ライター
くぼちゃん 旅するカラフルライター

人の想いに「光をあてる」ことをモットーとし、価値観の深堀りをするインタビュー・取材を強みとする。旅が好きで、海外は30ヵ国以上、国内は40都道府県訪れている。趣味は建築・アート巡り。服装や写真がカラフルな「旅するカラフルライター」。

暑い。けれど、どこか涼しい。

町を歩くと聴こえる、清らかな水のせせらぎ。

日本のど真ん中に位置する岐阜県。そして県内のほぼど真ん中に位置する郡上八幡(ぐじょうはちまん)は、400年続く夏の夜の風物詩「郡上おどり」でも全国的に有名な水の町です。


古き良き町並みが残るなか、町中に川が流れ、家の目の前に水路がある。日常に溶け込む、「水」という存在。


エモーショナルな熱気がありながら、どこか清涼感を感じるノスタルジックな町、郡上八幡。夏が始まる少し前に、岐阜県出身ライターである私、くぼちゃんが取材に行ってきました。

そこは、誰しもが持つ「あの夏の夜」を想起させる町でした。

ローカル鉄道、長良川鉄道の車窓から

郡上八幡に向かうためには、まずは美濃太田駅から、長良川鉄道「ゆら~り眺めて清流列車」に乗り込みます。

かわいい列車!写真を撮る方もたくさん
日本三大清流のひとつ、長良川(ながらがわ)に沿って、刃物の町である関市や美濃和紙で有名な美濃市を経由し、のんびり走ります。

車窓からは、長良川とともに、四季によって表情が異なる絶景を楽しめます。絶景ポイントでは、少しゆっくり走ってもらえるので、シャッターチャンスを逃さずに済むのも嬉しいポイント。

絶景ではカメラを構えて
観光客だけでなく、地元の方の足にもなっている長良川鉄道。

車窓からの景色と、どこかのんびりした列車の雰囲気に癒されて走ること1時間20分、今回の目的地である郡上八幡駅に到着です。

レトロな木製駅舎がお出迎え

■詳細情報
・名称:長良川鉄道
・公式サイトURL:http://www.nagatetsu.co.jp/

郡上八幡のシンボル、日本最古の木造再建城である郡上八幡城

まず向かうのは、郡上八幡のシンボルである郡上八幡城。

戦国時代末期に起源を持つ城であり、取り壊されて石垣だけが残っていたところ、昭和8年(1933年)に未来への願いを込めて再建されました。日本最古の木造再建城であり、2023年には再建90周年を迎えました。

白亜の郡上八幡城の絶景ポイント
豊臣秀吉や徳川家康の家臣である、戦国武将山内一豊をご存知でしょうか。

NHKの大河ドラマ「功名が辻」で主人公にもなっていますが、じつは一豊の妻である千代は、郡上八幡城主である遠藤盛数の娘という説が最有力なんだそう。


郡上八幡城の最後の城主は青山氏ですが、東京港区の「青山」という地名は、青山氏の屋敷があったことが由来なんだとか。そんな縁があり、東京では毎年「郡上おどりin青山」が開催されています。


市街地から約130mほど標高があがった4層5階のお城の天守閣は、なんとも涼しい風が通り抜け、郡上市が360度見渡せるパノラマビュー。城内は四季を感じられ、春には桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色となります。

城内には、郡上八幡城の歴史が分かる展示があります。木造建築ならではの木が軋む心地よい音とともに、5年続いたといわれる郡上一揆や郡上藩の歴史について、想いを馳せてみましょう。

■詳細情報
・名称:郡上八幡城
・住所:岐阜県郡上市八幡町柳町 一の平659
・地図:
・アクセス:(車)郡上八幡インターチェンジから約12分・(バス)城下町プラザ下車、徒歩約20分
・営業時間:通常(3~5月、9~10月):9:00~17:00・夏季(6~8月:8:00~18:00・冬季(11~2月):9:00~16:30
・定休日:12月20日~1月10日
・電話番号:0575-67-1819
・料金:大人(高校生以上)400円・小人(小・中学生)200円
・公式サイトURL:https://hachiman-castle.com/#home

