ライター
morinohinako Go with the flow.

Freelance Writer / Editor / PR. 自然と人のあいだで、日向ぼっこをするのが得意なライターです。アメリカ留学中に環境学に出会ってから、遠い未来の人と地球が心地いい世界を目指したいと思いながら活動しています。 作家・原田マハさんが好きすぎて、今一番行きたい場所はパリの老舗カフェ「ドゥ・マゴ」。旅はAirbnb、徒歩、地元のご飯屋さんが基本で、その場所の暮らしを味わう時間が大好きです。

箱根奥湯本の豊かな自然の中に、あたたかな湯気が立つ場所があります。それは、50年以上もここで続く湯屋、天山湯治郷(てんざんとうじきょう)。

日帰りでゆく天山湯治郷への旅は、心と体を存分にゆるめて、ひとりの時間をじっくりと味わえるものでした。

天山湯治郷の「野天」


箱根湯本駅から徒歩で約30分、バスだと10分程度の場所にある天山湯治郷。箱根湯本駅付近に立ち並ぶ温泉旅館街を抜けた、少し離れたところにあります。


天山湯治郷の敷地には、日帰り湯治(とうじ:温泉地に滞在して療養すること)ができる「ひがな湯治 天山」「かよい湯治 一休」、逗留宿の「羽衣(はごろも)」があります。この日は、入浴と食事のできる「ひがな湯治 天山」に向かいました。

建物に入ると、昔ながらの落ち着いた雰囲気の中に、どこかハレの日を思わせる、心弾む空気が流れています。


天山湯治郷の泉質は塩化物泉とアルカリ性単純温泉で、全部で7つの源泉がたっぷりと湯船に注がれています。昔から湯治を目的に訪れる人が多く、今でも疲れを癒やしに来る人が多くいらっしゃるのだそう。

そしてなんと言っても天山湯治郷の魅力は、「野天」。いわゆる露天風呂です。


天山湯治郷の「野天」は、四季折々の表情、風、川や雨の音を存分に感じることができる空間になっています。

浴場の洞窟で瞑想


天山の浴場は、温泉に浸かりながら緑の中に溶け込めるのが魅力。誰もが不要なものを一旦肩から下ろし、自然に身をゆだねられる場所です。

訪れた日は、しとしと雨。雨が湯船の水面にポツリポツリとリズムよく落ちて、浴場の景色を幻想的にしていました。

天山の浴場には、4つの湯船のほかに洞窟風呂があります。洞窟風呂にそろりと足を踏み入れると、ゴゴゴという温泉が注がれる音が響き、山のお腹の中にいるような気持ちに。


ひとり目を瞑り、深呼吸。

ここへ来てこうして洞窟に入るたびに、「ただいま」と言いたくなります。ちょっとだけ都会から逃げてきたような気持ちを抱えていた私でしたが、山々は「いいんだよ」と言ってくれているようでした。

奥の湯で、ひとりになる


川沿いの小径を進み暖簾をくぐると、緑に囲まれた小さな湯船が現れます。湯治郷のもっとも奥にある浴場、「奥の湯」です。

シャワーや洗い場はなく、脱衣所と湯船だけという静かな空間。川の音を近くに聞きながら、ふぅとひと息つける場所です。


「やっと、ひとりになれた」

そんな感覚になりました。孤独とひとりは違っていて、この半年以上たくさんの孤独を味わってきた私たちにとって、今必要なのは「ひとり」の時間なのかもしれません。

ぽつぽつと雨が落ちる水面を見ながらぼんやりとする時間は、不思議なことに孤独を感じることなく、むしろ川や雨や虫の音が、生きものたちの存在を教えてくれるかのよう。

安心して「ひとり」になれる、そんな空間でした。

心ゆくまで世捨てするなら、貸座敷と奥の湯の「雲隠れプラン」を


先ほどの「奥の湯」は、貸座敷を借りれば入浴することができます。ひとりで天山湯治郷を訪れる場合には、4時間3,000円で貸座敷と「奥の湯」を堪能できる「雲隠れプラン」がおすすめです。

貸座敷には、ちょうどいい大きさの和室に、ちゃぶ台と鏡。本を読んだり書き物をしたりするには、これ以上ないほどの空間が用意されています。ごろんと寝転がって本を読んでも、お昼寝をしてもいい、自由気ままな時間を過ごせます。


