こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年10月12日に締め切った、「#私たちは旅をやめられない」コンテスト。たくさんのご応募ありがとうございました!
募集時にクリエイターの方々の作品例を掲載しておりました特集にて、受賞作を順次掲載する形で発表させていただきます。
それぞれの旅への思いが詰まった素晴らしい作品をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。
今回はTRAVELERS賞に輝いた、marikoさんの作品『帰りたいな、と思う場所。』をご紹介します。
marikoさんには、KLOOKより「豊洲・チームラボプラネッツTOKYO 入場チケット(ペア1組)」が贈られます。それでは、作品をお楽しみください。
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「6回までね!」
ベトナムはダナン。縦長に広がるベトナムの真ん中あたりにある都市である。欧米やアジアからの観光客も多く、ホーチミンやハノイに次ぐ第三の都市となりつつある。
数年前に成田からの直行便が飛ぶようになったこと、物価も安く、5つ星のホテルでも比較的リーズナブルに泊まれることなど魅力あふれるビーチリゾートで、日本からの観光客も増えているようだ。
私ももれなくその日本からの観光客の一人。でも、どこか自分の中では「皆とは違うぞ、私のダナンへの思いは人一倍だぞ」なんて思ってたりする。その理由は冒頭に戻る。
冒頭の言葉は、4回目のダナンの帰り道、ホテルから空港までの送迎バスの中で、現地ガイドさんに言われた言葉である。
そう、私はダナンに魅了され、4回も行ってしまったのだ。ここ数年ほぼ毎年、夏休みをダナンで過ごしている。それを現地ガイドさんが驚き、冗談交じりで「(ダナンに来るのは)6回までね!」と返してくれたのだ。
6回まで。現地の人に、そうは言われたけど、ごめんなさい、たぶんその倍は行くことになると思います。むしろ、私にとってはもう「年に一回は帰りたくなる場所」になってしまってしまいました。それだけもう、特別な場所なのです。
特別な場所。帰りたくなる所以。ダナンの何に魅了されたのかと言えば、まず記したいのは何度でも見たくなる美しい海だ。
白い砂浜に真っ青な波が穏やかに穏やかに寄せては返す。夜明け前、サンライズを見たくて浜辺に行くと、現地の人は家族でウォーキングを楽しむ。小さな手漕ぎの船で漁に精を出す人もいる。海の向こう側から太陽が昇ってくるにつれて人々のシルエットが浮かぶ。
なんて穏やかな生き方があるのだ、と知ることができた。その美しい海は、何度でも見たくなる。帰りたくなるのである。
私が毎年行くのは夏なので、ダナンでも熱中症になりそうなくらい日射しが強い季節。そんな中に、罪悪感にさいなまれながらも朝からプールサイドでビール!なんてことも加われば天国。もちろん昼寝も必須。誰にも怒られない。
ダナンはご飯もおいしい。ベトナムといえばのフォーはもちろん、私が一番お気に入りなのはBanh Trang Thit Heo(バン チャン ティッ ヘオ)という生春巻きのような食べ物と練乳入りのアイスコーヒーだ。
ダナン滞在中に必ず一度は行くBanh Trang Thit Heoのレストラン、その名も「Banh Trang Thit Heo Tran(バン チャン ティッ ヘオ チャン)」。ダナン市内には3店舗あり(当時)、どこも現地の家族連れやアジア人観光客で賑わっている。
ライスペーパーにプルプルモチモチのライスペーパーを重ね、茹でた豚肉のスライス、モヤシやパクチーをはじめとする香草たちを山盛り乗せて、くるりと巻いてタレに付けて食べる。
このタレ、マムネムというタレがピリ辛で、ヌックマムよりも臭くなく日本の味噌っぽいところもあってホントに美味しい(タレはお土産用で売ってもいる)。
香草と言っても、パクチーはそこまで多くはなく、ノコギリコリアンダー、ミント、シソ、バジル、ドクダミなどたくさんの種類があり、だからといって胃がムカムカすることもなくおなかも満たされるのだ。(なんて健康的!)
ベトナムの人はスタイル抜群の方が多いように感じるけど、その秘訣はこういったヘルシーな食材でお腹を満たしているからなのかな、と思うのは私だけではないはず。
練乳入りのアイスコーヒーは、現地に行っても飲むには勇気が必要だった。普段からブラックコーヒーを嗜む私にとって、コーヒーに練乳を入れるなんて考えられなかった。しかし、ものは試しと、ダナンの街中に店舗があるチェーン店「HIGHLANDS COFFEE」に行ってみると、頭を打たれた感覚だった。
うまぁーーー!
と声が漏れた。ジリジリと体力を奪うダナンの暑さ。ベトナムコーヒーの苦さと練乳の甘さ、たっぷりの氷の冷たさが疲れを癒してくれるのだ。熱中症の危険と隣り合わせの昨今の日本でも、この美味しさは必要だと思う。(このコーヒーショップが日本に上陸することを願うばかり)
そして、何よりも感じるダナンの魅力は、肩の力を抜いて過ごせる街の雰囲気だ。
ダナンの人は皆、ビーチサンダルにTシャツ短パン(もちろん全員じゃないけど)。朝は涼しい時間に散歩をし、暑すぎる昼間は自宅や職場でも体を休める。
声を荒らげることもなく、ベトナム語の優しい響きが耳を撫でる。今のところ、現地で怖い思いもしたことはないし、むしろ皆親切でゆったりとしている。慌てることもなく、急ぐこともない。だからといってそれは不快ではない。
日本では、時間通りになるべくスピーディーに、かつ効率よくやらねばならぬことをこなすことが求められ、それがやりたいことかと聞かれれば首を小さくでも振りたい。
そんな日本人である自分が、「~しなければならない」で生きている自分が唯一、「~したい」で生きられる場所。やりたいことをやり、行きたいところに行きたいときに行き、鳥のさえずりで目を覚まし朝焼けを見て、おなかが空けば美味しいご飯を食べ、眠いときに寝ていい、唯一の場所。
それが私にとってのダナンなのである。
すべてが整ってなくていい。道路に穴が開いてても、食堂が少し汚くても、バイクの排気ガスが強くてもいい。それらこそが愛しい。
コロナという見えない敵に、大好きな旅の機会を奪われ、いつ行けるかわからない旅先のガイドブックを読む日が続く。
いつか、またいつか行けるのなら、私もビーチサンダルにTシャツ短パンで、歩道の落とし穴に気を付けながらのんびりと街を歩きたい。もちろん、早起きをしてサンライズを見よう。暑い日中はホテルで昼寝だ。大好きな香草を山盛り食べ、プールサイドでビールを飲もう。
いつか、いつかまた、自分に帰れる日を願って。
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