チューニングを続ける、こだわりのそばの平甚

水が綺麗なところに、蕎麦屋あり。

水の町・郡上八幡は、長良川最大の支流である吉田川が町中に流れ、石の数を遠目で見て、数えられるほど透き通っています。

今回は、80年受け継がれる有名老舗店[そばの平甚]にて昼食です。


城下町の一角にある[そばの平甚]。1階の窓際席は、透き通った吉田川が眼下に見える特等席です。


「そばの原料は、粉と水だけ。蕎麦作りは足し算ではなく掛け算だから、どちらも上質なものを使います。」

そう話す3代目平甚さんが作る蕎麦は、麺にもつゆにもこだわりが詰まっています。

飛騨牛自然薯ランチ。自然薯は、飛騨牛にもお蕎麦にも
代々受け継がれる、食感がうりのもちもちとした麺。食感はそのままに、少しずつ麵の太さを改良し、食べやすくしているのだそう。

だしは、かつては鰹のみだったところ、お客様の味の好みに合わせ、毎年“チューニング”をしており、今年は昆布を2%増やしているのだとか。

天候や水にも影響されやすい、繊細な蕎麦。現状に満足せず、常にお客様の反応を見てアップデートを続けているからこそ、美味しいんですね。

郡上産の自然薯を使用した自然薯蕎麦も人気
Instagramにも力を入れており、「実際の店舗だけでなく、SNSも店舗のひとつ。時間を使って見てくださる方に、少しでも満足してほしい」と語る平甚さん。写真も雰囲気もとても素敵なので、ぜひチェックしてみてください。


蕎麦は、麺類の中で最も栄養価が高い。けれども水溶性のため、茹でている途中で栄養素が溶け出てしまうのだそう。だからこそ、蕎麦湯を飲んで栄養をとることが大切です。私も、最後までしっかり飲み干してきました。

インバウンドの影響もあり、ビーガン用のメニューの開発をしたり、老舗ながら常にアップデートとチューニングを続ける平甚さん。人気の秘訣と長く愛される秘訣、ここにあり。

昭和レトロなお店の雰囲気

■詳細情報
・名称:そばの平甚
・住所:岐阜県郡上市八幡町本町870
・地図:
・アクセス:(バス)城下町プラザ下車、徒歩約3分
・営業時間:(平日)11時~16時・(土日祝)11時~17時
・定休日:年始のみ
・電話番号:0570-65-2004
・公式サイトURL:https://www.hirajin.com/index_j.html
・公式Instagram:https://www.instagram.com/hirajin_gujo/

いつでもどこでも、水のせせらぎが聴こえる。清らかな町を歩こう

郡上八幡を歩いていると、いたるところから、水のせせらぎが聴こえます。

川、水路、洗い場、水舟。郡上の人々は、水資源を有効活用する伝統的な暮らしを大切に受け継ぎ、「水とともに」生活をしています。

水を有効活用する郡上の象徴である、水舟
水の町であることの象徴のひとつ、宗祇水(そうぎすい)は、環境省選定の名水百選の第1号に指定された湧水です。

郡上八幡には、「水舟」という独自システムがあり、いくつもの階層に分かれた水を、1番上は飲料水、2番目は生活用水、といった形で利用します。宗祇水も水舟のひとつ。

名水のシンボル宗祇水

飯尾宗祇という室町時代の連歌の達人が、歌を詠んだことが名前の由来
じつは、郡上八幡の町は、過去に2回の大火に見舞われています。職人町、鍛冶町などの古い町並みには、大火の名残で、軒下に消火用のバケツが吊り下げられています。

はかり、かみゆいなどの当時の面影がある看板も残り、古い町並みをよりノスタルジックな雰囲気にしています。


家の前には、水路が張り巡らされており、セギ板という木製の板を各家庭が持っています。セギ板を必要に応じて水路に差し込むことで水量を調整し、洗いものをしたりスイカを冷やしたりするのだそう。

セギ板が差し込まれた状態

エイ箱と呼ばれる、用水路から軒下に水を引き込んだ箱の中で、大量の鯉を飼っているところも見かけました。

古い町並みには、民家だけでなく、郡上地みそ屋や酒店などのお店もあり、綺麗に舗装された道がとても歩きやすい。緑が生い茂る山々を見ながら散策をすると、いたるところに寺社仏閣があり、落ち着いた雰囲気です。

やなか水のこみち
郡上八幡になぞらえ、八万個の玉石が敷き詰められた「やなか水のこみち」は、風に揺れる柳と水路が風情たっぷり。郡上八幡の水辺をイメージした水の流れがデザインされており、写真スポットとなっています。