この部屋で、温泉に浸かりながら思ったことを日記に書いているうちに、久しぶりに頭に心が追いついて、自然な言葉を書けていることに気がつきました。

いつの間にか頭ばかりが先にいてしまって、心に思っていることや戸惑っていることは置いてきぼりで。そのズレに気が付いてはいても、流れていく日々の中で立ち止まる時間は取れないものです。急に立ち止まることは難しくても、こうやって温泉にはいってペースを落とすだけで、見えるものがあるんですね。

ごろり休まる3つのスペース


ごろりとできる、私のお気に入りのスペースをご紹介します。

まずは、「雨宿り」という読書室。ひとりでゆっくり読書をしたいとき、川の音をBGMに本の世界に浸ることができます。「いま生きものたちが深い息をしています」という言葉が書かれた壁掛けや、素敵な選書が並ぶ空間は、さながら森の中の図書館です。


続いてこちらは、ざしきぼっこ。湯上りに涼むのにはちょうどいいスペースです。

川や雨の音を聞いて目を瞑っているうちに、気が付いたら眠ってしまうことも。うとうとできる休日って、どうしてこんなにいとおしいのでしょうか。


最後におすすめするのは、天山浴場の脱衣所の2階にある休憩スペースです。

湯上りに着替えやお化粧を済ませ、ちょっと横になったり足を伸ばしたりすることができるこのスペース。他のお客さんが身支度をしている空間ですが、かえって落ち着くのです。

時間を気にせずマイペースに過ごせるひとり旅だからこそ、ごろりとできるスペースを見つけては贅沢に横になるのも、いいものです。

温泉をつかったしゃぶしゃぶでお腹も満たす


温泉に浸かると、ぐう〜っとお腹も空きますよね。天山湯治郷には、3つの食事処があります。手打ちのお蕎麦がいただける「じねん蕎麦すくも」、うなぎがおいしい「滋養料理 山法師」、しゃぶしゃぶが人気の「楽天」。


今回私が伺ったのは、「楽天」。温泉をつかったしゃぶしゃぶがいただけて、まさに温泉づくしです。お野菜とお肉、お餅やきのこ類をゆっくりしゃぶしゃぶして、ゴマだれとさっぱりポン酢でいただきます。

ご飯には紫蘇ふりかけがかけてあり、しゃぶしゃぶとの相性もばっちりでした。


締めのラーメンは、塩胡椒とお肉と野菜のだしがたっぷりとれたお湯だけでシンプルに。横を流れる川を眺めながら、お腹いっぱいいただきました。

また来る日まで、行ってきます


天山湯治郷で過ごす時間は、どうしてかいつもさっぱりとしていて、後ろ髪を引かれません。

川や木々や小さな植物に囲まれた天山湯治郷では、どこにいてもちょうどいい距離感で自然に見守られているようで。近すぎず遠すぎず、でもたしかに足元からエネルギーを満たしてくれるのです。

そして帰るときには、「またおいで。それまで、いってらっしゃい」と軽く背中を押してくれます。


この場所はきっとこれからも変わらずにあるだろう。そんな、ふるさとのような安心感を抱きながら、この日も帰路についたのでした。

■詳細情報
・名称:天山湯治郷

・営業時間:朝9時~夜10時 閉館11時
・電話番号:0460-86-4126
・料金:大人 1,300円(入湯税・消費税込) / 子供 650円(入湯税・消費税込)
・公式サイトURL:https://tenzan.jp/

※撮影は、施設の許可を得て行っています。

All photos by Risa Imai

【特集】NEXT JAPAN TRAVEL – あたらしい旅、だいすきな場所。-


TABIPPO.NETでは、新しいスタイルでの国内旅行について特集しています。他の記事もぜひチェックしてみてください!
特集を見る

ライター
morinohinako Go with the flow.

Freelance Writer / Editor / PR. 自然と人のあいだで、日向ぼっこをするのが得意なライターです。アメリカ留学中に環境学に出会ってから、遠い未来の人と地球が心地いい世界を目指したいと思いながら活動しています。 作家・原田マハさんが好きすぎて、今一番行きたい場所はパリの老舗カフェ「ドゥ・マゴ」。旅はAirbnb、徒歩、地元のご飯屋さんが基本で、その場所の暮らしを味わう時間が大好きです。

RELATED

関連記事

RANKING

人気記事ランキング