ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

こんにちは、トラベルライターの土庄(とのしょう)です。これまで私は、自分の得意とする「山旅」という旅スタイルにフォーカスして、その魅力を綴ってきました。しかし本稿では、少し毛色を変えて、「島旅」の楽しみ方を紹介したいと思います。

“山”と“島”の両側面から捉えれば、日本は実に魅力あふれる土地です。一生かけても楽しみ尽くせないほど、無限のポテンシャルを秘めています。世界的に見れば小さな国に、多彩な景観や風土が結集しているのです。これは今まで約4年間、日本各地のアウトドアフィールドを巡るなかで得た確かな感触です。

そこで今回は、私が一番好きな離島「五島列島」へ焦点を当てながら、“島旅”の魅力ついてご紹介したいと思います。圧倒的な自然美や、荘厳な祈りの風景、島の随所で感じられる人情味など、五島列島ならではの時間は、今でも強く記憶に残っています。

山旅→島旅へ!もう一つの旅スタイル


もともと登山&自転車をミックスした旅を信条としていた私。しかしながら全国津々浦々を旅する中で、次第に島にも注目していくようになりました。

そのきっかけとなったのは、やはりサイクリストの聖地「しまなみ海道」でしょう!真っ青な海辺を眺めながら疾走する爽快感、その途中で出会える風光明媚な景色の数々。また小回りが利く自転車にとって最適の旅先だったことも大きいかもしれません。

一見何ということのない場所でも、小さな発見が散りばめられており、いつしか宝探しのような感覚にハマっていきました。

山が心打つような絶景と壮絶な内容なら、島はマイペースかつ自由に楽しめる未知の冒険。良い意味で強弱のある対照的な旅スタイルです。自転車旅を始めて2年経過した頃、日本各地の島を巡る旅が始まりました。(現在、50以上の離島を自転車で走破中)

キリシタンの聖地、憧れの「五島列島」へ自転車旅


私が五島列島を訪れたのは、2019年のゴールデンウィーク。サラリーマンの私にとって、年に数回しかない長期連休は、一年で一番大切な自由時間。学生最後の年から、必ずと言っていいほど長期の自転車旅に充てています。

数ある候補の中で、なぜ「五島列島」を選んだのか?そのルーツは私の学生時代にあります。


大学で、歴史を専攻しており、研究テーマが“キリシタン”だった私。五島列島は、数々のキリシタンが自らの信仰を守るために移住した「祈りの島」なのです。西の最果てとも言える立地にもロマンがあり、いつか訪れてみたいと、密かに思いを膨らませていました。


計画を立てる際、Googleマップを見ても現地の詳細情報がつかめず、結果的に手探り状態で旅に出ました。ところが、そこに待っていたのは他の土地では味わえない感動的な風景と、人のぬくもり。忘れられない思い出とともに、離島が秘めるポテンシャルの高さを再確認する旅となりました。

今回はこの五島列島旅を通じて、離島を旅することの魅力を存分にお伝えできればと思います。

五島列島を巡って再確認!「島旅」の魅力とは


数字から見ると約5日間/約350キロメートルの自転車旅。五島列島を形成する主要な島のうち、4島を回る旅となりました。

期間としてはやや短いものの、奇跡的に天候にも恵まれ、1日12時間以上を走行。その過程では、本当に刺激的な出会いが多くあり、実に濃い内容でした。


景色から歴史文化、食に至るまで五島のポテンシャルが高すぎて、10日間の連休を、全て五島列島に注ぎ込めば良かったと後悔するほど。コロナ禍が過ぎれば、いち早く再訪したい旅先です。

それでは以下で、五島列島を絶賛する理由を紹介していきたいと思います!

つい足を止めてしまうほど!島の随所で出会う名もなき絶景


五島列島を旅する中で一番感動したのが、数々の絶景。まさに前述したような、宝物を一つひとつ見つけて拾っていくかのような冒険が待っていました。

しかも、そうした風景はGoogleマップには掲載されておらず、唐突に現れるのが凄いところ。今でも、その風景に立ち会った瞬間の感動は、目に焼き付いて離れません。

・キリシタン集落に隣接するエメラルドグリーンの入り江
・名もなき道を突き進んだ先にある奇跡の海
・最果て感を感じる遣唐使の寄港地、三井楽半島
・どこか北海道を感じさせる岐宿の雄大な田園風景

どれも現地の生活や文化に溶け込んでおり、都会に住んでいると忘れてしまいがちな「自然と寄り添って、暮らしていく」感覚。旅情とともにそうした感覚を呼び覚ましてくれる、原点回帰ともいえる体験でした。

世話好きで気さく、どこまでも温かい五島の人々


五島列島を旅していて、一番強く印象に残っているのが、「現地の人とのコミュニケーション」です。これまで1万キロメートル以上、日本各地を自転車で走ってきましたが、その中でも一期一会がここまで楽しかった場所は他にありません。


例えば、福江島の高浜海水浴場近くで、とある若いカップルに声をかけてもらった出来事。

男性:どこから来たんですか?

私:愛知から来ました!

男性:遠くからですね、すごい!ようこそ、はるばる五島まで!楽しんでますか〜??

私:今、高浜海水浴場を見てきたけど、素晴らしい風景ですね!五島列島は今まで訪れた場所の中でも、一番魅力的な土地かもしれません!

男性:ありがとうございます。いやぁ、嬉しいなぁ〜!まるで自分が褒められているような気分になりますね(笑)。

恐らく私と変わらない20代。彼女とデート中にもかかわらず、気さくに話しかけてくれ、そしてナチュラルに満面の笑みを向けてくれたのです!


