憧れのあの国の魅力を噛みしめたい。

アパートのベランダから見えるおおきな満月を見上げ、わたしは今日も遥か遠くSuomiに想いを馳せる。

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編集部

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