こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年10月12日に締め切った、「#私たちは旅をやめられない」コンテスト。たくさんのご応募ありがとうございました!

募集時にクリエイターの方々の作品例を掲載しておりました特集にて、受賞作を順次掲載する形で発表させていただきます。

それぞれの旅への思いが詰まった素晴らしい作品をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。

今回はWORLD賞に輝いた、有姫 / Yukiさんの作品『心の琴線に触れた、あの夏の旅』をご紹介します。

有姫 / Yukiさんには、マリアナ政府観光局より「molfon マリアナブルーティー+オリジナルグッズ」が贈られます。それでは、作品をお楽しみください。

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私達は何故旅に出るのだろう?思いを巡らせると様々な情景が泡のように浮かんでは消えていく。ネオンが煌めく香港の美食、賑かなバルから溢れ出るスペインの活気、足元に砂漠の熱を感じながら見上げるアラブの太陽…。

そしてふと思い出す。心の琴線に触れた、あの夏の旅。

その国は謎に満ちていた。SNSでは見たことのある、色とりどりのクラシックカーと青い空。チェ・ゲバラの顔が描かれた建物。そうだ、そう言えばこの国は社会主義国らしい。しかもアメリカとは国交を回復してまだ間もない。通貨も現地用と外国人用で分けられていると聞く。

そんな漠然としたイメージを持って、私はキューバへと足を踏み入れた。

キューバの市街地に到着すると、思い描いていた光景が目の前に広がった。石造の少し年季の入った建物に、目に眩しい程に色鮮やかなクラシックカー。潮の香りが時折鼻を掠め、耳にはどこからともなく流れるラテンミュージック。肌がじりじりと太陽に焼かれる気持ちのいい感覚を味わいながら、ヘミングウェイがよく通ったというバーでダイキリを飲んでキューバンサンドを食べた。

最高だ。私が想像していたキューバの夏だった。ーーただ一つ、心に違和感を覚えたことを除いては。

その違和感が何かわかるまで少しの時間がかかったが、次第に視界がクリアになっていった。現地の人たちと私たち外国人で、服装が全く違う。すり切れた短パンを履いた男の子が道端を走っている。少し中心地から離れると、潮風にさらされた建物の壁が朽ち、中が丸見えのまま放置されている。

「観光客にはこんなにも魅力的に映る国で、現地の人々は貧しい生活をしている。」それが、違和感の正体であった。

「現地と自身の出身国の貧富の差」や「観光産業への依存」を感じざるを得ない旅先は、数えられないほど世の中に存在する。でも、キューバは特別だった。社会主義の中で生活する彼らには、勉強しても働いても、個人で豊かになる道がないのだから。

その日の夜のこと、キューバで生まれ育ったという50代くらいの男の人と話す機会があった。昼間に考えていたことが頭を離れず、お互いに少しお酒を飲んでいたこともあってこんなことを聞いてしまった。

「社会主義の国に住むってどんな気持ちなんだろう。どれだけ頑張っても、実力があっても、リッチになることがないって国外に出たいと思ったことはないですか?」

彼は余裕のある表情でこう言った。

「少しのラムと音楽と、愛する人がいて、こうして踊っていられるんだ。これ以上の幸せってあるかい?」

なるほどな、と思った。その訛った英語は私の心にすっと染み渡った。

雷に打たれたような衝撃、とか、カルチャーショック、とかではなくって、すっと心に染み渡ったのだ。確かに、それ以上何を求めるって言うんだろう?

幸せな人生じゃないか。自分の幸せのありかを知っている彼の笑顔は、とても輝いていた。

ーーこれが、私が旅をやめられない理由。

自分の常識が常識ではない、未知の世界で感性が揺さぶられる感覚。

翌日からは青い空がより鮮やかに、潮風がより爽やかに、そして何より、道端で音楽に合わせて踊る人々の笑顔がより素敵に見えた。

いつかまた、太陽が似合うこの国を愛する人と訪れたい。ハバナでゆっくりと流れる時間と、その時間を一緒に過ごせる世界一の幸せを噛み締める、そんな旅がしたい。

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