こんにちは!トラベルライターの土庄です。日本国内の旅行が、これからどうなっていくのか、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
外国人観光客(インバウンド)の増加、宿泊施設の予約単価の上昇、旅行業界における人材不足、さらには日本人の実質賃金の低下など、さまざまな要因が国内旅行市場に影を落としていることも否めません。
これによって旅行が贅沢品となり、行きたくても行けないという状況が現実味を帯びつつあります。しかしそんな状況でも、旅を諦める必要はないでしょう。
今回は、国内旅行が直面する課題を整理しつつ、これからも旅を楽しむためのヒントや可能性について提示したいと思います。厳しい時代であっても、かけがえのない旅を楽しんでいきたいものです。
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インバウンドの増加とオーバーツーリズム
photo by Unsplashコロナ禍の収束に伴い、航空便が急速に回復しました。これに加え、かつて進行した記録的な円安が追い風となり、日本を訪れる外国人旅行客(インバウンド)の数が急増しました。
東京近郊、大阪の難波エリア、そして京都駅周辺といった人気観光地では、宿泊施設の稼働率が著しく上昇しており、全体の8割以上をインバウンド客が占める施設もあらわれている状況です。
photo by Unsplashすでに国内のレジャー需要が高い地域では、インバウンド客の増加によって観光客がさらに押し寄せ、オーバーツーリズムの状態に陥っており、観光地に暮らす住民の日常生活に大きな影響を与えています。
たとえば、公共交通機関の混雑、施設やインフラの過剰利用、騒音やごみの増加などが日常化、生活環境が悪化するといった問題です。
近年稀に見るほどの宿泊単価の大幅上昇
photo by Yuhei Tonoshoインバウンドの増加に加えて、近年、物価や人件費の上昇が都市部や主要なリゾート地の宿泊施設に大きな影響を与えている側面もあります。
とくに、光熱費や清掃費といった運営コストの増加が、宿泊料金の上昇を引き起こしており、これにより宿泊施設の予約単価の高騰が続いている状況です。
インフレによる影響で、かつては手頃だった宿泊料金が、今や多くの旅行者にとって高額に感じられるようになっています。さらに、金曜や土曜といった週末の宿泊料金は、平日と比べて大幅に高く設定されるケースも少なくありません。
photo by Yuhei Tonoshoこのため、以前のGOTOトラベルや全国旅行支援といった割引キャンペーンを利用していた時代と比べ、宿泊料金はかなりの高水準に達しており、とくに週末にはその差が顕著です。
結果として、かつては同じ予算で2~3回の旅行が可能だったのに対し、現在ではその予算でようやく1回の旅行ができるといった状況が生まれつつあります。
このような変化は、旅行者にとっての経済的な負担を増大させる一方で、旅行回数の減少や宿泊日数の短縮といった傾向も見られ始めています。
日本人の旅行離れの懸念も。実質賃金の低下
photo by Yuhei Tonosho日本の旅行業界にとって、インバウンドは外貨をもたらす重要な潜在顧客層です。しかし、国内の旅行市場を長年支えてきたのは、国内の旅行者であることも忘れてはなりません。
旅行費用の上昇によって、手軽に旅行に行きづらい環境が生まれるなか、旅行から遠ざかる人々が増えてしまう可能性が懸念されます。
その主な要因として考えられるのは、実質賃金の低下でしょう。旅行は娯楽として位置付けられており、家計において食費や住宅費などの生活必需品に比べて優先度が低くなるのは自然なことです。
photo by Yuhei Tonoshoさらに、社会における貧富の差の拡大は、子供の教育における体験格差を広げる可能性も。体験格差とは、習い事や旅行といった学校外で得られる貴重な経験の機会に差が生まれてしまう状況を指します。
旅好きの方々であれば、旅がどれほど自己成長や自己理解に役立つかについて共感いただけることでしょう。このまま旅行業界を取り巻く外部環境が変わらなければ、日本人による国内旅行市場が衰退してしまうリスクも否定できません。
より深刻化している人材流動性の問題
photo by Yuhei Tonoshoこれまで旅行業界を取り巻く外部の影響について主にお話ししましたが、一方で、宿泊施設や観光地での人材不足も大きな問題となっています。
旅行業界に属する多くの事業者はサービス業にあたり、長時間労働が求められる一方で、給与が低いことが長年の課題でした。
さらに近年では、転職が一般化してきた時代背景や、オーバーツーリズムによる受け入れ側のキャパシティオーバーといった状況が重なり、人材の流動化が一層進んでいます。
photo by Yuhei Tonoshoその結果、新卒で入社した人材がマネジメント層として成長する前に退職してしまうケースが増えており、現場のオペレーションに支障が出るケースも出てきているのです。
この問題に対応するため、給与などの人件費を引き上げる動きが見られますが、その結果として、宿泊施設の予約単価が上昇し、旅行者にとっても負担が増している状況には、何だか歯痒さが感じられるのは筆者だけでしょうか。
旅行が手軽に行けるものではなくなる?
photo by Yuhei Tonoshoこれまでのお話を振り返ると、国内旅行に関してはややネガティブな状況が見え始めているように感じられるかもしれません。旅行がこれまでのように手軽に楽しめなくなってしまうのでしょうか?私は必ずしもそうとは思いません。
従来のような消費型の旅行や娯楽としての旅行は厳しくなってくるかもしれませんが、現地の魅力に触れたり、経験や学びを深める旅、すなわちTABIPPOが提唱する「あたらしい旅」は、旅行者の姿勢や意識次第で、これからも十分に楽しめると考えています。
photo by Yuhei Tonoshoむしろ、これまで娯楽(レジャー)としての文脈で語られてきた旅行を見直し、再定義する良い機会になるのではないでしょうか。旅を今後も人生のなかで大切なものと位置付けるために、家計と同等に扱えるほどの価値を社会全体で認識できるよう、ブレイクスルーを起こせたら良いなと考えています。
それではこのような厳しい状況のなかで、いかに旅を楽しむことができるのか?その細やかなヒントや可能性をいくつか提示してみましょう。