こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年10月12日に締め切った、「#私たちは旅をやめられない」コンテスト。たくさんのご応募ありがとうございました!

募集時にクリエイターの方々の作品例を掲載しておりました特集にて、受賞作を順次掲載する形で発表させていただきます。

それぞれの旅への思いが詰まった素晴らしい作品をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。

今回はWORLD賞に輝いた、ふっちょさんの作品『韓国・大邱の香りに魅せられて』をご紹介します。

ふっちょさんには、大邱広域市観光広報事務所より「韓方セット(瓊玉膏(ケイギョクコウ)スティック、瓊玉膏石鹸、韓方サシェ)」が贈られます。それでは、作品をお楽しみください。

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5月だった。降り立つと爽やかな空気。ここは韓国、大邱。韓国第3の都市といわれるこの街でどんな一日が待っているだろう。

空港からバスに揺られて、向かう先は半月堂駅。聞きなれない韓国語のアナウンス、注意して耳を澄ませていた。降りる場所の発音は覚えていたが…まさか地元のおばあちゃんにバスで2回も話しかけられるなんて…

おばあちゃんは私の前に座っていた。1回目はカバンを指さして、何かを伝えようとしている。そうこうしているうちに、おばあちゃんがかばんのチャックをしめてくれた。どうやら開いているのを気にしてくれたらしい。

そして今度は、立っている私のかばんを持ってくれた。韓国ドラマで見たアジュンマ(おばちゃん)そのままだった。ありがとうおばあちゃん。なんだか開始早々、文化に触れたよき旅の始まりだった。

と思ったらやってしまった。早速アクシデント。間違えた、降りるバス停を。韓国のバスは次の停留所も言ってくれる。親切なシステムだ。でも、その親切なシステムを上手に使えず、1個前のバス停で降りてしまった。仕方がない。スマホで調べた地図を頼りに目的地に向かった。

途中おいしそうな匂いがした。パン屋さんだ。レジのおばちゃんがにこにこしている。オディエソワッソヨ?(どこから来ましたか?)と聞かれ、イルボネソワッソヨ。(日本から来ました。)と答えた。

なんだか相手の国の言葉で言えて、しかも返ってくるなんて嬉しい。そのあともにこにこ話しかけてくださったから、全然聞き取れないけどなんだか嬉しくてにこにこ相づちをうってしまった。

あんぱんとコーンパンを注文するともうひとつサービスしてくれた。あたたかい。パンも人も。

突然起きる出来事も、偶然から繋がる人とのコミュニケーションも、私を、旅人を、良き思い出として再び引き寄せてくれる。だから旅行は何度も行きたくなるんだなあなんて。

半月堂駅につくと、なんだか賑やか。それもそのはず、今日は薬令市韓方祭り。松の門を通ると韓方薬材の香りが辺りを包んでいる。屋台がたくさん出ていた。うちの近くではこのようなお祭りは無いなあ。

後から情報を得たのだが、2020年になって韓方のテーマパークができたとか。もう一度大邱を訪れたら行ってみたいな。あのちょっとだけ、鼻がすーっとするような匂い忘れられない。

進んでいくと、老舗チキン店があった。なんだか懐かしい感じのするドアを、勇気を出して開けてみた。またまたなんだか懐かしい銀色の丸いテーブル、イス、そして香ばしい匂い、大きな鍋でパリパリとチキンを揚げているおばちゃんが私を迎えてくれた。

私は、つたない韓国語でフライドチキンとヤンニョムチキンを注文した。地元の人がひっきりなしに来る。人気店なんだな。そんな地元の客を5,6人見届けるとようやく私の注文したチキンが届いた。温かい出来立てだ!私は一度ホテルに帰り、チキンを食べた。

ちょっとニンニクの味がして、甘いんだけど辛い、そしておいしい!の後にもう一度辛い!がくる。ああ韓国、大邱に今私はいるんだ。チキンを食べて改めて感じる。そうそう、7月には大邱はチメクフェスというのがあるらしい。チキンとビールいいなあ。あのチキンが何種類も食べられるなんて。次行くなら7月かなあ。

もう一度薬令祭りの通りを抜けていく。すると大きな教会がある。旧第一教会だ。近くまで行ってみよう。高さがある。近くに行くと、すごい存在感。顎がこれ以上上を向けない。私はてっぺんまで写真におさめたいのに!!なんとか写真におさめることができた。

そして、3.1運動階段を降りるときに、キンモクセイに似たような香りがした。そよそよと風が吹くと、ほんの少し甘い香りがする。近くに白くて長細い花がついている木がたくさんあることに気が付いた。しかも満開。私は見たことが無い。これはなんだろう。調べてみると。ヒトツバタゴという種類らしい。

教会を背にして、この甘い香りとともに私は進んでいった。大邱の旅では一番にこの道を思い出す、この香り忘れられない。

だんだんと日が落ちていき辺りは夕方。まだまだ行きたいところがたくさんある。ここからは距離があるけど、どうしても行きたかったのは金光石通り。25分くらい歩いた。途中コプチャンを焼くお店が並ぶ。地元の人でにぎわっていた。

いよいよ、金光石通りについた。私は、銅像の前で写真を撮る。懐かしいフォークソングのような歌が流れている。昔を振り返る韓国ドラマで聞いたことあるような歌だった。

ここだ!すごい!!結構歩いたけど来てよかったなあ。内装も外装もかわいらしいカフェだったり雑貨屋だったり服屋だったりが軒を連ねている。私は木目調のスピーカーを買った。ティッシュボックスくらいの大きさ。ギターの模様が印字されていて一目ぼれだった。

大邱の有名なカフェで休憩。イチゴショートケーキとアメリカーノを注文する。イチゴの発音が難しかった。タルギ、のタで噛んでしまった。通じて安堵する。私は2階のテラスに腰を下ろした。キムグァンソクさんの銅像と、歌の広場が見える、きれいな壁画もある。そんな景色を全て視界に入れられるこのカフェの2階は最高だった。

ケーキは生クリームとスポンジがふわっとフォークにささる。いちごの酸味が、5月の風と協力していい感じのシチュエーションになってる。本当においしい。至福の時間だった。

大邱の人の温かさ、そして歩きながら感じる心地よい初夏の風、香り。澄み渡る青い空に揺れるヒトツバタゴの花。活気に溢れている市街、だけど急いでいないゆっくり流れるような雰囲気。あれは大邱にしか出せない魅力だ。

年経っても忘れられない大邱。もう一度私はあの場所へ行きたい。

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編集部

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