こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年10月12日に締め切った、「#私たちは旅をやめられない」コンテスト。たくさんのご応募ありがとうございました!

募集時にクリエイターの方々の作品例を掲載しておりました特集にて、受賞作を順次掲載する形で発表させていただきます。

それぞれの旅への思いが詰まった素晴らしい作品をご紹介していきたいと思います。ぜひご覧ください。

今回はWORLD賞に輝いた、真っ白なグレーさんの作品『旅に出たい。』をご紹介します。

真っ白なグレーさんには、大邱広域市観光広報事務所より「蓮根セット(蓮根チップ×2、蓮根茶、蓮根葉茶)」が贈られます。それでは、作品をお楽しみください。

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私は旅が好きだ。特に海外旅行が。今まで行った国はそれほど多くないけれど、行きたい国は無限にある。

旅は常に危険との隣り合わせである。特に海外となると、土地勘の無い場所、日本より治安の悪い土地、言葉の通じない国……。それでも、好奇心にしたがってまだ見ぬ世界を見に行くことは、私にとってとてつもなく楽しいことだ。

ここでひとつ、今までの旅の中で一番焦ったエピソードについて書きたいと思う。

2年ほど前に友人と二人で台湾に行ったときのことだ。私と友人はこれよりも前に、それぞれ家族旅行で台北を訪れたことがあった。だから、このときは台中まで足を伸ばすことにしていた。

台北から台中まで台湾の新幹線で行き、お菓子で有名な宮原眼科で買い物をし、その系列店でインスタ映えするアイスクリームを食べた。そのあと台中国家歌劇院に行って、その面白い建築に酔いしれた。

これがそのアイス。インスタ映えするけど、私には写真の才能が無いので映えなかった。

そして台中観光の最後に、私たちは彩虹眷村に行くことにした。彩虹眷村は、レインボービレッジとも呼ばれていて、一人のおじいさんが絵を書いて作り上げた小さな小さな村である。台中では有名な観光地、だと思う。

私たちはポケットWiFiを借りておらず、ガイドブックも持っていなかったので、公共のWiFiやホテルのWiFiだけを頼りに旅していた。だから、事前にホテルで調べた情報をスクリーンショットしておき、それにしたがって駅からバスに乗りこんだ。

バスに乗り込んで私は一つの違和感を覚えた。バスがあまりにも空いているのである。台中という、台北よりはマイナーな場所ではあるが、多少なりとも観光地行のバス。2,3組の観光客はいるはずである。でも、明らかに地元民のおばあちゃん2人しか乗ってこない。この違和感を抱えたまま、バスは出発した。

少し走って違和感が本物だと気がついた。調べたバス停の流れと違うのである。それを友達に伝えて、下車のボタンを押した。このぐらいなら駅に歩いて戻れると思ったから。でも、ローカルルールなのであろうか、バスは止まってくれない。どんどんバス停を過ぎていく。やばい、どうしよう。そんな焦りだけが募っていった。

私は意を決して、信号待ちのタイミングで運転手さんのところへ走った(皆さん、バスの中は危険なので走らないでください)。中国語も英語もできない私は、スマホの画像を見せて「ここに行きたいんですけど、合ってますか!?」というジェスチャーを全力でやった。そしたら運転手さんは「あ!それ違う!そのバスはこれじゃなくて、反対のやつ!!」と焦った感じで伝えてきた。

それは確か中国語だったと思うけれど、表情やジェスチャーからそう読み取った。たぶん間違ってないと思う。運転手さんは、ここで降ろしてあげるから反対車線のバス停からバスに乗りなさいと言って(これも推測)、私たちを降ろしてくれた。

台中の見知らぬ街に降ろされた私たちは、反対車線のバス停を探した。しかし、見つからなかった。そして、絶望した。もう日本に帰れないのではないかと思った。冷静に考えればそこまで絶望しなくても大丈夫なのだろうけれど、知らない場所で迷子になった私たちはとにかくパニックだった。

そうしてとりあえず来た方向へ歩いていたら、一台の黄色いタクシーが止まった。タクシーの運転手は「どうしたのか」というジェスチャーをしてきた。私は「ここに行きたいんです!!」と必死に伝えると、むこうは連れて行ってあげるという雰囲気を出してきた。

失礼ながら、私はこの人を本当に信用していいのかわからなかった。迷っている外国人なんて、ぼったくるには最高な奴らである。でも私たちにはこの人を頼るという選択肢しか無かった。これで何か犯罪に巻き込まれても、迷子になったのがいけないのだ。そう思うことにして、私たちはタクシーに乗り込んだ。

数十分すると、彩虹眷村らしき場所が見えてきた。そして、普通の料金を支払い、「謝謝」と言って私たちはタクシーを降りた。そこには観光客がいっぱいいた。

ここに来れたときの安心感たるや…

これが、今までの旅史上一番焦った出来事の一部始終である。そして、これは人の優しさを感じた出来事でもある。バスの運転手さんは一緒に焦ってくれたし、タクシーの運転手さんは明らかに迷って絶望している外国人を心配して車を停めてくれたのだろう。

現地の人の協力なくして、私たちが彩虹眷村にたどり着くことはなかった。これは台湾の人の優しさに触れた、苦くも甘い思い出である。あの焦りを思い出したくはないけれど、とても大切な経験をしたと思っている。

旅は、嫌でも現地の人と関わる出来事である。お店に行けば店員さんと、バスに乗れば運転手さんと、ホテルに行けばスタッフさんと。必要最低限にしても、これぐらいの人とは関わることになる。そしてこのような現地の人との関わりこそが、旅の面白さであると私は思う。

旅に出ると、その土地の雰囲気を人を通して直接感じられる。アメリカに行ったときには、図書館の警備員さんが私の持っていたチーズケーキの袋を見て「そのチーズケーキは僕が食べちゃうよ!」とユーモアを交えて話しかけてくれた。

日本で図書館の警備員さんがこんな風に話しかけてくることはほぼ無いからとても驚いてしまったが、このユーモアはアメリカの雰囲気そのものだなぁと感じた。つまり、こんな些細なやり取りもその旅、場所を象徴するものになり得る。

この投稿の最初の方で「好奇心にしたがってまだ見ぬ世界を見に行くことは、私にとってとてつもなく楽しいことだ。」と述べた。もしかしたら、私は旅を通してまだ見ぬ世界だけでなく、まだ見ぬ人に出会いに行っているのかもしれない。

ああ、もっと多くの人に出会うために、早く旅に出たい。これが今の私の率直な想いである。些細なやり取りで構わない。マスク無しで、その土地の人々の表情をダイレクトに感じて、少しの関わりを持ちたい。

そしてもしまた台中に行くことになったら、ちゃんと合ってるバスに乗って、彩虹眷村のバス停で降りて、運転手さんに心からの「謝謝」を言いたい。

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