ライター
上野 隼 マーケティングディレクター

アメリカ生まれ東京育ちの24歳。大学ではマーケティングを専攻し、在学中には世界一周やデンマークへの留学を経験。入社直後から長野に移住し、理想の豊かなライフスタイルを追求、Z世代の新しい働き方を開拓している。渡航国数は72、ミドルネームはライアン。

豊かな自然、そのなかでも湖は精神を落ち着かせてくれる。

コロナ真っ只中の、2020年。僕は、デンマークのフォルケホイスコーレという教育機関に留学をしていました。

当時は、フェイスマスクの着用がルールとして求められ、人との距離のはかり方に気をつかう。そんな留学生活の日常的な無意識の配慮から解放されるべく、学校から自転車でちょっといったところにある湖畔によく遊びに行っていました。



湖は、僕にとって自然の中でもっとも“受け入れてもらっている”感覚が強い。

海ほど波は激しくなく、サイズは大きすぎず、淡水なので植物たちにもフレンドリー。

木々に囲まれている湖が多いので、山から抱擁されているように感じる。


デンマークで湖に魅了された僕は、日本に帰国してから、湖を求めて長野の野尻湖のある、人口8,000人の小さな町へ移住をしました。

そんな「湖フェチ」な僕が今回選んだ旅先は、ドイツ最大の州であるバイエルン州です。

ドイツの軽井沢、Tegernseeでセーリング冒険


陽の長い夏が終わり、曇りが多い秋の時期に突入したドイツ。

天気は満点とは言わないけど、風と船頭さんの経験を頼りに海抜726mのTergernseeをゆらゆらと探索していきます。ちなみに最深は73m。州都のミュンヘンの飲料水の供給に重要な役割を果たしているそうです。

5つの町に囲まれた湖なので、ボートを漕いでいるだけで、景色が次々と変わっていきます。教会もあれば、昔刑務所だったが現在はレストランになっている場所も。


気温は一桁、風を受けると目が覚めるような寒さを感じます。

ただ、その感覚は、「生」への畏敬の念と、自然への感謝を与えてくれる。そんな感覚になれるのが個人的には好き。

湖畔は地価がとても高く、いまだに年を経るごとに金額は上がり続けているとのことでした。

ドイツの有名なサッカー選手も住んでるとか住んでいないとか。学生時代をサッカー少年として過ごした僕は、世界的に有名な選手たちの家があるかもと聞いただけで内心ワクワク。

バイエルン州最大の湖、Chiemsee


Chiemseeの体験は、夢幻的な情景から始まりました。

朝の5時半くらいにパッと目が覚め、窓に目を向けた時の朝焼けが綺麗で、幻想的。

まだ時差ボケが完全には治っていない状態の自分の体内時計に、ありがとうと何度も言いました。

空の色はもちろん、冷え切った空気と、湯気が出ている水面など、様々な条件が相まって、ファンタジーの世界にいるような気分に。

「あぁ、ここにきてよかった……!」と、ウェルビーイング全開で感動していました。


「日の出・日の入り論争」って、ありますよね。どちらの方が好き?という問い。

僕はこういう二元論的な問いを目の当たりにした時に、「どっちもいいよね、優劣つける必要ないよね」と思ってしまう質です。

ただこの類の質問の目的って、どちらが良いかを本当に決めることではなく、自分と他者の考えをキャッチボールすることを楽しむ点にあるのではないでしょうか。

回りくどい前置きをしましたが、日の出も日の入りもそれぞれ美しさがあるという前提のもと、どちらかひとつ選んでくださいと言われたら、僕は日の出を選びます。


理由は至ってシンプルで、1日が始まるタイミングで心が浄化されるような風景を見ると、享受する時間が長くなるから。

この日も、朝焼けの景色の素晴らしさを夜ご飯のタイミングになっても噛み締めていました。(さすがに噛み締め過ぎかな)


