ドライバーの青年は、「ついて来て」と荒地に入って行きます。私が後をついていこうとすると、後ろから別の少年が来て、ドライバーの青年を呼び止めました。
未完成のオベリスク(上)
どうやら(チップ目当てで)、私のガイドをしたいようです。少年の村なので、そういわれると青年も断れないのでしょう。少年についてってくれと、私に頼んできました。私は土地の習慣を受け入れ、少年について行くことにしました。
結果的にはそれでよかったです。英語は片言でしたが、少年の村の中を見せてもらうのは楽しく、少年も自分の村を外国人に紹介しているのが誇らしいようでした。
村を通り過ぎると、岩場を上って行きます。少年の友達と思われる、さらに小さい少年たち(5〜6歳)も、いつの間にか加わっています。
ライオン像との遭遇
photo by KM777
いったいどこまで行くのでしょうか。すでに30分も歩いています。「ライオン像がみたいのは分かっているよね」と念を押すと、行く手を指を指すのでたぶん大丈夫でしょう。
ひときわ大きな岩にたどり着き、裏手に回ると、ライオン像はありました。鬣がないのでライオンじゃなくてピューマかもしれません。
体長1.5mくらいでしょうか。彫像や銅像ではなく、レリーフでしたが。ライオンの口元に、放射線模様の入った大きなボールのようなものが描かれています。「これは何?」と少年に聞くと、少年は間髪入れずに「ブレッド(パン)だよ」と答えました。
パンにしては大きいけど、自信満々に答える少年がほほえましく思いました。考古学者ならきっと、王の権威を高めるような神器の一種とか言いそうですが、考古学者の説だって推論にすぎず確証はないわけです。誰も本当の意味をしらないのだとしたら、正解がパンでもいいような気がしました。
いったいどれだけ古いものなのか、少年の口からは聞けなかったけれど、日本だったら確実に博物館に保管するか、屋根を付けて風化から保護しようとするに違いありません。
村の奥の岩場で、古代の謎と向き合うシチュエーションがなんだか気に入り、いい気分でチップを渡して空港に向かいました。
もし、アクスム観光で時間が余ったら、ゴバデュラ遺跡に是非寄ってみてください。
村に入れば子供たちがきっとあなたをガイドしてくれることでしょう。そして、ライオンの口元にあるボール、あなたには何に見えるでしょうか。