いつでもどこでも水のせせらぎが聴こえ、水の気配がする郡上八幡。それは、家の前の水路だけでなく、吉田川と小駄良川(こだらがわ)が町中に流れているから。

表から見たら2階建て、裏から見たら3階建ての民家は、郡上八幡を象徴する風景です。裏手の階段からすぐ川に降りることができ、川とともに暮らしていることが垣間見えます。


水の存在が、私たちの足取りを軽くしてくれる清らかな町・郡上八幡。同時に、懐かしい気持ちを呼び起こしてくれるノスタルジックな町並みを誇り、散策がとても心地良い町でした。

日本三大盆踊り「郡上おどり」の熱気を感じて

水とともに過ごす郡上八幡で、もうひとつ忘れてはならないのが、「郡上おどり」。日本三大盆踊りのひとつであり、7月から9月上旬にかけて約30夜行われる日本一長い盆踊りです。

町中のいたるところにポスターが貼ってある
郡上八幡はコンパクトな町の中に、寺社や仏閣が多数あります。それぞれの神様・仏様に向けて踊るため、約30夜のロングランとなっているのだとか。

毎年8月13日~16日は、徹夜で踊り続ける「徹夜おどり」が開催され、全国から大勢のファンがかけつけます。


郡上おどりとは、10曲10種の総称のこと。踊り屋形の上には、笛・太鼓・三味線などを奏でる人が約10名ほど乗ります。CD音源ではなく、その場の状況に合わせ、さながらDJのように10曲の配分やアレンジをし続けるのだとか。


郷土ミュージアムの郡上八幡博覧館では、年間を通して郡上おどりの実演があり、郡上おどりに行けない方でも、郡上おどりを楽しめます。

実演の踊りに参加すると、参加証もいただけます
下駄をはいて、かかとをならしながら踏むステップは、曲ごとに難易度が異なるのもポイント。

郡上おどりでは、疲れたら、踊りの流れから外れて休めばよし。身構える必要はなく、自分が踊れそうなときだけ、輪に入れば大丈夫です。マイ下駄にマイ鼻緒をしつらえるリピーターの方も、たくさんいらっしゃるのだそう。

ユネスコ無形文化遺産に登録されている

暑い夏の夜を彩る、郡上おどり。

ノスタルジックな水の町を、みんなで踊りながら闊歩する夜は熱気にあふれ、想い出の1ページに刻まれるでしょう。

郡上おどりには行けない方も、博覧館での実演をチェックしてみてくださいね。郡上の歴史の展示もあり、郡上八幡について知るためにもおすすめの場所です。

■詳細情報
・名称:郡上八幡博覧館
・住所:岐阜県郡上市八幡町殿町50
・地図:
・アクセス:(バス)城下町プラザ下車、徒歩約3分
・営業時間:9:30-17:00(最終入館時間16:30)
・郡上おどり実演:11時~/12時~/13時~/14時~/15時~(約15分間)(開催日は公式サイトをチェック)
・定休日:12月24日~1月2日
・電話番号:0575-65-3215
・料金:大人(高校生以上)540円・小人(小・中学生)320円・小学生未満無料
・公式サイトURL:https://hakurankan.com/

抜群の味と雰囲気を誇る団子茶屋で、ほっと一息

町を散策し、小腹がすいたら、名物みたらし団子でひとやすみ。

今回は、5つ玉のみたらし団子専門店である[団子茶屋]を訪れました。


店先で丁寧に焼き上げる、みたらし団子の美味しそうな匂い。

郡上産コシヒカリ100%、秘伝の甘辛い特製ダレにつけられたお団子は、外はパリッと香ばしく、中はもっちもち。絶妙な焼き色と、トロっとしたタレのハーモニーが、食欲をそそります。


途中で、きなこをつけて味変もできます。

そして団子茶屋は、みたらし団子だけでなく、セットのドリンクメニューが豊富。抹茶やクラフトビールも選べます。季節限定のドリンクも豊富で、苺ミルクや柚子スカッシュなど、どれも美味しそう……!

