こんにちは、TABIPPO編集部です。2020年9月14日(月)から2020年10月12日(月)まで「#私たちは旅をやめられない」コンテストを実施しています。

応募媒体は「note」。指定の#タグと共に、自由な表現で “海外への旅” への思いを投稿いただくコンテストです。

同時に、クリエイターによる作品とコンテストの受賞作を掲載する特集もスタート。様々な表現での、それぞれの思いをぜひご覧ください。

今回は、編集者、ライター、フォトグラファーとさまざまな活動をしている伊佐知美さんの作品をご紹介します。

伊佐 知美
三井住友→講談社→Wasei『灯台もと暮らし』編集長を経て、現在フリーランスの編集者。学生時代に日本一周、20代後半、30代で世界を二周。旅が好きすぎて3〜4年間ほど家なし放浪、カナダ、マルタ、フィリピン、スコットランド語学留学、1年間の世田谷旅人シェアハウス運営を経て、現在Based in 沖縄。オンラインコミュニティ「#旅と写真と文章と」「#EnglishChallenge」主宰。 フラワーカンパニー「BOTANIC Inc.」、写真から始まるライフスタイルを提案する「CURBON」編集者を兼任。著書に『移住女子』。世界中のテキスタイル収集と花、noteを書くのが好き。総フォロワー数は7万人くらい。

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遠く遠く、できればまたどこかへと旅をしたい気持ちが、定期的に襲ってくる日常。「前からそうだったじゃない」と言われたら、そんな気もしてくるけれど、「こんな風に気軽に旅に出られない世の中になる」なんて、考えたことがなかったんだもの。

「どこへ旅に出たいの?」と問われたら、「選べるなら南へ」と答えるだろう。

これから北半球は、冬を迎える時間がやってくる。南半球へ逃れてしまえば、季節はまったくの逆になるから、「これから夏」がもう一度味わえる。

私はずっと、そうやって夏を追いかけるように旅をして生きてきた。

photo by Shigeki Naganuma
2020年、世界が少しずつ、じゃない、ガラガラリとひどく音を立てながら、変わっていった時間を過ごしてきた私たち。

その中で、キラリと光る南半球の国がひとつあるように感じていた。ニュージーランド。

photo by Shigeki Naganuma
景観の魅力はもとより、オーガニック・エシカルという言葉が世に浸透するずっと前から、「自然とともに生きること」を暮らしに溶け込ませてきた美しさを持つニュージーランドには、「Tiaki(ティアキ)」という言葉があるそうだ。

先住民マオリの言葉(マオリ語)で、「環境や人々を守る」という意味を持つ。

すべての文化を抱きとめること-“manaaki manuhiri”
すべての人を家族のようにもてなすこと-“whanaungatanga”
すべての人、土地、風土を護ること-“tiakitāngata, tiaki taiao”
100% Pure New Zealandメッセージ動画より)

「自然を敬い、すべての人と大地を護り、すべての訪問者を歓迎・もてなし、家族のように大切にする」。先住民・マオリの哲学を今も抱きしめて生きるニュージーランドを、そういえば以前、一度旅をしたことがある。

混沌とし続ける世の中、信じられるものは何だったか?をどうしても考えてしまうような今の時勢において、「本当に大切なものは何か?」の答えを持っているような気がする国。だから、今、強く思い出してしまうのかしら。

photo by Shigeki Naganuma
北島と南島、ニュージーランドを旅するひとはみな一様に「北と南どちらへ?」と聞くけれど、旅の当時、私は迷うことなく、「まずは南へ」と飛行機に乗った。

目的は、ただひとつ。世界で一番、星空が美しいと囁かれるテカポ湖をひと目見るためだった。

水色に光る湖の横を、異国でひとり車を借り、一週間ほどずうっと車中泊をしようと決めて旅に出た。道のり数百キロのソロドライブウェイ。

photo by Shigeki Naganuma
どこまでも続いてゆく大自然の中を、ぽつん、と小さな車で進んでいく。

12月は、テカポ湖のまわりに咲くルピナスが、満開になる季節と聞いて、夏の始まり(ニュージーランドは南半球に位置する国なので、日本とは季節が逆)を狙いすまして南島の土を踏む。

photo by Tomomi Isa
道中、ホテルには一度も泊まらなかった。素敵な部屋も、豪奢なインテリアも、私たちの旅を助けてくれる文明も大好きだけれど。

陽が昇って沈んでゆく、湖が流れる音しかしない、映画の舞台のようにきらめく山々の合間を、ひとり旅する幸せを噛み締めたくて。

ニュージーランドの人が休日によくするような、自然公園やホリデーパークに車を停めて、キッチンやシャワーを共同で使いながら、車中泊が気軽に楽しめる「お手軽キャンプ気分」を味わう時間を、私もやってみたかった。

それはいわゆる「キーウィ(Kiwi)」の体験。ニュージーランドのひとは、故郷を愛す気持ちを込めて、自分たちのことをキーウィと呼ぶらしく。

photo by Tomomi Isa
何も特別じゃない。スカイダイビングをしたわけでも、素晴らしい遊園地に遊びにいったわけでもない。ローカルのスーパーに立ち寄って買い出しをして、夕陽を見ながら湯を沸かして、焙煎したてのコーヒーをドリップして。

ニュージーランドで育った野菜を食べて、キーウィの人たちの笑顔ややさしさを日々少しずつおすそ分けしてもらいながら、それぞれの土地で、それぞれの誇りを少しずつだけでもかじったり、自然のリズムと一緒に生きたりしてみただけ。

何もスペシャルじゃなかった、はずなのに、その旅の数日は、たしかに私の中に「楽園のよう」という、忘れられない記憶と体験を残したの。

旅をした先の場所で、暮らすように旅をする。土地のリズムやルールに身を浸して、ローカルの人々と他愛ない会話をする日々というのは、「今後の旅のあるべき姿」なんじゃないかと思うし、私はそうあってほしいと願っている。

そういう旅が、次の旅の求められるスタイルになったらいいし、できたらもう一度、私もニュージーランドをそんな風に旅したい。

photo by Shigeki Naganuma
次は、北島。そうだ、あのときは、ニュージーランドで暮らす誰かに会う、ということをしなかった。今度行くときは、誰かに会いに行けたらいい。

たとえば、世界中を旅し続けた友人が、最終的にニュージーランドで暮らすことを選んだ理由を知りに行くような。そこでの暮らしぶりを丁寧に聞いて、一緒に学んでゆく時間を過ごせるような。

そうしたら、その時は彼の中にマオリの精神を感じたりするのかしら。

サスティナブルや、エシカルというような、今世界中で注目されるワードの根幹は、きっとニュージーランドに根付く「Tiaki(ティアキ=環境や人々を守る、という意味のマオリ語)」の中に在ると思うから。

南半球の海に、いまさらに堂々とした存在感を持って浮かぶあの島国へ。近い未来、こんな時代だからこそ、出会いたいコトやモノ、人々を探しに、いま再びの旅ができたらいいなと思いながら生きている。

photo by Shigeki Naganuma

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「#私たちは旅をやめられない」特集でその他の作品も掲載中!


「#私たちは旅をやめられない」特集では、コンテストの概要、旅を愛するクリエイターの作品、TABIPPOメンバーの作品、そしてコンテストの受賞作を、継続的に公開していきます。

受賞作の発表までは、様々な表現の作品を掲載していきますので、ぜひ応募の参考にしてくださいね。コンテスト概要はこちら

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編集部

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