Chiemseeは、深さはTegernseeとほぼ同等(Tegernseeが最深73mなのに対し、Chiemseeは73.4m)ですが、面積は80㎢と、かなり広大です。

よくある、「東京ドーム〇〇個分」で例えると、1,711個分でした。

想像がつかなかった。

湖の中に、「Fraueninsel」と「Herreninsel」という島が浮かんでおり、そこにも行ってきました。人が生活している島が存在している時点で、この湖の規模の大きさが伺えます。

時の流れに身を任せる、Fraueninsel


都会の喧騒から少し距離を置くのにもってこいの島。

現在は、250名ほどの人々が住んでいて、多くは漁師さんだそうです。


この土地に足を踏み入れる生物はみんな穏やかになるのではないか?と思うほど、時の流れがゆったりとしていて、鴨も日向ぼっこを楽しんでいました。


島のサイズも比較的小さく、30分あれば徒歩で一周できました。レストランやホテルもあるので、日を跨ぐ滞在も可能。

将来、仕事をリタイアしたタイミングとかで、ゆったりと1週間くらい、贅沢な時間をこの島で過ごすのが、僕のバケットリストに加わりました。

ルートヴィヒ2世が築いた華やかさを肌で感じる、Herreninsel

© Bayerische Schlösserverwaltung
(Photo: Ulrich Pfeuffer)
www.herrenchiemsee.de

Fraueninselとは対照的に、ヴェルサイユ宮殿をモデルにしたデザインの、豪華絢爛なお城があります。住民は、3つの家族のみ。

98mに及ぶメインホールには、33のシャンデリアと44の燭台からなる1848ものあかりと、それを最大限活用する17の鏡があります。規格外すぎて、数字だけみても想像するのが難しいですが、羨望や驚きを超えた、一種の呆れのような感情を抱きました。圧巻。

© Bayerische Schlösserverwaltung
(Photo: Rainer Herrmann/ Ulrich Pfeuffer/ Maria Scherf)
www.herrenchiemsee.de

ルートヴィッヒ2世という、ノイシュバインシュタイン城というシンデレラ城のモデルになったと言われているお城を建てた人物が、このお城も建てたそうです。

富と名声を得ることの価値はなんなのだろうという問いを、帰りのフェリーの中で自分に投げかけていました。

ベクトルの全く異なった2つの島は、生き方の選択肢を提示してくれているようでした。

ドイツと日本、自身と旅先との繋がり


1970年代にドイツに渡った「森林浴」という概念。

都市部で患ってしまった精神病などの治療法として一部の方々に受け入れられているそうです。

海外旅行にいくと時々遭遇する、日本のカルチャーが各国にトレースされている場面。自分自身は啓蒙も貢献も全くしていないけど、アイデンティティが受け入れられたように感じ、嬉しくなります。


この森も近くに湖があり、その湖に含まれるミネラルが空気に含まれ森に届き、さらなる安らぎを与えてくれました。

湖で自分と見つめ合う旅

またひとつ、湖を好きになる理由を見つけることができました。

安らぎを与えてくれる自然と、自然からの安らぎ方を知っている人々、そしてそこから形成されるコミューンがもたらす地域の魅力を存分に感じた今回のドイツ滞在。

湖水の織りなす山紫水明に身を任せるのもいいものです。

バイエルン地方の魅力をもっと知りたい方へ

今回の記事では紹介することができなかった、サッカーやビールのお話はTABIPPO公式Voicyチャンネルでお話ししていますので、こちらもぜひお聞きください。

ライター
上野 隼 マーケティングディレクター

アメリカ生まれ東京育ちの24歳。大学ではマーケティングを専攻し、在学中には世界一周やデンマークへの留学を経験。入社直後から長野に移住し、理想の豊かなライフスタイルを追求、Z世代の新しい働き方を開拓している。渡航国数は72、ミドルネームはライアン。

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