ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは!トラベルライターの土庄です。季節は8月直前、もう夏本番ですね。

夏といえば、どんな旅が思い浮かぶでしょうか。

筆者がまず思い浮かべるのは、大学時代の夏に約10日間かけて行った北海道自転車旅です。7年前という昔の旅ではあるのですが、今でも臨場感たっぷりに当時の情景が思い起こされます。

今そして振り返ってみると、そんな学生時代に挑戦した自転車旅が、今の私にもつながるいい影響をたくさんもたらしてくれたのでは?そう気づくことができました。

今回は学生さんこそチャレンジしてほしい、社会人になっても生きる”自転車旅の魅力”をご紹介したいと思います。

忘れられない北海道自転車旅


学生時代の旅の集大成と言える「北海道自転車旅」。新日本海フェリーで小樽へ入ったあと、北海道の内陸を一周する総距離約1,100kmのコースを走りました。

学生なのであまり予算はなく、宿泊は1泊500円〜1,000円で1泊できるライダーハウス(二輪旅人用の格安宿)を選択。台風がやってきて、交通網の麻痺や向かい風も立ちはだかり、波瀾万丈な旅路ではありましたが、なんとか走り切ることができました。

・灼熱の蒸し風呂のような部屋に泊まった「岩見沢」
・どこまでも美しい丘の風景が続く「美瑛」
・あと1日遅ければ通行止めで通れなかった「層雲峡」
・ライダーハウスの宿泊者同士で意気投合した「網走」
・今はない忘れられないライダーハウスに宿泊した「屈斜路湖畔」
・立ち寄ったスポットで財布を忘れるも、奇跡的に戻ってきた「標茶」
・小学生のころの思い出の地・アイヌ民族博物館(現・ウポポイ)を再訪した「白老」


など、各地では数えきれない思い出も。同時に、自分の身体ひとつで北海道の大自然と対峙しながら、果てしなく雄大な景色の中を駆け抜けた臨場感が、今でも強く脳裏に焼き付いています。

自信のもてる成功体験


ここからは、学生さんにおすすめしたい、社会人になっても生きる”自転車旅の魅力”についてご紹介します。

まず1つ目は「自信のもてる成功体験」です。

人生において、大学生から社会人へのステップアップは変化が大きく、そして人生にも大きな影響を与えます。就職して最初は、目の前に起きること一つひとつをストレートに受け取りやすく、悩みが生じることも多いかもしれません。


周囲の方々からのアドバイスは嬉しいものの、そのアドバイスに身を委ねすぎていると、自分を見失ってしまうことも。これは私の経験談でもあります。そんなとき、自分が心からやり遂げたと自信のもてる成功体験は重要です。

自転車旅では悪天候や機材トラブルなど、さまざまな壁が立ちはだかります。自ら考え、行動し、その壁を乗り越えた経験は、辛いときこそ自分を支える糧になってくれるのです。


また目の前の道に食らいつき、心身ともに限界を迎えながらストイックに走り切ったという経験も大きいです。

「あのときの辛さに比べれば、今の辛さなんて大したことはない」「自分は何度も壁を乗り越えてきた」といった思いが、切実な状況に直面しても、しっかりと受け止め、前進し続ける姿勢をもたらしてくれます。

自分に素直に生きる大切さ


2つ目の魅力は「自分に素直に生きる大切さ」です。私のなかで忘れられないのが、先述した北海道自転車旅の7日目、帯広のライダーハウスでの出会いでした。

二輪乗りの交流の場でもあるライダーハウスには、学生から社会人、定年退職したシニアまで、たくさんの方が集まります。中には、長期間旅をしている方に出会うのも、それほど珍しくありません。


そのなかで、若々しい20代後半の方が、仕事を辞めて今は半年以上、北海道をあてもなく旅をしているとおっしゃっていました。それまで仕事をせずに暮らすことにネガティブな印象を抱いていた私ですが、その印象が大きく払拭されることになります。

「どんな方にも気さくに話しかけ、盛り上がれる。笑顔が素敵で、こんな人情味のある方が、自分の心の声に従って、自由に決断しているんだ!」と、自分に素直に生きる潔さや輝きを垣間見た気がしたのです。


多様な価値観に触れることは「自分は何を大切にしたいのか?」「何のために頑張るのか?」という大切なことを考えるきっかけになる気がします。いつまでも自分に素直でありたいなら、旅こそが最良の学びの場です。

選択して泥臭く走る力


3つ目の魅力は「選択して泥臭く走る力」ではないかと思います。旅全般にも言えることかもしれませんが、自転車旅は選択の連続です。

「どの場所に行くのか?」「どの道を選ぶのか?」「その道を走るとき、どれだけの時間と体力が必要か?」など、さまざまなことを考慮しながら計画を練っていきます。

そして、あらゆる可能性をシュミレート&取捨選択してオリジナルの旅を作り込んでいくのです。ここに1つ目の学びと経験があります。


一方で、いざ旅に出てみると、計画通りに進むことはほとんどありません。時間配分や体調が思い通りにいかないことも多く、悪天候や機材トラブルといったアクシデントに見舞われることも。そのたびにいつも「どのように対処するのか?」と選択を迫られます。


悪天候の場合「進路を変えるか?」「輪行(自転車を専用の袋に入れて公共交通機関で運ぶこと)を活用して目的地へ行けないか?」「腹を括って走るのか?」などが考えられるでしょう。そして一つ決めたら、”ゴールするまでやり切る!”と泥臭くやる大切さも、自転車旅は教えてくれるのです。

いつまでも若々しさの源に


最後の魅力は、旅が「いつまでも若々しさの源になってくれる」ことです。これは一つの旅を指して言っているわけではなく、旅が習慣化されることで実現されます。

その具体的な例こそ、まさに自分です。私は、先述した北海道自転車旅のなかで自分の殻を破ったことで、旅への情熱と行動力が開花しました。


学生の最後で自転車旅の習慣が身につき、社会人になった後も、土日休みと有給休暇をフル活用して、日本各地に旅へ出るようになります。そのなかでよく言われるのが「あなた大学生?」という(最高の褒め)言葉です(笑)。


もう30代に突入した私ですが、いまだに少年のように瞳は輝いているので、そのように言っていただけるのでは?と思っています。いずれにしても旅をしている方がバイタリティ溢れ、若々しいのは共通項ではないでしょうか。

いつまでも自分のしたいことを継続し、行きたいところに行き、希望に満ち溢れた人生を歩んでいく。これほど有意義な趣味は、旅をおいて他にないと思います。

学生時代こそ挑戦したい自転車旅


今回は私の経験も踏まえて、自転車旅の魅力や人生への影響について語ってみました。大学生の4年間、長いようでとても短い時間です。

よく”後悔しないために”という議論がなされますが、せっかくなら”これから生かすために”という前向きなベクトルで考えてみてください。


きっと、ふとした挑戦が人生で大切なものを見つけるきっかけになってくれることでしょう。

私がそうであったように、自転車旅で自分を変えるきっかけをつかむ方が一人でも増えたら嬉しいです。

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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