中庭を眺めがらの囲炉裏席
食べ歩きのテイクアウトも可能ですが、おすすめは、おしゃれに改装された古民家の店内でゆったりいただくこと。2019年に空き家を改装してオープンしています。

囲炉裏席で中庭を眺めながら、ほっと一息つくことができました。


2階の和室も脚をのばせて、とても落ち着く空間です。

和モダンな古民家には、いたるところにおしゃれな小物があり、つい長居をしてしまいます。

細部のインテリアまでこだわりがたくさん
素敵な空間でエネルギーチャージをして、また郡上八幡の町に繰り出しましょう。

■詳細情報
・名称:団子茶屋郡上八幡
・住所:岐阜県郡上市八幡町島谷1105(今町)
・地図:
・アクセス:(バス)城下町プラザ下車、徒歩約3分
・営業時間:10:30~17:00
・定休日:水曜日(第3火曜日)※12/29~1/4冬季休み
・電話番号:0575-67-1222
・公式サイトURL:https://dangochaya-gujo-hachiman.storeinfo.jp/
・公式Instagram:https://www.instagram.com/dangochaya_gujohachiman/

今宵は、ホテル積翠園で。極上のおもてなしとお料理に舌鼓をうつ


今宵は、郡上八幡城近くの、1964年から続く老舗ホテルである[ホテル積翠園]に宿泊。2019年にリニューアルされ、とても綺麗です。


ホテル積翠園のコンセプトは「暮らすように旅する」。もっと気楽に、郡上八幡とホテル積翠園を訪れて欲しい、という想いが込められているのだそう。


今回は、スタンダードルームに宿泊しましたが、十分な広さのあるお部屋。デスクもあるので、お仕事にもぴったりです。今は、暮らすように旅をする人も増えてきていますが、まさにホテルのコンセプト通り。


郡上おどりのシーズンには、積翠園踊りという、積翠園敷地内での踊りが2夜行われるのも、見どころのひとつ。

外履きには下駄も。さすが郡上おどりの地
旅の締めは、やはり美味しいお食事とお酒ですね。

ホテル積翠園でいただく岐阜県産のお料理に、舌鼓をうつ極上の時間の始まりです。飛騨牛ロースや、郡上産こしひかり、そして岐阜といえば、鮎です。

岐阜出身の私にとっても、鮎は小さい頃から身近な魚。けれども、故郷を離れた今、なかなか食することがなく、ふるさとの味が懐かしい。

天然の郡上鮎の塩焼き
鮎は、綺麗な川にしか生息できません。清流長良川では、6月1日に鮎釣りが解禁になると、釣りをする方の姿があちこちで見られます。


郡上八幡クラフトビールも、ぜひおすすめ。ビールが苦手な方でも飲みやすく、ぐびぐび飲めてしまいます。


私たちが感動した、積翠園のおもてなしのひとつが、こちら手書きのカード。

郡上八幡にちなんだ可愛いイラストのカードが、お料理のメニューの中に、1人1枚ランダムで入っています。なんと、スタッフさんの手書きでした……!

私は、長良川鉄道をゲット!旅の思い出にぴったり
郡上おどりや宗祇水、長良川鉄道に鮎、古い町並みなど、このイラストで郡上八幡のことがよくわかりますね。

素敵なおもてなしと、広く快適で落ち着いたお部屋で、1日の旅の疲れを癒すことができました。

美濃和紙を使った灯りのインテリア

■詳細情報
・名称:ホテル積翠園
・住所:岐阜県郡上市八幡町柳町511番地2
・地図:
・アクセス:(車)郡上八幡ICより約10分・(バス)城下町プラザからシャトルバスで約3分(電車)郡上八幡駅からシャトルバスで約10分
・電話番号:0575-65-3101
・公式サイトURL:https://www.hotel-sekisuien.jp/

あの夏の夜に、タイムスリップ


水の町・郡上八幡への旅、いかがでしたか。

ノスタルジックな城下町で、清らかな水のせせらぎとともに、郡上おどりの熱気がいたるところで感じられる町でした。

誰しもが持つ、「どこか懐かしい、あの夏の夜」にタイムスリップしたかの感覚になります。

郡上おどりに参加するもよし、清涼感を求めて行くもよし。郡上八幡は、いつでもあなたを「あの夏の夜」に連れて行ってくれるでしょう。

All photos by kubochan

ライター
くぼちゃん 旅するカラフルライター

人の想いに「光をあてる」ことをモットーとし、価値観の深堀りをするインタビュー・取材を強みとする。旅が好きで、海外は30ヵ国以上、国内は40都道府県訪れている。趣味は建築・アート巡り。服装や写真がカラフルな「旅するカラフルライター」。

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