そんな彼が、旅をしている私たちの写真も撮ってくれ、五島列島への思い入れが一段と強くなりました。

また同じく福江島で、鎧瀬海岸という景勝地を自転車で訪れていた時の出来事。犬を散歩させていたおばあちゃんから声をかけてもらって、その流れで朝食をいただいたことも良い思い出です。結果的に、翌々日、家に泊めていただくことになります(笑)。

「現地を訪れる人をもてなしたい!」
「ハッピーをシェアしたい!」
「自分の好きな五島列島へ移住し、悠々自適に暮らす」

まさに私が将来実現したい暮らし方をしている方でした。あの時はまだ生後2ヶ月だった赤ちゃん犬・チビにも、また会いに行きたい!


旅はアウトプットであり、インプット!この五島列島旅を通じて、自らの価値観や考え方の幅が広がり、それが確実に現在の旅人としての私へ繋がっていると強く思います。

狭い範囲にさまざまな要素が詰まってる!これぞ離島の醍醐味


次に紹介する島旅の魅力は、「一つの離島の中で世界が完結している」ということ。考えれば当たり前なのですが、小さな島の中で、行動できる範囲は限られており、その中で見えるものも限られています。

狭い範囲をいかに深く楽しむか?という路線を必然的に取らざるを得ません。

しかし、だからこそ自然・歴史文化・食・生活風景・時間変化など、現地の隅から隅までアンテナを張り巡らせるようになり、よそ見をせず、目の前の旅に向き合えるのです。


その中で、前述したような現地での思いがけない発見も多く、「この島にはこんなスポットも、こんな魅力もあったのか!」という良い意味の裏切りもあります。

特に、五島列島の「奈留島」を巡った3日目に、その島旅の魅力が顕著に表れていました。



・まるで物語の世界のような「江上教会堂」
・大迫力の「ノコビ浦防風堤」
・美しい海に囲まれた天然の要塞「奈留千畳敷」
・360度の大展望広がる「城山展望台」
・お惣菜をサービスしてくれた移動式スーパーのお母さん
・宮ノ浜海水浴場で喋りかけてくれた移住者夫婦


たくさんのスポットを自分の足で移動し、いろいろなイベントに遭遇しながら、実際奈留島に滞在していたのは、たったの4時間ちょっと。離島はポテンシャルが高く、そして本当に時間が濃い!改めて、それを実感した1日でした。

五島列島を走り回って見つけた!おすすめスポット4選

このように五島列島を巡りながら「島旅」の素晴らしさを再確認した私。毎日が発見と驚きの連続で、抑えきれない好奇心を満たしてくれました。いろいろと力説したい場所は多いのですが、紙幅の都合上、今回は中でも一押しの絶景スポットを4つ厳選しました!

まるで阿蘇のような世界観!?福江島のシンボル「鬼岳」


まず紹介したいのは福江島のシンボル「鬼岳」。火山活動により生成されたスコリア丘という現象で、山頂付近に木々が生えない特異な景観をなしています。360度の大展望が待つ絶景スポットです。

私が鬼岳を気に入った理由は、そこはかとなく”阿蘇”に似ているということ。山肌を覆い尽くす草原が風になびけば、爽やかでフォトジェニック!

若松島をひたすら西へ!奇跡の「日島ブルーの海」


どこも海が美しい五島列島ですが、その中でも群を抜く絶景を見せてくれるのが、若松島から県道169号線をひたすら西に進んだ場所にある「日島(ひのしま)」一帯。

特に観光スポットがあるわけでもない五島の生活道路なのですが、その先には、空の青さを越えた一面エメラルドブルーの海が現れます。吸い込まれるような青に、思わず見入ってしまうはず!

おとぎ話の世界のよう?メルヘンで可愛らしい「江上天主堂」


五島列島が有する4つの世界遺産の教会のひとつ「江上天主堂」。明治時代、長崎本土から移住をしてきた潜伏キリシタンたちが作り上げた壮麗な教会堂です。

何と言っても特徴的なのは、その可愛らしい外観!クリーム色や水色といった色使い、森の中にこぢんまりと顔覗かせる佇まいが、まるで物語の中に出てきそうなメルヘンチックな雰囲気を醸し出しています。

夕日が照らす!感動の「渕ノ元カトリック墓碑群」


最後に紹介したいのは、三井楽の「渕ノ元カトリック墓碑群」。名前の通り、キリシタン関係の史跡なのですが、その特徴は素晴らしいロケーションにあります。なんと、東シナ海の大海原を望むように墓碑が据えられているのです。

一般的にキリシタン墓地は、信仰が露見するのを防ぐため、森の中に密かに営まれるのが通例。しかしここは五島の中でも“最果ての地”。幕府勢力がある長崎本土から一番遠い場所です。まさに「渕ノ元カトリック墓碑群」は隔絶性の高い三井楽だからこそ成立し得た墓地の形なのです。

人生を変えるかもしれない!自分だけの「島旅」へ出よう


これまで50つ以上の島を自転車で巡ってきましたが、確かに言えるのは、島には旅人を受け入れてくれる「包容力」が根付いていること。風景や人、そして何気ないシーンにまで、ありのままの自分をナチュラルに受け入れてくれる土壌があります。

ひとたび踏み出して、島を見つめていれば、きっと今回お伝えした島旅の醍醐味をわかってもらえると思います。きっとそこには、あなたを突き動かすような、出会いや時間が待っているかもしれませんよ!

All photos by Yuhei Tonosyou

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土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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