編集部

広告代理店の企画、出版社の書籍編集を経て2016年に企画・編集・ライターとして独立。ワタリドリ製作所の屋号で、書籍の執筆・編集、複数の企業のメディア運用に関わる。 東京都観光まちづくりアドバイザーとして、国や県庁のインバウンド事業の仕事をしていたときにTABIPPOに出会い、2023年春からジョイン。 大学生の頃から、世界各地を一人旅しては、陸路での国境越えをすることに情熱を捧げていた。現在は自然豊かな多摩エリアで、エネルギーの塊みたいな小学生男児2人の育児に奮闘中。街歩きとおいしい物と温泉が好き。 著書:『世界の絶景1000』(英和出版社)共著、『石の辞典』(雷鳥社)

トルコを旅するとなると真っ先に思い浮かべる観光地は、イスタンブールかカッパドキアだと思いますが、もっとローカルな雰囲気や遺跡を満喫したい人におすすめなのは、南東アナトリア地方です。


▲トルコは全部で7つの地方に分かれています(トルコ共和国大使館 文化観光局より提供)

世界遺産が多く集まる場所として、遺跡マニアの間ではじわじわと人気が出ています。今回は南東アナトリア地域地方でおすすめの世界遺産をご紹介します。

ネムルート山の頂上にある秘境、ネムルート遺跡

南東アナトリア地方の世界遺産を巡る旅として外してはいけないのが、ネムルート遺跡。ここは「遺跡×自然」の絶景が見られる希少なスポットとして、遺跡好きの間では密かな人気があります。

個人旅行として訪れるには少しハードルが高いので、ツアーで行くのがおすすめです。
ネムルート遺跡は、ターキッシュエアラインでイスタンブールからマラティアまで約2時間のフライト。そこからネムルート山までバスで約3時間かかります。

▲蛇行しながら山肌を登っていくと、途中から岩山のような光景に変化していく

▲道中はとにかく風が強いので、ウインドブレーカーで行くなどの防寒対策はマスト
ネムルート山は途中から道が細くなるので、大型バスからミニバスに乗り換えて、さらに山頂付近まで進みます。そこから遺跡がある場所までは徒歩で向かうこと約10分。周りに遮るものが一切ないため、吹きっさらしの強風の中を進むことにはなるのですが、それだけの大変な思いをしてでも行く価値は十分にあると思います。

▲標高2,134mに佇む遺跡群は夕陽に照らされて神々しく輝き、ハッと息を飲む美しさ
紀元前1世紀に建立されたネムルート遺跡は、王族が眠る墳丘です。ギリシャ、ペルシャ、アナトリアの文化が融合された独創的な建造物で、1987年に世界遺産に登録。ここは夕陽が沈む時刻に合わせて訪れると素晴らしい景色を見ることができます。日没に合わせて遺跡群の輝きが刻一刻と変化していく様は、一瞬たりとも目が離せません。

▲美しい夕陽に目を奪われる参拝者たち


▲山頂から登ってきた道を眺めてみました。昔の人はここを徒歩で登ってきたそう

アナトリア初の都市国家遺跡であるアルスランテぺ


▲入口には2頭のライオンと王の像のレプリカがある

マラティアの中心地から約7km離れた場所にあるアルスランテぺは、2021年に世界遺産に登録されたばかりの遺跡です。かつて丘の上に2頭のライオン像があったことから、トルコ語で「ライオンの丘」という意味があるのだそう。

紀元前5,000年頃の後期銅器時代から紀元前712年のアッシリアの征服まで都市国家だった場所で、ユーフラテス川の水源を活かして農耕が盛んだったようです。神殿や排水路のある宮殿、金属製の道具のほか、遺丘では世界最古の王家の墓や剣なども多数発見されています。


▲王家の墓からは、いけにえにされたと思われる若い女性の人骨が発見されている
現在も発掘調査が継続されていて、今後も歴史を覆すような発見がされるかもしれない場所とのこと。ここで見つかった遺跡は、アンカラのアナトリア文明博物館やマラティヤ考古学博物館に展示されています。

