「旅」と聞くと、自分の住む土地から何らかの交通機関を使い少し離れた遠い場所へ行くことを思い浮かべる人が多いかもしれない。
遠い地で知らない景色や言葉、文化に触れることこそが醍醐味だと私もそう思っていた。
しかし、私にとって多くの刺激と経験をくれた「旅」とつながる場所は、意外にも地元にあった。
旅は、いつも遠くにあると思っていた
北海道札幌市豊平区にある「ゲストハウスWAYA」。
この場所のコンセプトは“新しい冒険のはじまり”。札幌の中心地から少し離れたここはいつもどこか遠い国の空気が流れ、世界中からやってくる旅人と地元の人が交流する場所。

私が初めて訪れたのは7年以上前の高校生の頃だった。学校に来てくれた英語の教育実習の先生をきっかけにこの場所を知ったが、当時はまだここが自分の人生において大切なターニングポイントになるとは想像もしていなかった。
その後、高校を卒業し大学に進学、今度は当時アルバイトをしていた放課後学童の先生のお誘いで再びこの場所に通うように。随分と時間が空いていたにはずなのに扉を開けた瞬間、懐かしさと同時に「戻ってきた」という感覚があった。初めて出会う人たちと会話を通して交流を重ね美味しい食べ物を囲んだ1日。

遊びに行くたび新しい出会いがあり、この素敵な場所を誰かに伝えたくて私自身これまでたくさんの友人を連れて行った。誰かを連れて行くたびに、その人なりの楽しみ方があり捉え方があり、WAYAはいつも異なる表情を見せてくれた。そんな時間を重ねるうちありがたいことに声をかけてもらい、私はここでアルバイトとして働くこととなった。
帰りたくなる場所にはいつも”出会い”があった
築60年の古民家を改装して作られた2階建ての建物。1階が宿の受付とカフェバー、そして2階が宿になっている。私はゲストハウスに併設された1階のバーで働いていた。ここではカウンター越しに、初めましての旅人や顔なじみの近所の仲間たちと、数えきれない時間を共有した。

名前を聞くことも忘れて旅の話に花を咲かせ、どうしてここに辿り着いたのか、ゆっくり考えて心の底に触れる時間、そしてこの先まだまだ続く未来の話。性別や年齢、国籍に関係なく、そんな会話を交わすことが日常だった。今振り返っても、とても贅沢な時間だったと感じている。

この有意義な時間は、当時の私にとって大好きな仕事でもあり、自然と未来について考えるきっかけにもなっていた。なかなか出会えないような考え方を持つ面白い人たちにもたくさん出会い、そのたびに自分の中にあった「普通」や「常識」が静かに、でも確実に壊されていく瞬間を何度も体感した。
旅人や札幌に住む人、ヘルパーとして2階の宿に滞在している人たち。その日その日で顔ぶれは変わるため、全く同じ人々が集まる日は1日としてない。だからこそ、たった数十分•数時間の会話が妙に深く心に残ることもあった。連絡先を聞かなかったことを後悔して数ヶ月、偶然再会するなんてことも。
私にとってここは「出会い」こそ人生を豊かにしてくれるものだと考えるきっかけを与えてくれた、一期一会の瞬間に溢れた場所だった。