こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年10月12日に締め切った、「#私たちは旅をやめられない」コンテスト。たくさんのご応募ありがとうございました!
募集時にクリエイターの方々の作品例を掲載しておりました特集にて、受賞作を順次掲載する形で発表させていただきます。
それぞれの旅への思いが詰まった素晴らしい作品をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。
今回はTRAVELERS賞に輝いた、Mayaさんの作品『第二の旅の始まり、ニュージーランドが教えてくれたもの。』をご紹介します。
Mayaさんには、AKASOより「AKASO V50 Pro SEアクションカメラ」が贈られます。それでは、作品をお楽しみください。
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今まで30カ国以上を歩き、毎年旅を重ねてきたが、今年、はじめて旅の歩みを止めた。
ビルの真ん中で閉じこもっている期間が長いからこそ、今思うことは、時にはやさしく、そして厳しく私たちを迎えてくれる大自然に包まれたいという願い。旅に出ていた日常は一変したが、毎日旅への妄想を膨らませている。
私が最後に訪れた海外は、昨年12月に行った初めてのニュージーランド。オークランドに降り立ち、一台のバンでニュージーランドの北島を駆け巡る冒険の旅に出たのだった。
私にしては珍しく、下調べをあまりせず、ワクワクに身を任せた一週間。マタマタ、ホビトン、ロトルア、ワイトモ、タウポをめぐる旅に、期待と不安が入り混じる。
20年前とは違い、今やSNSが発達し、本当の意味での新しい発見や心の震えというものを久しく経験していなかった。だからこそ、違うスタイルでの旅を試してみたくなったのかもしれない。
見たことのない場所に移動し、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込み、現地で取れたフレッシュな食事をする喜びを。
実は、今回の一大イベントの一つに、47メートルの高さから川へと落下するバンジージャンプの挑戦があった。
見るだけの経験は何度かあったものの、いつも恐怖心が勝ってしまい、実際に飛びこむ勇気がなかったというのが本音だ。
遠くから下を見るだけで、お腹の底から得体のしれないぞわぞわとした不安が立ち込めるが、ひょっとして人生において新たな経験になるかもしれない。そんな期待が、心の片隅にあった。
私は意を決して器具を装着し、一人で飛び込み台に佇むと、心臓は口から飛び出しそうなほど高鳴り、どくどくと血液が体中を駆け巡るのが分かった。
「飛ぶしかない」と頭では理解しているものの、なかなか踏み出せない一歩。行くのか、行かないのか、私の心は天秤にかけられ、そして格闘する。
一度目の掛け声では思わず足を引っ込めてしまったが、2度目の声を聞いた瞬間、心の扉を開け放ちながら、空高く手を挙げ、なすがままに川へと思い切り飛び込んだ。絶叫を想像していたのに、あまりの速度に声が出ず、操り人形のように何度も空中をバウンドする。
心臓がぎゅっと縮むほどの恐怖の先にあったものは、今まで経験したことのないような、頭頂を突き抜けるような爽快感だった。空中を浮遊し、風に吹かれ身を任せながら、達成感に酔いしれる。こんなにも新鮮な思いは、いつぶりだろう。
初めて訪れる国というのは、時に思いがけない経験を与えてくれるものだ。
その翌朝、友人がタウポ湖から車で少し走ったところにある、タウハラ山に連れて行ってくれた。登山道の入り口は草原で、多くの牛が放牧されており、驚くことに山へは中を突っ切っていくという。
手を伸ばせばすぐに触れられる牛たちとの距離感に、私の体は自然と委縮した。ぶつかってしまったら、人間の体はひとたまりもない。
友人の「穏やかだから大丈夫」の言葉を信じて、慎重にそろりと足を踏み出す。すると牛たちは、本当にやさしい目でじっとこちらを見つめて、ゆっくりと距離を保ってくれた。
あたりを見回すと、じんわりと朝日が差し、穏やかな波のようにざわめきたつ草原を、徐々に明るく染めていく。私たちと牛たちの間には、すがすがしい風がそよぎ、汗をかいたカラダを心地よく包み込んでくれた。
街中から10分ほどの場所に、こんなにも豊かな自然が共存しているとは。人間は地球とともに、そして多くの生き物と共存している、そういう当たり前のことを教えてくれた瞬間だった。
私は今までどこにいたのだろう。地球の美しさ、素晴らしさを発見させてくれたのは、紛れもないニュージーランドの地だった。
自然とともに生きるとは、このことだったのか。川の流れる速度に身を任せ、風のそよぐ声に耳を傾けながら、動物たちの会話を楽しむ。
もっと「自然のことが知りたい、自然とともに生きる方法を探りたい」。ニュージーランドは、私の中にずっとあった、人間としての殻をやぶってくれた。
今までとは違う、新しい感情。地球に生きる私にとって、どんな生き方が心地よいのか、そんな疑問を投げかけてくれた今回の旅。
冒険をしながら、ニュージーランドの大自然を丸ごと楽しんだ数日間は、毎日が新鮮かつ冒険の連続で、新たなる人生の一歩になった。その道筋を示してくれたのが、ニュージーランドだ。
また、人々が世界を行き来できる時期がきたら、今度はニュージーランドの南島にあるクィーンズタウンを訪れたい。ニュージーランドの北島で出会った人が口々に「ダイナミックな自然が楽しめるよ」とすすめてくれたのだ。
サザンアルプスの絶景を眺めたり、ジェットボートや乗馬を満喫するのもいいだろう。そして、ワカティプ湖の神秘的な輝きを見つめながら、ニュージーランドワインを片手に、素材をいかした食事をゆっくりと楽しむ。スカイライン・クィーンズタウンでは、ゴンドラから、息をのむような美しいサンセットも見られるだろうか。
まばゆい星の光が降りそそぐ豊かな大地の下で、宇宙が大好きな息子の小さな手をぎゅっと握りながら「私たちの住んでいる星は、こんなにも美しいんだよ」と、語り合いたい。その日を夢見て、私は旅のシュミレーションを頭の中で何度も繰り返している。
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