こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年10月12日に締め切った、「#私たちは旅をやめられない」コンテスト。たくさんのご応募ありがとうございました!

募集時にクリエイターの方々の作品例を掲載しておりました特集にて、受賞作を順次掲載する形で発表させていただきます。

それぞれの旅への思いが詰まった素晴らしい作品をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。

今回はTRAVELERS賞に輝いた、なつみさんの作品『アフリカの端っこで”自分探し”の旅をする』をご紹介します。

なつみさんには、TABIPPOより「新書籍『僕が旅人になった日』+『365日 世界一周 絶景日めくりカレンダー』」が贈られます。それでは、作品をお楽しみください。

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「3年間会社員して、それでも行きたかったら世界一周行こう!!」大学を卒業した時からの、親友との密かで壮大な約束。

結論から言うと無事、退職し、約7か月間の世界一周旅行を果たした。そしてこの旅の裏テーマは、世界中の海を巡ること。文字通り、世界中のありとあらゆる海を渡り歩く、ならぬ渡り泳ぐ旅。

その中でも、タンザニアにあるちいさな島、ザンジバルは忙しい日本での生活の中でも、突然ふっと思い出してまた無性に行きたくなる。空気を全身で感じたくなる。そんな場所。

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大学を卒業してまずは2年間。がむしゃらに働いて、働いて、働いた。希望していた、旅行業界での営業の仕事。先輩、上司にも恵まれて、充実した社会人生活だった。

それでもやっぱり、世界一周の夢は消えなかった。消えるどころか、旅への思いは日に日にむくむく増大の一途。昔から、何かにのめり込むことが少なかったから、なんでこんなに海外への思いが強いのか、謎は深まるばかり。

でも、こんなにも夢中になれることが見つかって幸せ、とも思った。夢があるだけで人生は何倍にも面白くなる。生きる糧を見つけた!怖いものなし!そんな気分。 

そんなこんなで、あっという間にあと1年で約束の“社会人3年目”というところまできた。そろそろ計画始めなきゃ。急に2人で焦り始めた。

そこからは、毎月2人で“世界一周旅行会議“。どこ行く?何する?いくら必要?何持ってく?そんな時間も楽しかったりするんだけれど、さすがに考えることが多すぎて、爆発寸前。と同時に、わくわくも爆発寸前。

そんな中でも、2人の中で“これだけは絶対外せない!”という旅の目的があった。それが、世界中のいろんな海で泳ぐこと。だから、大きな世界地図の中から、海に囲まれたちいさなちいさなザンジバル島を見つけたときは当然のように、ここ、行くしかないでしょ!と。最高の目的地を見つけた!

訪れるまでは知らなかったが、ザンジバルはヨーロッパからは直通の飛行機が飛んでいるほど有名なアフリカのリゾート地だった。とは言っても、そこはアフリカの国の小さな島。到着した空港は今まで訪れたどの空港よりも小さかったし、空港職員らしきおじちゃんは、吞気にタコのから揚げをほおばっていた。もちろんアジア人は1人もいない。

宿に向かうバンの中から見えたのは、子供たちがバケツに汲んだ水で体を洗っているところ。宿のシャワーは当然のごとく、水しか出なかった。でも、そんなところがさらに私たちの冒険心を駆り立てた。そうそう、これこれ!旅はこうでないと!って。

そしてもちろん、ザンジバルの海は期待通り!いや、予想をはるかに上回る透明度。そして何より、人が全然いない!楽園独り占め!

天国なんて見たことないけど、天国みたい!と思った。

水平線ってほんとにあるんだ、とも思った。

そして、1番楽しみにしていたドルフィンスイム。そう、ザンジバルではイルカと泳げる場所がある。

イルカと出会えるポイントまで船を出してくれるおじちゃんたちはイルカたちの動きを熟知していて、ベストなタイミングで私たちを海に解き放ってくれる。今だ!飛び込めー!って。

毎日の海通いで、こんがり日焼けして、水着の痕がくっきり付き、靴の底には穴が空き、サンダルはすぐに壊れた。服はヨレヨレになり、ウニに刺され、小学生の夏休みよりもわくわくな毎日を過ごした。

でもこんな島で自由気ままに生活してたからすっかり忘れてたけど、仕事してた時はいろんなことに考えを巡らす心の余裕もなかったし、夕日が沈むのを見届ける時間の余裕もなかったな。

出発前は、「仕事辞めて世界一周なんて勇気あるね!」ってよく言われたけど、勇気出して決断したとかは全くなくて。なんで行くの?何しに行くの?もよく聞かれたけど、行きたい場所がありすぎるから、それなら一周しちゃお!って、あほみたいだけどただそれだけ。

ボランティアしながら旅してるひと、目標·目的があって旅してるひと(貧困の人たちを助けたいとか、死ぬまでに何ヵ国行く!とか)ももちろん沢山いて、すごいなあと思ったし、自分もそうありたいと思ったこともあった。だけど、私たちには、行きたい所に辿り着くこと、旅を続けること自体がハードで、常に全力旅!とはいかなかった。

でも出発前の3年間、この旅のために色んなものを我慢して貯金してきたから、頑張って貯めたお金で行きたい所に行く!っていうただの旅好きにも寛容な世界になるといいな。それに海外には、仕事辞めて旅してるっていう人が予想以上に沢山いて、自分たちがマイナーじゃないって実感できてちょっと心が救われた。

旅に出る理由なんて何でもいい。これは何年も前からずっとずっと思い続けてきたこと。でも逆に「君たちは貯めたお金で旅ができてなんて恵まれてるの!」って言われることもいっぱいあった。世界には、その日の生活のためのお金を稼ぐのも精一杯な人が沢山いて、色々考えることもあった。

貧困とか、環境問題とか、ニュースとかで聞いてもピンときてなかった。というか正直、別の世界の、知らないひとたちの出来事だった。でも、「ああこういうことか」って、実際見てみてやっと現実にあるんだって分かった、という感覚。“百聞は一見に如かず”の連続。

ザンジバルでもそれは例外ではなかった。目も開けていられないほど、きらきら光るビーチから5分も歩くと、ごみがいっぱいの路地にたどり着く。子供たちは小さいころから物乞いの仕方は知ってるのに、ごみはごみ箱に捨てるってことは教えてもらわないみたい。

それもそのはず。お父さんは子供たちの目の前で、何のためらいもなくごみをぽーんと道端に捨ててた。そんな日常を目の当たりにして、この美しい島が、たった数日しか過ごしていないこの島が、よごれていってしまうのがなんとも悲しく感じた。

旅はそういう側面も少なからずあると思う。今まで自分とは無縁だった地が、一瞬で自分事になって、その土地やそこで経験したことに特別な感情を抱くようになる。

旅をしていると、何人もの人たちとの出会いと別れの繰り返し。“異文化”の一言では表せられないような出来事の繰り返し。そして、インターネットのつながらないちいさな島での滞在ということも相まって、嫌でも自分の人生について考えさせられた。

だから、「自分探しの旅に出る」というとってもクサい言葉があるけれど、あながち間違ってもいないなと思う。こんなにも、人生とは何か、幸せとは何か、と考えたのは初めて。そして帰国して思うのは、世界はひっろいんだけど、思ったよりはちっちゃくて、身近で、行こうと思えばどこへでも行けるんだな、ということ。

次にザンジバルに行きたくなるのは、仕事に行き詰ったときかもしれないし、人生が楽しくて仕方ないときかもしれない。日常の中で、楽園のような海をふっと思い出したとき、ちょっと遠出してこのちいさな島で感じたいろんな感情を思い出しに行くのだと思う。

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編集部

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