▲動物の絵が描かれた壁画

世界最古の宗教遺跡とされるギョベクリテペ


▲ギョベクリテペの総面積は80,000㎡(東京ドームの約1.7倍)

ネムルート山から車で4時間ほど離れた町シャンルウルファは、預言者アブラハムが生まれたとされる聖なる地。

▲聖なる魚の池で白い魚を見つけると、天国に行けるという言い伝えがあるそう

「生誕の洞窟」や「聖なる魚の池」など、敬虔なイスラム教徒が聖地巡礼として訪れる町です。
その郊外にあるギョベクリテペは、紀元前10,000年から8000年に建てられたとされる世界最古の宗教遺跡で2018年に世界遺産に登録されました。この遺跡から農耕文化が始まる以前より高度な芸術文化や宗教が存在していたことになるため、歴史を覆す大発見だと言われています。

▲T字型の石柱が円を描くように並べられている
200本以上の石柱で描かれた円は全部で20個。最も高い石柱で15mほどの高さがあり、かつては神殿があった場所だと考えられています。


▲動物の象を象った柱
発掘調査の大規模調査が現在も継続中。遺跡に併設展示室では、当時の人々の暮らしの様子や出土した物について様子を知ることができます。

▲出土物のレプリカなどが展示されています

▲タッチパネルで知ることができるコーナー

▲宗教遺跡が当時の人々にどのように使われていたかの再現映像を見ることができます。巨大スクリーンなので埋没感がすごい!

リアルタイムで歴史を覆すような新事実が発見されているということに、ロマンを感じずにはいられないトルコの世界遺産。現地に足を運んでみると、スケールの大きさに圧倒されるはずです。

番外編①:美食の街シャンルウルファの名物料理


▲「ウルファ・キョフテ」が名物料理
肉は牛と羊を混ぜた物で、ナスの中身と一緒にパンに挟んで食べます。ほんのり甘みのあるホクホクでジューシーなナスとお肉の相性抜群! 行ったらぜひ食べてみてください。

番外編②:とんがり帽子のような見た目の集落


▲「ビーハイブ・ハウス」と呼ばれる日干し煉瓦の造りの家
シャンルウルファから45km南にある集落の遺跡で、とんがり帽子のようなかわいらしい外観が特徴です。

旧約聖書によると、アブラハムが神の啓示を受けてイスラエルへ向かう途中に立ち寄ったとされる場所。土台となる石の上に日干しレンガを積み上げて、強い日差しを避けるために上から泥を塗っています。中に入ってみると、外の暑さとはうって変わってひんやり快適!

▲家具などは暮らしていた頃のまま
かつては2,000戸ほどあった集落も、今は180戸ほどに減ってしまったそう。その集落の一部である20戸ほど建ち並ぶエリアを見学することができます。

元住人だったという男性が、ユーモアたっぷりにルームツアーをしてくれるのですが、当時の暮らしを垣間見ることができてとても楽しかったです。

遺跡好きはぜひ、南東アナトリア地方まで足をのばしてみてくださいね!

All photo by Chiharu Yahagi

編集部

広告代理店の企画、出版社の書籍編集を経て2016年に企画・編集・ライターとして独立。ワタリドリ製作所の屋号で、書籍の執筆・編集、複数の企業のメディア運用に関わる。 東京都観光まちづくりアドバイザーとして、国や県庁のインバウンド事業の仕事をしていたときにTABIPPOに出会い、2023年春からジョイン。 大学生の頃から、世界各地を一人旅しては、陸路での国境越えをすることに情熱を捧げていた。現在は自然豊かな多摩エリアで、エネルギーの塊みたいな小学生男児2人の育児に奮闘中。街歩きとおいしい物と温泉が好き。 著書:『世界の絶景1000』(英和出版社)共著、『石の辞典』(雷鳥社)

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